この本は瀧本哲史が雑誌とかに連載したものをもとに再編集したもの。そのため時事評論的な要素が多くて、読みやすいものになっています。
きちんと読む本としては先日紹介した様な「君に友達はいらない」などを読むほうがいいのでしょうが、新書で軽い気持ちで読むこういう本もそれはそれで面白いし、いつもながらですが各段落にはまとめが箇条書きで書いてあり、本文中にも強調フォントが使われていて気になったところだけでもちょこちょこと読んでもいいですね。
一番面白かったのは最初の「ヒットコンテンツには仕掛けがある」でしたので、まず最初から読むのをお勧めします。
最近芸能人の引退騒ぎとかいろいろあって芸能プロはタレントを奴隷契約でしばっているのかとか芸能人に基本的人権はないのかと言われていますが、タレントビジネスは究極の人材ビジネス。
このビジネスには3つの特徴的な壁がある。
1;どの人材が売れるかわからない
2;稼働率の限界(生身の人間がこなせる仕事量には限界がある)という壁がある
3;売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレント側に移る
この問題点を解決する方法はタレントを個別に売り出すのではなくて、複数のタレントを包括する「システム」=「プラットフォーム」を作り、そのシステムごとまとめて売ろうとすること。
具体的には「AKB48」です。
誰が売れるかわからないなら多様なタレントをパッケージにして様々なコンテンツを同時に出して、人気の上下に合わせてそれを入れ替える。総選挙と言うスキームで消費者が自分の好みを示してくれる。
個々のタレントではなくてAKB全体として売っていることで稼働率の問題もクリアー。
個々のタレントはグループのマーケティング能力に依存しているので、グループの主導権はタレントではなくてこちらにあり、リスクは大幅に削減される。
コンテンツを束ねる「プラットフォーム」を作ることで、様々なリスクを軽減してビジネスに永続性を持たせている。
このプラットフォーム事業と言う手法、AKB独自のものではなくて古くは宝塚、弁護士事務所、コンサル会社も同様な方式の古典的なモデルとか。
プラットフォームの運営者(AKBでいえば秋元さん)の仕事とは「集客」「ビジネスモデルの提供」「プラットフォームの管理」であり、人、物、情報をネットワーク化し、そのハブとして利益を上げている。強いプラットフォームは利益を独占し、リスクを回避できる。
ビジネスの世界では、グーグルやヤフーはプラットフォーム会社だし、鉄道会社も鉄道というインフラを軸にプラットフォームビジネスを構築できる。
成功のカギはブランドメッセージで、この視点でいかに優れたプラットフォームを構築していくことが儲ける仕組みを作っていく。単なる参加者ではコモデティ化して高い報酬を得ることはできない。
それにしてもこういうプラットフォームを構築した秋元さんはえらい。
著者はエンジェル投資家としても活躍しているのですが、どこに投資すべきかと言う経験則などを披露しているのですが、これが結構面白い。
・自分が属する業界のことを知り尽くし、かつ、新しい仕組みについてアイデアを持てば、起業は成功する確率が高い。
・多くの組織で基本とされている合議制は、決してベストの結果を生むものではなく、(実例を挙げていますが)多くのベンチャーキャピタルが投資を希望して投資が殺到した会社に限って失敗するということが少なくない。
・トップマネジメントは、広範で多様な知識や能力を持つジェネラリストでなくてはならないが、「異見」を取り入れることが質の良い決定を生む。どのような人材とどのような関係を構築しているか、その多様性、広がりと深さに注目すべき。
・名古屋人としては意外なのですが、定点観測では、北海道で起きた事象は、日本でこれから起きることの前触れとみることができる。北海道は観光立国の未来を映し出すとともに、夕張市の破たん、JR北海道の苦境、人口動態としての札幌集中と地方の過疎の進行。同じようなことが近未来日本のあちこちで見えてくるかも…
こういう思考をもとにして大学教育と入試、政治のありよう特に地方政治についての考察をしています。その性格上コモデテイ化してしまいがちなのですが、あるべき地方議員の姿などは納得します。「身近な代理人」「市民向けロビーイスト」として行政と住民の間を取り持つ訳知りの議員は存在価値があると思うのですが、それにしては報酬が高すぎるのかな。あるいは玉石混交の石がどうしても多くて、あまり機能しない無駄な人が多いかも。玉なのにその方向を私利私欲に一生懸命な人は一番たちが悪いのですが、そういう人が有能と思われて選挙にも強いという構造には如何ともしがたいのですが。
