怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「東大現代文で思考力を鍛える」出口汪

2015-11-28 08:32:42 | 
出口汪というとあの大本教の出口王仁三郎の息子さん、と言っても知る人ぞ知るかもしれませんが、今や入試現代文のカリスマ講師。当然この本も受験参考書の類と思うかもしれませんがさに非ず。

東大の「現代文」の入試問題で提示される問題文は、高級官僚養成学校のイメージとは異なり「反権力」「反常識」の主張が根底にあり、多種多様です。
そしてここで問われているものは、固定観念にとらわれない柔軟な思考力と、それを他者に正確に伝えるための論理的な思考力です。
この本では12の問題文が取り上げられていますが、問題文ということを離れて読んでみてもなかなか魅力的なものばかり。でも人生のいろいろな楽しみを封印して受験勉強として必死で知識を暗記して詰め込んできた受験生にはちょっと皮肉なものも多いかも。当の受験生はそんな皮肉を感じる余裕もないでしょうけど。
問題文は多岐にわたっていますが、さすがに受験問題ということもあって知る人ぞ知るというものばかりなんでしょうけど私には初めて読むものばかりです。そもそも著者で知っていたのが福永武彦と堀田善衛だけだったので当然でしょうが、改めて一般教養のなさを知ることになりました。
因みに東大の問題文は抽象度の高い、哲学的な文章、文学者の随想でも現代的な作家のものが選ばれるそうです。対して京大は小説が出題されることがあり、しかも森鴎外、夏目漱石、永井荷風など現代作家よりも文豪の文章が好んで出題されるとか。問題文にも大学の好みというか個性が出てくるみたいです。そのほかの大学で特色があるところは慶応大学とか。他大学でマークセンス方式中心の出題が増えている中で小論文を出題しており、論理的な読解力や思考力、記述力を試すものになっていて著者も高く評価してます。
この本は12の問題文についてその論が説くところを分かりやすく解説して、さらに問題に対する解き方を解説して論理的な答えを導き出し最後に模範解答を示しています。一通り問題文を読んだだけではもやもやとしていたものが解説によって論理的にすっきりするのはさすが現代文のカリスマ。一応自分でも問題を解いてみるのですが、とても模範解答のようにはできないのでやっぱり東大は無理か…
補講として、この問題文を読んで興味を持ったなら、次のステップとして読むべき本もちゃんと教えてくれます。
東大の受験問題という素材から論理的思考をちゃんと学べるようになっています。
この本が魅力的なのは論理的思考を学べるだけでなく、その題材に使ってある東大の問題文が魅力的だから。権威の塔のはずなのに権威に阿らない柔軟な思考の素材ばかりです。
思考力は鍛えられたどうかわかりませんが、なんだかとても勉強になった気分です。
今度は続編の京大のを読んでみましょう。

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