「ベルカ、吠えないのか」のテーマは軍用犬(あ、この文章ネタバラしまくり、だけど必ずしもこれから読むヒトのためにならんことはないと思う)
「ベルカ」は世界で初めて宇宙から生還したソ連のイヌ(これは史実)、いっしょに飛んだメスのストレルカと交配し、生まれた子孫たちは訓練されて軍用犬になる、これは当時の首相フルシチョフが「ほとんどジョーク」で考えたことだったが、天才的な一人の軍人によって間違いなしの現実と化したのだった(もちろんこれはフィクション)
このイヌ集団に太平洋戦争中のキスカ島でアメリカ軍につかまった日本の軍用犬2頭の子孫たちが参加することになった、彼らの運命が朝鮮半島、ベトナム、アフガンで交差するそのプロセスは何ともドラマティックというかファンタクティック(でありながらどこかリアルなこの筆力は何なんだろ?)
ところで、ベトナム戦争の頃だったと思うけど、軍用犬について「殺人兵器になってしまったイヌは危険過ぎて平時には飼えない、彼らは戦地から復員することなく殺処分にされるのだ、けどこれってほんとはヒトも同じなんじゃないか?」という記事を見たことがある(確かにそれ言えるかもね、一旦暴力主義者として教育されてしまったら戦争が終わったからって戻れなくなるのかも、普通の人間を品性下劣にする教育って間違いなしにあるもんね・・・)
ソ連がロシアになった時、軍用犬たちにもその運命がやって来た、アフガン戦争を強引に終わらせた時に使われた(これもフィクション-だろなあ)後「一頭残らず殺処分」の指令が出たのだ
天才軍人の局長はただ一頭残した老犬ベルカとその子供たち、忠実な元部下とその家族、それに日本人ヤクザの娘(何ゆえ彼女を仲間にしたのかいまいち意図がよくわからない)と共に蜂起を企てて鎮圧された、生き残った娘と老婆(部下の母親)とイヌ(ベルカの子供)はカムチャッカ半島を東へ船出する、このお話が始まった島キスカをめざして・・・
アフガン戦争までと違って、この後半部分はリアリティが全くない、ファンタジーというよりほとんどミシカル(神話的)になっている、ここが読者を選ぶというか賛否両論かまびすしいとこなんだろね、私もこの展開にはちょっと抵抗があった、けどそれは前半の名作ぶりをキズつけるものじゃないと思う
エリツィン大統領、このお話知ってたかなあ・・・・・