怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

瀧本哲史「武器としての交渉思考」

2013-07-27 08:24:50 | 
著者の問題意識は最初のガイダンスで次のように明確に示されている。
現在あらゆる組織で「王様と家来モデル」が崩壊しようとしている。かつては絶対服従の軍隊(自衛隊)でさえも一方的な暴力を伴うような指示は通用しない。指揮系統がトップダウンの組織は時代の変化に対応できなくなってきている。
今、「上から与えられる正解ではなく、自分たちで答えを導き出す」と言う姿勢、即ち「自分たちで考え、自分たちで秩序を作り出す行為が必要となっている。そして自分たちの手で「新しい仕組みやルール」を作り出す手段こそ、この本のテーマである「交渉」です。
本気で世の中を動かすつもりなら、エスタブリッシュメントの支援を得ることが必要。異質なもの、自分とは前提とする考え方や文化的な背景すら、異なる相手と交渉して組んでいくことで大きな変化が起こせる。バラバラで動くのではなく共通の目的のために手を結びアクションを起こしていくのです。

ここから授業形式(著者はこれを実際に京大で講義しています)で6時限に亘って述べています。練習問題が適宜挿入してあり、それぞれの章の末には要約が出ているので、考えながら読んで行き最後に考えを振り返るのに便利です。
第1時間目は大切なものは「ロマン」と「そろばん」
金儲けはかなり大事、と言うか若いうちはロマンよりそろばんを優先すべき。そろばんは出来るだけ具体的に、短期的に結果が分かることが望ましい。どんなにすばらしい夢や希望を語ったところで、相手に対して具体的なメリットを提示できなければ、人を動かすことは難しい!
第2時間目は、自分の立場ではなくて相手の「利害」に焦点を当てると言うこと。交渉は「利害の調整」が最大のポイントであり、相手の主張をたくさん聞いた方が勝ち!「僕がかわいそうだからどうにかして」では交渉にならない、でも往々にしてそういう泣き言を言うんだよね。
第3時間目は「バトナ」は最強の武器、で「バトナ」て何?「best alternative to a negotiated agreement」の頭文字をとったもので「相手に提案に合意する以外の選択肢の中で、一番よいもの」だそうです。交渉は双方のバトナによって決まる。であるから交渉は情報を集める「だけ」の勝負。もう一方のビッグウインは一方のスモールウイン、ウインウインという言葉にだまされてはいけない。
第4時間目は「アンカリング」と「譲歩」を使いこなせ。どうも訳が分からない言葉が頻出するのですが、アンカリングとは船を停泊させる場合使う錨:アンカーを打つことからきています。一言でいえば錨とも言うべき「最初の提示条件」によって、交渉相手の認識をコントロールすることです。アンカリングは出来るだけ高い目標で行うのですが、継続的に市場でかつ続けるためには、あまり暴利を貪らないことが重要。だからアンカリングの条件は①高い目標、②現実的 ③説明が可能の3条件になります。でも現実の交渉において、あまりにもこちら側と相手側の考える条件にギャップがある時には譲歩の必要が出てくるのですが、その時、無条件の譲歩は絶対しない、相手にとっては価値が高いが、自分にとって価値が低いものを譲歩するのです。
5時間目は「非合理的な人間」とどう向き合うか。実際の交渉の場においては、どちらかと言えば話せば分かる人は少なくて合理的な交渉が成り立たない場合が多いと言うのは私の経験上の実感。とは言っても相手と交渉によって実りある合意を結べるかと言うのが肝要。非合理交渉者を6タイプに分けて対処法を解説しているのですが、相手の価値観は絶対に変えられないから、尊重して合わせるしかない。合理的・非合理的な交渉を問わず、やはり「相手の分析」が最重要!交渉時の服装、言葉使いのドレスコード、NGワードは交渉メンバーと共有しておくことです。
最後の6時間目は、自分自身の「宿題」をやろうです。それぞれが自分の得意な分野でリーダーシップを発揮し、ある時は皆の先頭に立ち、また別のときは他のリーダのサポート役に回る、そうすることによって社会全体の力を強めていくのです。若さゆえの無茶な行動、無謀な交渉が、世界を変える!自分の外部にいる「他者」とつながり、連帯し、行動をともに起こすためには、外部で話されている言葉を学ぶと同時に、自分の言葉も相手に届くように、磨き続けなければならない。
若くてまだ何の名声も地位も得ていない新人に読んでもらいたい本ですが、還暦間近の爺さんが読んでも自己啓発できる本です。しかし、自分の経験した数々の(特にうまく行かなかった)交渉シーンを思い返してみると、なかなか理屈で考えるようにはうまく行かないと思うのですが、頭の中を一度リセットして整理して考えるには本当に武器になると思います。


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