以前このブログで新井紀子「AIvs教科書が読めない子どもたち」をレビュー(20190726)したのですが、今回の本はその後の実践編。
前著にあるように著者は「東大ロボ」プロジェクトを行うことによって、人間の読解力をを診断し得るような高品質なベンチマークを作り、それを有償で受検するとともにAIにもそれを解かせてみる研究を行うことの必要性から、リーディング・スキル・テスト(RST)を提唱します。
ところが実際にRSTを受けてもらうと中高校生の結果が予想外に悪い。「意味を理解して読むことが出来ない」という現象が予想外に広がっている。
小6から中1までの段階でなるべく多くの生徒にRSTを受検してもらい、読みの偏りや苦手分野についての共通認識を持ち、卒業までに中学校の全教科書を読んで分かるようになってほしい。その思いでRSTを提供する「教育のための科学研究所」という一般社団法人を立ち上げました。
この本ではRSTとは実際にどんなものかを分かってもらうためにこの本では紙上体験版を用意してあります。
「様々な分野の、事実について書かれている短い文書を正確に読めるかどうか」の能力を6分野7項目の異なる観点から簡易的に診断できます。
問題は28問。巻末には解答用紙がありますが、別にノートなりに番号を書いて回答を書いて配点して点数を出しても何ら支障ありません。私は図書館で借りた本なので巻末の解答用紙に書き込むことはできないので白紙に回答しました。
と言ってももしこれで悲惨な結果ならば今まで何を偉そうに読んでいたんだとなりそうで怖くてすぐにはできませんでした。一応心の準備を整えて挑みました。
結果はというと写真にも写っていますが、27問正解。1問だけ間違えました。全問正解は上位1%未満の基礎的・汎用的読解力を有する人だそうで、1問間違えただけと言うことは上位3%未満に入っているかも(ホッとするとともに鼻高々!)もっとも読解力は決して一人で獲得できるものではなく自身の資質だけでなく生育環境がはぐくんだものとか。下町の貧しい3世代同居で大家族の環境が良かったのか。何が幸いするか分からないものです。
紙上体験版の後で、このRSTの結果によって分かることをタイプ別に分析をしています。分析は今までこのRSTを受検した18万人の結果データに基づいたものです。(自分の結果がよかったので言えますけど)思うような結果が出なかった人も謙虚に受け止めてください。
ところでこのRSTは著者の努力もあってどんどんその輪が広がっています。自治体レベルで全数調査をするというところも出ています。具体的には埼玉県戸田市、東京都板橋区、富山県立山町です。教育長や首長が本気で取り組めばできるということです。その他にも高校大学、企業などでも行われてきています。
そうやって受検者が増えることによって膨大なデータが積み重ねられていて、分かってきたことがあります。
主なものだけ紹介すると
・高校のRST能力値の平均とその高校の偏差値には極めて高い相関がある。
・高校生では、全体としても個人としても、RSTの能力値が自然に上がるとは言えない。
・中学生の学校外での学習時間とRSTの能力値に相関はない
RST能力値と高校の偏差値が相関があるというのは当然のような気がしますが、高校生ではもはや能力値が自然に上がることがないというと小中学生のうちに対処しなくてはいけないということです。しかも学外の学習時間と相関関係がないということは、小学生までにいろいろ取り組まないといけないということ?
ところで中学生の学力テストとRSTの能力値には中程度の相関があるのだが、中間テストの成績とはほとんど相関がない。これは中間テストが問題範囲が限定されていて暗記勉強で何とかなるからとか。暗記勉強については、入試が暗記を求めているわけではなく、読解力が不足している人は暗記に走らざるを得ないというのが実情という解釈。読解力がいかに学力に大きく影響しているかが分かる。
立山町の小中学校の結果とか非常に興味深い分析事例が出ているので、興味がある方は是非本書を読んでみてください。
ところで、ではどうすれば読解力はあげることが出来るのか、第8章では読解力を培う授業を提案していて、紙上授業を3例出しています。
国語の授業というと定番の文学作品や随筆が教科書に載って、一生懸命読んだ覚えですが、それよりも基礎的な読解力をきちんと身につけて、教科書に書いてあることを読み取れるようにすることが大事と言うことはよく理解できました。算数でも文章問題だとだめとか、理科で問題で何が問われているか分からないのでは、学力が上がり様がありません。
私の同級生にも学校の先生をしている人(ほとんどの人は定年で引退しているはずですが、再雇用なりでまだ頑張っている人もいると思うのですけど)には是非この本を読んで意見・感想を聞かせてもらいたいものです。コメントを待っています。
このRSTは著者が初めて2019年でまだ3年ほどの歴史しかないのですが、果たして昔から読解力がない人が多かったのか最近増えたのかが分からない。案外昔も読解力がない人が多かったのですが、ほとんどの人が従事していた昭和の仕事では、問題なくこなせたので、それほどのことが必要なかったかも…
これから5年10年とこのRSTを広めていくことによって、膨大なデータが集積されるので、今までデータなしに信じられていた勉強法とかを検証することが出来るはずです。さらには読解力をつけるにはどういった家庭学習、幼児教育、小学校の授業がいいかなどどんどん分かってくるかもしれません。両親、祖父母がどうかかわるといいのかなんてことも分かるとちょっと怖いような気がします。
