何気ない風景とひとり言

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最乗寺の多宝塔

2023年02月07日 | 最古・唯一などの遺構

【神奈川・南足柄市】神奈川県下で現存する唯一の多宝塔。
室町時代応永元年(1394)に了庵慧明禅師によって開山された大雄山最乗寺の境内に建つ多宝塔。 最乗寺は、曹洞宗では福井県永平寺、横浜市総持寺に次ぐ格式のある古刹。 多宝塔は江戸時代の文久三年(1863)、江戸音羽(現文京区)の高橋清五郎により建立された。 建立後、二度の火災に遭い堂宇の殆んどを焼失したが、多宝塔が唯一被災を逃れ、建立当時の姿をいまに残している。

■山中に広がる最乗寺の境内はかなり広大で、傾斜地に段々に造営された平地に堂塔が建つ。 多宝塔は本堂境内から一段上がったところの山裾の林の中に建つ。 多宝塔は聳える巨木の枝葉に隠れるかのように建ち、参道からは全容が見られない。
近づくと、ひんやりした空気が漂う静寂の中にひっそり佇んでいて、深い軒反りの姿は雄大で見応えがある。 近くの傾斜地から塔を見下ろせるので、上層の亀腹や塔身の組物などが間近で拝観できる。 上層(塔身)は二軒扇垂木、組物は三手目と四手目が尾垂木の四手先で、全ての尾垂木の先端や出三ツ斗の木鼻に龍の彫刻を施していて興味深い。 下層(裳腰)は二軒繁垂木、組物は二手先で中備は脚間に十二支彫刻を配した本蟇股。 連子入り桟唐戸が大きく開いて中を覗くと、彩色された如来像が蓮華座に鎮座している。 塔内の厨子に多宝如来像が安置されているので、この像は「お前立ち」だろう…合掌。

△最乗寺境内の傾斜地の建つ多宝塔....神奈川県下で唯一の多宝塔遺構

△多宝塔は文久三年(1863)の建立で高さ19.6メートル....二度の火災(大正と昭和)でも被害を受けず、建立当時の姿を残している

△塔内に多宝如来像が安置され、塔の下には開祖了庵慧明禅師、大綱明宗祖師、春屋宗能祖師の火定灰が納められている

△下層は方三間で、各面中央に連子入り桟唐戸、左右に腰高連子窓、周囲に高欄の無い切目縁を設けている

△入口上に掲げられた「多寶塔」の扁額....塔内に多宝如来像を安置した厨子がある/舟形光背を背負って蓮華座に鎮座する「お前立ち」の合掌多宝如来仏

△下層(裳腰)の軒廻りは二軒繁垂木、組物は二手先、中備は脚間に十二支彫刻を配した本蟇股

△本瓦葺で、円形の塔身に円形の高欄付き廻縁....腰組は出三ツ斗

△上層(塔身)の軒廻りは二軒扇垂木、組物は三手目と四手目が尾垂木の四手先....尾垂木の先端と最上の出三ツ斗の木鼻に龍の彫刻を施している

△下層の四天柱そのまま上に伸ばし、上層の側柱にしている珍しい手法/山の傾斜地に段々に造営されたの平地に伽藍が建つので、多宝塔の塔身の組物などが上から見下ろせる

△上層と下層の接続部に白色漆喰の亀腹(饅頭形)

△塔前に設けられた鰐口越しに眺めた多宝塔
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