対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

日食と月食の幾何学

2017-04-07 | ノート
月食を利用して太陽までの距離を求める方法を考えついたのはヒッパルコス(BC2世紀)で、プトレマイオス(2世紀)の『アルマゲスト』に取り入れられている。『測り方の科学史Ⅰ地球から宇宙へ』(西條敏美著、恒星社厚生閣)に「月食を利用した太陽までの距離を測る原理」として次の図が提示してある。

ここで、D,T,Nはそれぞれ太陽、月、地球の中心である。左側は皆既日食の図である。ORは月食のときの地球の影である(NT=NP)。プトレマイオスは、太陽までの距離NDが地球の半径NMの何倍にあたるかを、観測値と幾何を使って求めたのである。
必要な観測値は、3つである。
月までの距離NTが地球の半径の何倍か(a倍とおく)
月の視半径(∠TNH)は何度か(θとおく)
月食のときの地球の影の大きさPRは月の大きさTHの何倍か(b倍とする)。
幾何の方は、最終的には△NMG∽△HSGに着目するが、HSを求めるために台形PTSRに着目する。また、PR,THを求めるために、最初に△TNHに着目する。

地球の半径NMをReとする。
△TNHにおいて、NH=NT=aReである。月の半径THは
TH=aResinθ
また月食のときの地球の影の大きさPRは、
PR=bTH=abResinθとなる。
次に、台形PTSRの上底PRと下底TSに着目して
PR+TS=2NM
ここでTS=TH+HSだから、
PR+TH+HS=2NM
HS=2NM-PR-TH
=2Re-abResinθ-aResinθ
=2Re-aRe(b+1)sinθ
=Re{2-a(b+1)sinθ}

次に、△NMG∽△HSGと
NG=ND,HG=TD,TD=ND-NTに注意して、対応する辺の比をみる。
ND:TD=NM:HS
ここで、ND(太陽までの距離)をrsとすると、
rs: rs-aRe= Re: Re{2-a(b+1)sinθ}
=1:2-a(b+1)sinθ
rsについて解く。
rs-aRe=rs{2-a(b+1)sinθ}
rs{1-(2-a(b+1)sinθ)}=aRe
rs{a(b+1)sinθ)-1}=aRe
rs=a/{a(b+1)sinθ-1}・Re

プトレマイオスが依拠した観測値はa=64.17倍、b=2.6倍、2θ(視直径)=0°31′20"で、計算の結果は、太陽までの距離は地球の半径の1210倍を示した(現在は約23500倍である)。月食による推定は古代から中世にかけて行われた方法だという。
『測り方の科学史Ⅰ地球から宇宙へ』(西條敏美著、恒星社厚生閣、2011年)第3章太陽参照


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