西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

シューベルト・交響曲第8番「未完成」

2007-12-17 07:22:11 | ロマン派
今日は、シューベルトの交響曲第8番「未完成」が初演された日です(1865年、ウィーン)。
シューベルトは、おそらく彼の他のすべての交響曲と同様、これも4楽章構成にするつもりだったのだろう。しかし、完成したのは最初の2楽章だけだった。だから「未完成」というわけである。シューベルトには、前にも記したが、ピアノ・ソナタなど未完成の作品が多くある。しかしシューベルトにあっては、未完成の作品がとても惹きつける内容を持ったものが多いと私は感じざるを得ない。その代表的なものが、この「未完成交響曲」と言っていいだろう。これは確かに傑作である。これが書かれた1822年の7月に書かれた資料に「僕の夢」と言う短文がある。この中で、「そこで僕は自分の道を歩みだし、別れるものへの愛で胸を一杯にし遠くへさすらい出た。長い年月、僕は苦しみと愛とで2つに引き裂かれる思いだった。」という言葉がある。この曲の中にこのシューベルトの言葉を感じることは難しいことではないだろう。
この曲は、普通演奏されることはないが、第3楽章も9小節ほどのスコアが書かれている。スケッチはさらに先まで書かれている。第4楽章はスケッチ等もないが。シューベルトはこの曲をどのように考えていたのだろう。2楽章で完成されたものと考えたのか。形式としては完成してはないが、内容的にはもうこの曲に込めるものはないと思ったのか。というのは、翌年に友人に贈ったということだ。このことからすると、引き出しに入れていて忘れたという説は間違いということになる。兎も角、この交響曲は、その友人のもとに置かれたままになって、作曲者の死後40年近くなって初めて人々の前に姿を現したということだ。
シューベルトの作品をほぼ作曲順に番号を付けたドイッチュはこれにD.759の番号を与えた。私は、シューベルトの900番台の作品番号の付いたものは優れた作品が多いと書き、その考えは今でも変わらないが、この「未完成交響曲」が付けられた七百番台後半の作品から、既に多くの傑作が生み出されていると言うべきかもしれない。