怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

梯 輝元「滅びない商店街の作り方」

2022-10-20 18:43:07 | 
北九州市の小倉の一番の繁華街は魚町商店街。
でもご多分に漏れず、近年は郊外型巨大スーパーに押されて商店街を歩く人も半分に減り、百貨店も閉店してしまい、往時の賑わいがなくなってきていた。
閉店する商店も増え、シャッター街となりつつあった。
そんな現状を何とかしなくてはと司法書士事務所を営み、父の跡を継いで地元で不動産業も営なむことになったのですが、全国的にも先進的で注目を集めたリノベーションの街づくりで、商店街を復活させた中心人物で、魚町商店街振興組合の理事長となって活躍している梯輝元さんの著書です。

一読して感心するのは梯さんのすごいパワーと人脈。北九州市というのはそれなりの大都会と思いますが、同級生なり幼馴染なり友達なりと必要な時にこれはと手を差し伸べる人が登場しています。まさに天の配剤か探せば有為な人材はおり、そこからどんどん新たなネットワークが生じて広がっていく感じです。
梯さんが街のリノベーションに取り組むきっかけは、父親が亡くなり空きビルを抱えた不動産業を引き継ぎ生き残りをかけて自社ビルの再生に取り組まなければいけなくなったから。第1回小倉家守構想検討委員会に参加して清水義次氏と出会い、意識改革され、期を同じくして独立したばかりの一級建築士の島田洋平氏から「コクラメルカート計画」の提案があったこと。まさに運命の出会いです。
そこから自社物件のリノベーションを行い「メルカート三番街」をオープンする。リノベーションの要点は物件を小分けしてテナント先行方式としてオーナー負担の外装内装工事を最小限にして5年での投資回収を目指す。家賃はできるだけ低くし敷金礼金はなし。内装工事はテナント負担で入居者の募集は不動産業者には頼まず、口コミやSNSを活用し、クリエータのためのインキュベータ施設として同じ志、意識を持った入居者が集まるように設定。入居者は自主的運営組織を運営して周辺の商店街とも交わっていき地域のコミュニティを復活していく。起業意欲ある人に安い賃料で場を提供し、大家はたとえ安くても空き物件にするよりもよく、商店街にも活気が出る。まさに三方よしです。
こういった仕掛けによって自社ビルの空きはテナントですべて埋まり、商店街にもにぎわいと活気を与え、ここからリノベーションスクール@北九州を行っていく中で魚町商店街の空き不動産のリノベーションの提案を行っていき、そこからリノベーションが実現する事例も進んでいき、主だった物件はもはやない状態にまでなっていく。
リノベーションは資金をかけない空き不動産の活用であって、民間ベースで進めるもので、ここに行政が成功事例とばかりに寄ってきて補助金とかのメニューを出そうとするのだが、補助金を出そうとすると要件を設けて必要な書類を提出してもらわなければいけない。迅速な意思決定と小回りの利いた対応が必要なリノベには補助金に頼らないビジネスモデルを構築する必要があります。下手に補助金をもらおうとすると制約の多さと書類つくりの手間でそのための人員が必要になり調整に手間取りうまくいかないというのが実感のようです。
自社ビルのリノベーションが軌道に乗ると梯さんは商店街全体に視野を広げてエリアマネジメント、リノベーションまちづくりに取り組んでいく。
この辺りから梯さんは八面六臂の活躍となって、全国的も成功事例として注目されてきたこともあって、全国各地の視察を受け入れ、講演にも飛び回るようにもなっていく。
エリアマネジメントに取り組もうとするとどうしても国、県、市の行政機関とか銀行、電力会社などの大企業との共同作業が必要になるのだが、縦割り組織と前例踏襲主義に悩まされることになる。受けようとする側には無駄としか思えない理不尽なことを求められたり、不必要な書類を求められたりとします。商店街のアーケード一つでも商業振興政策と中小零細企業対策に地域活性とか道路と電気設備と複雑に絡んで、物事を一つ進めようとしてもどれだけ各方面を回らないといけないか。
梯さん持ち前のパワーと国会議員、市会議員を含めた人脈とで問題に対処していくのですが、こういう人を相手にはそれぞれ立場があるだけに対応する方もなかなか大変でしょう。もちろん梯さん自体も年中無休で飛び回って働いているそうです。
それでも身内のはずの商店街の人たちはあくまで個人事業主であって、中にはリスクをとろうとせず利己的、近視眼的な人もいる。それをまとめ上げるのも大変なことだが、どうしてもやっかみや悪口を言う人も出てくるようです。文章の中にあからさまでなないですが愚痴っぽいところが出てきます。右肩上がりで儲かっている時はともかく衰退期には余計なことをしないで今の自分たちだけが何とかなればという人もいるので難しいですね。
私の実家のある雁道商店街ではもはやどんどん取り壊して、そこに一般民家の新築が進んでいる状況でリノベーションする物件も残っていないのですが、名古屋では円頓寺商店街が上手くリノベーションをして商店街としても活気が戻って成功事例になっているみたいです。地元をよく知っている核となる不動産屋さんと意欲ある建築士がキーパーソンになると上手く行くのでしょうか。
コメント
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