怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

小田嶋隆「ア・ピース・オブ・警句」

2022-10-01 09:41:32 | 
先日残念なことに逝去された小田嶋隆さん。1956年生まれなので私より2歳若い。まだまだこれからという年齢なのに早すぎる…
いつも日経ビジネスオンラインの記事を愛読していたのですが、この本はその連載記事から27本のコラムを選んだもの。

2015年から2019年までのコラムですが、多くがオリンピックと安倍政権の政権運営に対するもの。
小田嶋さんはツイッターで発信を頻繁にしていて、それに対してご多分に漏れず、リツィートとかいいねとか罵倒の書き込みが来て、そのこと自体も話題にして原稿の枚数稼ぎにしている?のですが、炎上も楽しんでいる感じ。匿名の意味不明の罵詈雑言は無視すればいいと思うのですが、冷静にいいね数と比較すれば世間の反応も分かるということ。実際いいねと思った人は書き込みなどしなくて、せいぜいリツィートするぐらいですか。
年代に従って読んでいくと如何に安倍政権が酷い政権運営をしていたのか改めて思い知らされます。
丁度安倍元首相の国葬でもめている時期ですが、敵と味方を峻別して味方には甘く、敵と思う相手には徹底して叩くという姿勢は、世論が割れてしまうのもむべなるかなと感じる次第。選出母体はともかく為政者として国を動かす時には国全体の利益を考え敵と思われる意見も取り入れていく度量が必要と思うのですが、今の政治家にそれを求めるのは無理なのか。
最初は2015年でオリンピックの国立競技場建設問題とかどんどん膨らむ予算問題なのですが、今となってはそんな話もあったのかと随分以前の問題に思えます。それにしても計画の無責任体制と言うか、誰が意思決定してどこで決めたのかが判然としないまま決まり、詳細な説明もないまま、設計をやり直す羽目になるとか予算が大きく膨らんで国と都と組織委員会で押し付けあうことになったのか、そのことについてだれが責任を取ったのでしょう?今となっては、国にもいろいろ物申した当時知事だったあの舛添さんがいたってまともに思えます。舛添さんは自分のせこさで自滅したのですが、知事にとどまってそのせこさを発揮できたら経費はずいぶん安く済んだかも。たぶん森さんには嫌われますけどね。
その頃から安倍さんは「責任」という言葉を使い分けていて、「過去の失敗についての責任」についてはどうもうやむやにしているのに対して、「これから実施する計画を誰の名において推進しるのか」という意味の責任(権限と言ってもいいのだろう)を使う時には、雄弁に全権委任を求めている。いろいろな不祥事などで責任は私にあると言うこともあっても具体的に自分自身責任を取ったことはあまりないように感じるのだけど、記憶にないだけ?
そこから時系列を追って安倍政治をフォローしていくのですが、森友問題や、加計学園問題、桜を見る会の問題を見て行くと、どうしてこんなに政権に忖度して官僚が劣化してしまったのか呆然としてしまいます。突然のごとく今までの見解を変えて、牽強付会の解釈がされ、行政文書が平気で改ざんされ廃棄され、虚偽の答弁がされる…
人事権を手にした為政者が行政を押さえつけて、忠誠を誓うイエスマンで固め、議会制民主主義を軽視して、国を自分の好きなように動かしていく。この渾然たる時代にはある程度独裁的な手法が必要と言うことかもしれませんが、未来に対しては大きな禍根を残す前例になったのではないでしょうか。
安倍政治とは何だったのか、一度きちんと振り返ってみるためにも読むことが必要でしょう。
もちろん内政だけではなく、小田嶋の専門外なのか触れられていませんけど、経済のアベノミクス、地球を俯瞰する外交はどうなんだという議論もあるのでしょうけど、日本が世界経済に深く組み込まれ国際情勢のただなかで日本だけではままならぬことばかりなのですけど、アベノミクスは当初目論んでいた成果は尻つぼみになり、やってる感をだすばかりで目先を次々変えていた。地球を俯瞰する外交も具体的成果は何だっただろう。これもやってる感はあったんですけど、ロシアとの外交はプーチンにいいように振り回されただけ、韓国とは戦後最悪と言われ、アメリカとの蜜月もトランプと共に去りぬ…
それにしても小田嶋さんが生きていれば、今回の国葬、オリンピックの贈収賄についてどういう発言をしているのか、聞いてみたかったなあ。
コメント
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