怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

田中秀征「保守再生の好機」

2017-11-25 08:32:52 | 
今はコメンテーターとして活躍している田中秀征は政治家としては、ある意味理念先行で選挙には弱かった。泥臭い利益誘導などできないし、選挙民に媚びることもできないので、今の日本ではやむを得ないというべきだろう。初当選するまでに10年以上かかっていて落選を繰り返していたのにめげなかったのは強い志があったのだろうが、これでは目端の利くほとんどの人はあきらめてしまうのは当然。
だが彼自身は自分こそ国政で活躍すべき有為な人材であり必要とされている人材だという強烈な自負心があると思う。
そのことがこの本の選挙制度の議論には隠れて見えている。今の小選挙区比例代表制で、比例を地域で割りその比率をどんどん小さくしていく制度では、自分はもはや立候補する意思はないにしろ自分と同じような有為な人材が出てくることができないと言う。彼自身は穏当な多党制が妥当と思っているのですが、今の制度では人材が先細りしてしまうと。思うに細川政権前後は一種の説病にかかったように選挙制度改革が言われていたのですが、制度というものは特に選挙制度は個々の議員の利害が絡むので熱病にうなされるようにしてでないと変更できないものだったのでしょう。でも、その結果は理性的な部分を切り落としがちで、現状の通りです。
ところでこの本の言いたいことは選挙制度ではなくて、憲法論議と集団的自衛権の話。この本が出たのは2015年。解釈改憲の下、集団的自衛権行使法が成立する前だったので、当然です。

秀征さんの整理によると憲法改正については3つの立場がある。
・自主改憲派;現行憲法はマッカーサ司令部が作って押し付けてきたもので、認めない。自分たちで手直しして自主憲法を作らなくてはいけない。もしくは明治憲法に立ち戻らないといけないというもの。今何かと話題の日本会議の立場ですね。
・時代対応派;現行憲法は終戦直後と現在は状況が全く違う以上、例えば環境権とか国会の7条解散とか時代にそぐわない面も多々あるので、時代の問題に対応した改正はしてもいい。ちょっと原理護憲派とは相いれないかもしれませんが、憲法自身にも改正規定がある以上、不磨の大典ではなく状況に応じて改正するのは当然ですけど、いつ、どこをどのようにというのは大きな議論があるところです。
・集団的自衛権派;アメリカにもいろいろ言われいるし、集団的自衛権が緊急に必要だから改憲すべきということ。安倍さんはこの立場だったと思うのですが、でもこれ法律が通ったので改憲する喫緊の必要性はなくなったというのは田原総一朗が安倍さんと話したときに言われたとか。未だに安倍さんが改憲に拘るのは歴史に名を残したいということと本音は自主改憲派ということなんでしょう。
集団的自衛権についての秀征さんの立場は明らかに憲法違反。政府の上げた具体例は個別的自衛権で対応できるものであるし、解釈改憲は邪道。安保体制下で日米が軍事的にほぼ一体というか日本が指揮下に置かれている状況では、アメリカの戦争の手助けをするのに日本の自衛隊が動員されるだけのもので、日本がアメリカに従って戦争の当事者になっていくもの。一般論としての集団的自衛権行使云々とは違うレベルの話なのに自衛隊が血を流すことによってアメリカに一人前と認められたいと願っているかのようです。
自分こそ宮沢さんの弟子で戦後日本の保守本流だと自負している秀征さん、歴史認識でも、安全保障論でも統治機構についても今の安倍政権には強い違和感を感じてつつも安倍一強政治に忸怩たる思いが出ている本です。
ところで立憲民主党の枝野さんはリベラル保守のようなことを言っているけど、その立ち位置は秀征さんと似ている。時代に合わせて憲法改正することには賛成のようだし、大平さんが目指すべき人だとするとまさに秀征さんいうところの保守本流。今後上手いところ保守層を取り込むことが出来るかどうかが飛躍できるかどうかの分かれ目か。
いっそのこと田中秀征をブレーンに登用したらどうでしょうか。その場合の対立軸は安全保障?
私としては、このまま日銀の金融緩和を進めていくのは持続可能性がなくて、将来的には大きなつけを払わざるを得なくなると思われる(中央銀行は持ちこたえられるかを読んでください)だけに、アベノミクスを正面に据えて対決してほしいのですが、嫌なことはみんな見ようとしないんですよね。
コメント
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