新潮新書で税別780円。お値打ちだと思います。
きちんと読む本としては先日紹介した様な「君に友達はいらない」などを読むほうがいいのでしょうが、新書で軽い気持ちで読むこういう本もそれはそれで面白いし、いつもながらですが各段落にはまとめが箇条書きで書いてあり、本文中にも強調フォントが使われていて気になったところだけでもちょこちょこと読んでもいいですね。
一番面白かったのは最初の「ヒットコンテンツには仕掛けがある」でしたので、まず最初から読むのをお勧めします。
最近芸能人の引退騒ぎとかいろいろあって芸能プロはタレントを奴隷契約でしばっているのかとか芸能人に基本的人権はないのかと言われていますが、タレントビジネスは究極の人材ビジネス。
このビジネスには3つの特徴的な壁がある。
1;どの人材が売れるかわからない
2;稼働率の限界(生身の人間がこなせる仕事量には限界がある)という壁がある
3;売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレント側に移る
この問題点を解決する方法はタレントを個別に売り出すのではなくて、複数のタレントを包括する「システム」=「プラットフォーム」を作り、そのシステムごとまとめて売ろうとすること。
具体的には「AKB48」です。
誰が売れるかわからないなら多様なタレントをパッケージにして様々なコンテンツを同時に出して、人気の上下に合わせてそれを入れ替える。総選挙と言うスキームで消費者が自分の好みを示してくれる。
個々のタレントではなくてAKB全体として売っていることで稼働率の問題もクリアー。
個々のタレントはグループのマーケティング能力に依存しているので、グループの主導権はタレントではなくてこちらにあり、リスクは大幅に削減される。
コンテンツを束ねる「プラットフォーム」を作ることで、様々なリスクを軽減してビジネスに永続性を持たせている。
このプラットフォーム事業と言う手法、AKB独自のものではなくて古くは宝塚、弁護士事務所、コンサル会社も同様な方式の古典的なモデルとか。
プラットフォームの運営者(AKBでいえば秋元さん)の仕事とは「集客」「ビジネスモデルの提供」「プラットフォームの管理」であり、人、物、情報をネットワーク化し、そのハブとして利益を上げている。強いプラットフォームは利益を独占し、リスクを回避できる。
ビジネスの世界では、グーグルやヤフーはプラットフォーム会社だし、鉄道会社も鉄道というインフラを軸にプラットフォームビジネスを構築できる。
成功のカギはブランドメッセージで、この視点でいかに優れたプラットフォームを構築していくことが儲ける仕組みを作っていく。単なる参加者ではコモデティ化して高い報酬を得ることはできない。
それにしてもこういうプラットフォームを構築した秋元さんはえらい。
著者はエンジェル投資家としても活躍しているのですが、どこに投資すべきかと言う経験則などを披露しているのですが、これが結構面白い。
・自分が属する業界のことを知り尽くし、かつ、新しい仕組みについてアイデアを持てば、起業は成功する確率が高い。
・多くの組織で基本とされている合議制は、決してベストの結果を生むものではなく、(実例を挙げていますが)多くのベンチャーキャピタルが投資を希望して投資が殺到した会社に限って失敗するということが少なくない。
・トップマネジメントは、広範で多様な知識や能力を持つジェネラリストでなくてはならないが、「異見」を取り入れることが質の良い決定を生む。どのような人材とどのような関係を構築しているか、その多様性、広がりと深さに注目すべき。
・名古屋人としては意外なのですが、定点観測では、北海道で起きた事象は、日本でこれから起きることの前触れとみることができる。北海道は観光立国の未来を映し出すとともに、夕張市の破たん、JR北海道の苦境、人口動態としての札幌集中と地方の過疎の進行。同じようなことが近未来日本のあちこちで見えてくるかも…
こういう思考をもとにして大学教育と入試、政治のありよう特に地方政治についての考察をしています。その性格上コモデテイ化してしまいがちなのですが、あるべき地方議員の姿などは納得します。「身近な代理人」「市民向けロビーイスト」として行政と住民の間を取り持つ訳知りの議員は存在価値があると思うのですが、それにしては報酬が高すぎるのかな。あるいは玉石混交の石がどうしても多くて、あまり機能しない無駄な人が多いかも。玉なのにその方向を私利私欲に一生懸命な人は一番たちが悪いのですが、そういう人が有能と思われて選挙にも強いという構造には如何ともしがたいのですが。
新潮新書で税別780円。お値打ちだと思います。