信越本線の碓氷峠に初めて撮影に訪れたのは1990年の夏のことでした。当時はインターネットなど影も形もない時代で、撮影地についても実際に行ってみないとどういうところか分からないといったことが多々ありました。線路に沿って走る碓氷峠の旧道についても、184箇所ものカーブがあるとは知らず、まだ初心者でマークも取れない頃、いったいあと何回カーブを曲ればいいんだと思いながら峠を上り下りしたことが思い出されます。しかし、特急電車をEF63の重連で峠を押し上げて行くという、全国でもこの峠だけでしか見られない光景と美しい峠の風景にすっかり魅了され、以来、四季折々、廃止までこの峠に通いました。写真は廃止の2年前の1995年の夏、旧丸山変電所手前のカーブの外側から、峠を下ってきた189系あさまを撮影したものです。この頃はまだ撮影者も数名といったところでしたが、廃止の年には大変な人出でした。私は廃止された路線について、現役時代を知らない路線であれば、遺構などを探るべく訪れるのは好きなのですが、列車が走っていた時代を知っている路線については、「夏草や兵どもが 夢の跡・・・」の状態になっている光景を見るのがあまり好きではなく、廃止以来、子どもが小さい頃、一度だけ碓氷峠鉄道文化むらに行ったのを除き、その先の峠の区間にはいっさい足を踏み入れていませんでした。しかし、20年という長い時が過ぎ、最近になって、若い頃歩き回った碓氷峠を再び訪れてみたいという気持ちが芽生えてきました。
信越本線 横川 - 軽井沢
Nikon F801S Ai AF Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D RVP