西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ドビュッシー「子供の領分」

2007-12-18 10:34:45 | 音楽一般
今日は、ドビュッシーのピアノ曲「子供の領分」が初演された日です(1908年、パリ)。
この曲集のことは、確か小学校か中学校の教科書に出ていたように思います。タイトルに、「子供の」が付いているから載せたのかと思いますが、演奏技術の点では決して子供向きの曲集ではないと思います。今、久しぶりにこの曲を聴いてみました。モニク・アースの演奏です。私は、教科書でこの曲名を見た時、どうも「領分」という言葉に引っかかっていました。原題はChildren's cornerです。どういうわけか、ドビュッシーはフランス語でではなく、英語でタイトルをつけたようです。今聴いたCD全集でも、他は勿論フランス語が書いてあるのですが、これだけは英語で書いてあります。ドビュッシーは当時英国かぶれだったとか?それは兎も角、cornerを「領分」と訳したわけですね。「かど・すみ」と辞書に出ていて、領分という語は見つからないと思いますが、他にこの場合にピッタリな語が見つけにくかったのでしょう。娘のエマ(シュウシュウと呼んでいたらしい)のために書いたということですが、6曲それぞれに「人形のセレナード」や「雪は踊る」などそれに相応しいタイトルが付けられていますが、最後の「ゴリウォグのケークウォーク」が一番印象に残ります。特徴的なリズムからでしょうか。製品名にも使われていますが、このケークウォークという言葉、これは黒人の舞曲ということで、手元の英和辞典には「最も風変わりな歩き方の組が賞品にケーキをもらう、もと黒人の競技」(ジーニアス英和辞典)と説明が出ています。それがどんなものかみたことがないので、ピンときませんが、作曲者はどこかでこれに興味を持ち取り入れたのでしょう。
シューマンに「子供の情景」という有名なピアノ曲集がありますが、シューマンの子供に対する優しさが現れた佳品だと思います。「トロイメライ(夢)」は中でも傑作です。シューマンは他にも「子供のためのアルバム」など子供用の音楽を書いています。ロシアのチャイコフスキーにも24曲からなる「子供のアルバム」がありこれも子供用の曲集です。(この中の第16曲「フランスの古い歌」のことは以前書き記しました。)ハンガリーのバルトークにも「子供のために」という85曲からなるピアノ曲集があります。すぐれた音楽家たちは子供の感性を伸ばそうとこのような曲集を書いたのだと思います。偉大な音楽家たちが偉大である所以だと思います。