対話とモノローグ

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『周期表 いまも進行中』を読む

2022-01-21 | 周期律
『周期表 いまも進行中』(E.R.シェリー著、渡辺正訳、丸善出版、2013)は小冊子だが、たいへん興味深い。偶然手にした本だが、相性を感じながら、8章まで来てなるほどと思った。次のように書いてあったのである。
(引用はじめ)
量子論・量子力学と周期表の関係をまとめましょう。1913年、エネルギーの量子化をもとに水素原子を扱ったボーアは、多電子原子にも考察を広げ、周期表の姿に合う結果を得ようとしました。やがて、ボーアが使った量子数(主量子数)のほか三つの量子数を考えないかぎり、周期表にうまく合わないとわかります。なお、ボーアの前にはJ・J トムソンが周期表をにらみつつ元素の電子配置を考えていました。/つまり周期表は、「原子物理学→古典量子論→量子力学」と歩む科学にとって試金石や道案内の役目をしたのです。周期表がニワトリ、量子力学が卵だといえましょう。/近ごろ、化学も周期表も量子力学ですっかり説明できるーーという風潮があります。「還元主義」といえましょうか。なるほど物理の理論は、いろいろな化学現象の説明に役立ってきました。しかしじつのところ周期表は、量子力学に実を結ぶ科学の歩みを支えてきたのです。その反対ではありません。いずれそのうち、周期表を説明できる理論が生まれる可能性はあるのでしょうけれど。
(引用おわり)
訳者は「あとがき」で次のように述べていた。
(引用はじめ)
ふつうは「量子論の産物」とみる周期表が、じつは量子論の生みの親だったーーという意外な見かた(8章末尾)には、思わず膝をたたきました。
(引用おわり)
メンデレーエフの周期表(実体論的段階)はボーア原子論(本質論的段階)の母胎だったという見方をしていたのである。

ただ、拙論「周期律の形成について」は進行を止めている。前期量子論(1925)で止まり、超ウラン元素93、94で止まっている。これを進行させなければならないだろう。


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