対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

山本義隆の不思議

2017-12-20 | 楕円幻想
山本義隆の楕円発見の説明(『世界の見方の転換』3)と『新天文学』第56章を対照させてみると、ケプラーの推論と違っていることに気づいた。山本義隆の説明は「正割の代わりに半径を用いる」というケブラーの推論と対応していないのである。
山本義隆はケプラーが『新天文学』が掲げている図を変更して(太陽-離心円上の点を結ぶ2本の線分を省略している)、楕円軌道の発見の説明を行っている(注1)。
どうして、わざわざ、線分を省略したのだろう。これでは楕円軌道発見の端緒を把握できないのではないか。どうして、ケプラーが示している推論ではなく、自身の誤った読解を提示しているのだろう。しかも、ここは『世界の見方の転換』の最後の場面なのである。『世界の見方の転換』は全巻、圧倒されるのだが、ここだけは素人にもわかる間違いを示しているのである。山本義隆に抱く不思議(注2)である。
(注1)
図12.11ケプラーの第1法則(楕円軌道)の発見(『世界の見方の転換』3)

ケプラーの図では、線分AE、AKが引かれている。

(注2)
ケプラーは『新天文学』で楕円の焦点に言及していない。2定点をむすぶ線分の和が一定の点の軌跡という、楕円の定義をケプラーが知らなかったわけではないのに、どうして『新天文学』において焦点に言及しなかったのか。これがケプラーに対して、山本義隆が抱いた不思議である。焦点が抜けていては、楕円発見の画竜点睛を欠くのではないかという感じだろうか。
ここで示したのは山本義隆に対するわたしの不思議である。