対話とモノローグ

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ハンソンの楕円軌道論2

2018-03-28 | 楕円幻想
『新天文学』第56章の「目覚め」で、ケプラーが念頭に置いていたのは卵形であった。それは距離の関係を満足するが、角度(均差)の関係は観測値とずれがあった。「Zを捨てMを選んだ理由」で、豊頬形についてふれたが、これが卵形の最終的な形であった。先の記事は、ケプラーの意識的な位置づけを捨象して(というのは、ケプラーが想定した物理的な力の関係は全く間違っていたから)、ケプラーの無意識を捉えて構成したものである。
(わたしが想定していた「楕円」は、ニュートンが引力を見いだした「楕円」であって、そこでは火星と太陽が引き合っている。それはケプラーの想定した物理的な関係ではない。)

これに対して、ハンソンはケプラーの意図をたどっている。卵形が物理的な仮説で、楕円は卵形を近似する幾何学的な仮説にすぎなかった。しかし、第58章で変化が起こる。卵形は捨てられ秤動は楕円に取り込まれる。ここで楕円がはじめて物理的な仮説になる。これがケプラーの発見の核心であることをハンソンは指摘している。
わたしは「Zを捨てMを選んだ理由」で次のように述べた。
「ケプラーは楕円軌道を予感していた。火星に固有の力を想定し秤動論を構想することによって、離心円から楕円を導こうとする。最初、直径上の秤動を想定した。半径KB上の点Kから点Zへの秤動である。しかし、これば楕円ではなく、豊頬形を形づくった。ケプラーは「直径上の秤動が楕円に通じる道であるはずはない」(第58章)と思うようになる。しかし、「苦労した末」に、「楕円が秤動と両立すると着想する」(第58章)に至った。」

第58章の末尾のポイントだけ引用しているが、ハンソンが着目しているのはここである。前後を含めて引用してみよう。
(引用はじめ)『新天文学』(岸本良彦訳)
何よりも最も大きな不安は、気が狂わんばかりに考え込んで精査してみても、これほどの真実らしさで、これほど観測した距離に一致する形で、直径上における秤動を惑星に割り当てられるのに、何故、惑星はむしろ均差を指標として楕円軌道のほうを進みたがるのか、その理由を発見できないことだった。ああ、私は何と滑稽だったことか。直径LK上における秤動LEが楕円に通じる道であるはずがない、と考えたとは。こうして私はかなり苦労した末に、次章で明らかになるように、楕円が秤動と両立すると着想するに至った。同時に次章で、物理学的原理から引き出した論拠が、この章で挙げた観測結果や代用仮説による検証と一致する以上、惑星には軌道の図形として完全な楕円以外に何も残らない、ということが証明されるだろう。
(引用おわり)
ハンソンはここに「概念組織の変動のモデル」を見た。(つづく)

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