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国によるJR北海道への支援策の全容判明(ver2)

2018年07月26日 | JR北海道 JR北
写真は国によって廃止が事実上決定された根室本線・富良野・上落合間の落合駅での釧路行2429Dと滝川行きの交換風景


07/26の北海道新聞朝刊に「国交相、JR北海道に監督命令へ 支援策の全容判明」という記事が掲載され。今後2年間のJR北海道に対する支援策が固まったと報道された。
以下は記事の概要
① 国土交通相が経営改善を求め、JR会社法に基づく異例の監督命令を出す。国交省は罰則を伴う監督命令を根拠に、JR北海道に経営再建を厳しく迫る構えだ。

② 国は、JR単独では維持困難とする10路線13区間のうち、輸送密度200人未満の留萌線(深川―留萌)など5区間については、バス転換などを進めるよう求める。

③ 残る宗谷線(名寄―稚内)など8区間は、19、20年度を「第1期集中改革期間」と位置付け、自治体と一体となって利用促進やコスト削減に取り組むよう要求。

④ 鉄道施設や車両の設備投資に助成金を充て、同水準の金額を国と自治体で負担する。自治体負担を軽減する地方財政措置も検討する。23年度に総括的な検証を行う。
注)7月27日の大臣の発表では、地方財政の軽減については明確には示されていない

⑤ 国は貨物列車の運行による修繕や、青函トンネルの維持管理に対して助成。エアポートの増強など経営基盤強化への設備投資に、国の助成金と無利子貸付金で2分の1ずつ支援する。

⑥ 鉄道・運輸整備機構の特例業務勘定を活用、沿線自治体に一定の負担を求める。支援額は400億円台となる見通し

 特例業務勘定による21年度以降の支援を継続するには、20年度の国会で改正案を審議、可決する必要がある。

以上が記事の要旨である。

記事を見た感想だが、まず驚いたのは具体的に廃線に踏み込んだというか、有無を言わさず5路線を廃止するという事だ。沿線自治体が廃止を受け入れた札沼線、夕張支線のほか、日高線、留萌線、根室線の富良野・上落合間は今後、廃止に向かって処理が進んでいくといことなのだろう。JR北も国のお墨付きを前面に出しながら強い態度で臨むことになるだろう。

 次に、沿線自治体の支援を前提にした国の支援なのだが、自治体の財政状況を鑑みてのことかと思うが、鉄道施設や車両設備投資への自治体の支援額に相当する金額を地方交付税として自治体に交付するという事だ。

JR北が従前から主張してきたJR貨物の負担増に関しては、貨物列車運行に伴う路線維持の負担増分を政府が肩代わりする。
これは、あくまで分割民営化時のスキームを維持し、JR貨物の株式上場を後押しする狙いがあるものと思われる。
また、国の政策として建設した青函トンネルの維持管理費用に対する助成は当然のことと感じる。
さらに新千歳と札幌間のエアポートの増強などはJR北海道の経営基盤強化につながるのは論を待たないし、それへの設備投資として、助成金と無利子貸付援するのも当面は最善の策と感じる。

とりあえずは今後2年間の支援という事だが、3年目以降の支援に関しては明確に示さず含みを持たせている。これは現行法制上、新たな予算措置と改正が必要であることもあり、国会での審議が必要となるからだろう。
その場合、国会では日本全体の公共交通の在り方を合わせて、議論を深めてほしいものだ。
北海道の鉄道は「開拓」と「石炭輸送」等、国の殖産興業のために敷設されたものが多く、人を運ぶことは二の次であった。したがって、産業構造の変化と人口構成の変化の中では路線の廃止・見直しはやむを得ないものと感じられる。
ただ、単にバスで代替えという事だけで良いのか、北海道民だけでなく、日本全体の問題として議論すべきことだろう。
さらに言えば、100㌔を超える長大路線の日高線廃止の影響は大きなものがあるわけだから、過疎地とは言いながらも10万人もの国民が居住する地域の、新しい交通インフラのありようを慎重に検討しなければならない。
単一自治体で距離も短い夕張支線と同じような感覚で事を収めようとするのなら、あまりに安易である。
また、日高線の走る箇所の護岸整備の問題はどうするのかも早急に示さなくてはならない、まさに、政権の言う「国土強靭化」が必要な地域だ。
そもそも、護岸の整備をJRという一企業に任せていたのは、実に不可解なことであった。海岸線が浸食されるがままになっていることに危機意識を持ってほしい。

政府は分割民営化の果実だけを享受している本州各社や鉄道事業を投げ出したかに見えるJR九州などの一方で、経営難に陥っている北海道と四国の問題には、分割民営化の仕組みそのものに手を入れるなどの、正面から対策を講ずることをしていない。その場しのぎの対策で逃れようとしている。
さらに、高齢化と過疎化が進む日本全体の公共交通へのビジョンもいまだに示せていない。
低金利による経営安定基金の運用益の大幅減少に対してもなんら対策を講ずることもしない。
さらに、あろうことかJR会社法に基づく異例の監督命令を出すなどとし、株主としての経営監視を怠ってきた自らの責任を回避、JR北海道に責任を負わせるという驚くべき行動に出ているのも看過できるものではない。


2018.7.27 編集











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