危険な暑さで引き籠る日々にはこういう本を真剣に読むのも一興です。
前著にあるように著者は「東大ロボ」プロジェクトを行うことによって、人間の読解力をを診断し得るような高品質なベンチマークを作り、それを有償で受検するとともにAIにもそれを解かせてみる研究を行うことの必要性から、リーディング・スキル・テスト(RST)を提唱します。
ところが実際にRSTを受けてもらうと中高校生の結果が予想外に悪い。「意味を理解して読むことが出来ない」という現象が予想外に広がっている。
小6から中1までの段階でなるべく多くの生徒にRSTを受検してもらい、読みの偏りや苦手分野についての共通認識を持ち、卒業までに中学校の全教科書を読んで分かるようになってほしい。その思いでRSTを提供する「教育のための科学研究所」という一般社団法人を立ち上げました。
この本ではRSTとは実際にどんなものかを分かってもらうためにこの本では紙上体験版を用意してあります。
「様々な分野の、事実について書かれている短い文書を正確に読めるかどうか」の能力を6分野7項目の異なる観点から簡易的に診断できます。
問題は28問。巻末には解答用紙がありますが、別にノートなりに番号を書いて回答を書いて配点して点数を出しても何ら支障ありません。私は図書館で借りた本なので巻末の解答用紙に書き込むことはできないので白紙に回答しました。
と言ってももしこれで悲惨な結果ならば今まで何を偉そうに読んでいたんだとなりそうで怖くてすぐにはできませんでした。一応心の準備を整えて挑みました。
結果はというと写真にも写っていますが、27問正解。1問だけ間違えました。全問正解は上位1%未満の基礎的・汎用的読解力を有する人だそうで、1問間違えただけと言うことは上位3%未満に入っているかも(ホッとするとともに鼻高々!)もっとも読解力は決して一人で獲得できるものではなく自身の資質だけでなく生育環境がはぐくんだものとか。下町の貧しい3世代同居で大家族の環境が良かったのか。何が幸いするか分からないものです。
紙上体験版の後で、このRSTの結果によって分かることをタイプ別に分析をしています。分析は今までこのRSTを受検した18万人の結果データに基づいたものです。(自分の結果がよかったので言えますけど)思うような結果が出なかった人も謙虚に受け止めてください。
ところでこのRSTは著者の努力もあってどんどんその輪が広がっています。自治体レベルで全数調査をするというところも出ています。具体的には埼玉県戸田市、東京都板橋区、富山県立山町です。教育長や首長が本気で取り組めばできるということです。その他にも高校大学、企業などでも行われてきています。
そうやって受検者が増えることによって膨大なデータが積み重ねられていて、分かってきたことがあります。
主なものだけ紹介すると
・高校のRST能力値の平均とその高校の偏差値には極めて高い相関がある。
・高校生では、全体としても個人としても、RSTの能力値が自然に上がるとは言えない。
・中学生の学校外での学習時間とRSTの能力値に相関はない
RST能力値と高校の偏差値が相関があるというのは当然のような気がしますが、高校生ではもはや能力値が自然に上がることがないというと小中学生のうちに対処しなくてはいけないということです。しかも学外の学習時間と相関関係がないということは、小学生までにいろいろ取り組まないといけないということ?
ところで中学生の学力テストとRSTの能力値には中程度の相関があるのだが、中間テストの成績とはほとんど相関がない。これは中間テストが問題範囲が限定されていて暗記勉強で何とかなるからとか。暗記勉強については、入試が暗記を求めているわけではなく、読解力が不足している人は暗記に走らざるを得ないというのが実情という解釈。読解力がいかに学力に大きく影響しているかが分かる。
立山町の小中学校の結果とか非常に興味深い分析事例が出ているので、興味がある方は是非本書を読んでみてください。
ところで、ではどうすれば読解力はあげることが出来るのか、第8章では読解力を培う授業を提案していて、紙上授業を3例出しています。
国語の授業というと定番の文学作品や随筆が教科書に載って、一生懸命読んだ覚えですが、それよりも基礎的な読解力をきちんと身につけて、教科書に書いてあることを読み取れるようにすることが大事と言うことはよく理解できました。算数でも文章問題だとだめとか、理科で問題で何が問われているか分からないのでは、学力が上がり様がありません。
私の同級生にも学校の先生をしている人(ほとんどの人は定年で引退しているはずですが、再雇用なりでまだ頑張っている人もいると思うのですけど)には是非この本を読んで意見・感想を聞かせてもらいたいものです。コメントを待っています。
このRSTは著者が初めて2019年でまだ3年ほどの歴史しかないのですが、果たして昔から読解力がない人が多かったのか最近増えたのかが分からない。案外昔も読解力がない人が多かったのですが、ほとんどの人が従事していた昭和の仕事では、問題なくこなせたので、それほどのことが必要なかったかも…
これから5年10年とこのRSTを広めていくことによって、膨大なデータが集積されるので、今までデータなしに信じられていた勉強法とかを検証することが出来るはずです。さらには読解力をつけるにはどういった家庭学習、幼児教育、小学校の授業がいいかなどどんどん分かってくるかもしれません。両親、祖父母がどうかかわるといいのかなんてことも分かるとちょっと怖いような気がします。
危険な暑さで引き籠る日々にはこういう本を真剣に読むのも一興です。