怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

池井戸潤「空飛ぶタイヤ」

2011-10-08 22:13:14 | 
「下町ロケット」で直木賞を取った池井戸潤の出世作?
それでも上下2段組で400ページ近い分量はなかなか一気とは行かないのですが、読み出すとやめれなくて1日とはいけませんが3日で読んでしまいました。
走っているトラックのタイヤが外れて歩道を歩いていた母子を襲い母親が死んでしまった横浜での事件の小説化です。

小説は事故を起こした運送会社の社長が主人公なのですが、こういう事故が起こった場合マスコミの集中砲火にさらされ、たとえ過失がなくてもぼろぼろにされてしまいます。そうした中で整備に問題がなかったと信じ、巨大な自動車会社に挑んでいく姿には悲壮感があります。モデル小説なので結果は判っていても思わず感情移入してしまい負けるながんばれと一生懸命応援しています。
しかしこういう小説に往々にしてあるのですが、自動車会社の常務が悪の権化のように書いてあります。そういう悪役でも巨大な自動車会社の最高幹部に上り詰めていくには血筋のよさだけではダメで、それなりの人間的魅力も能力もあったと思うのですが、そういうことを書けば小説にならないか。当時の三菱自動車はこの小説にあるホープ自動車のように財閥の一員としてのプライドだけが高くて組織として機能不全を起こし腐っていたのでしょうか。
だめになった組織なり会社の転落の契機はなんだったのだろう。トップの力なのでしょうか、時代の転機に乗り遅れたからでしょうか。始まりはほんの小さな事かも知れませんが、それが積み重なっていく中でにっちもさっちもいけなくなり、いつの間にかどうしようもない状況になってしまっているという事なのでしょうか。ちょっと違うかもしれませんが、今の状況を見るに市立病院(腐ったということではなく、みんなそれなりにがんばっているのに結果が伴わないという面で)もどこがいけなかったのか考えてしまいます。
それにしてもこの小説どこまで事実に基づいているのでしょうか。警察の対応はさもありなんと思うのですが、方針転換していく姿はかっこよすぎるような気もします。融資する立場の銀行も役員一人の力でこんなにも左右されるのでしょうか。それでも小さな運送会社の社長の孤軍奮闘というかぼろぼろになってもあきらめない姿は感動的です。マスコミによって推定有罪にされてしまうと会社も私生活も本当に四面楚歌で追い込まれていく。そこを支えていくのはなんなんだろう。いろいろ考えさせられる小説です。
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