路隘庵日剰

中年や暮れ方近くの後方凡走

真直ぐに続く夏野で別れたり

2005年08月10日 | Weblog

 朝花巻温泉を後にして、タクシーで花巻駅へ。
 周囲は緑の田園。暑くなりそうですね、と柔らかい訛りの運転手さんがクーラーを強くする。

 花巻駅から二両の電車(ディーゼル車?)で、新花巻まで。
 ここで遠野へ行く三人とお別れ。
 ツグミが飴二つくれる。
 じゃ、気を付けて。

  見送れば田中を走る朝の道

 新花巻の駅舎は広がる田圃の中に建っている。銀河鉄道を模した・・・と昨日のTさんが教えてくださったけれど、それほどでもないか。
 二階のホームで二十分ほど待つ。
 開けられた窓から日射しと微風が入ってくる。
 ちょうど眼下にさきほど乗ってきた線路と並行して走る道路が、ほぼ真直ぐに田園の彼方へと続いている。点在する屋敷森にかこまれた家々。
 なにやら井上陽水「少年時代」といった風情である。
 風に吹かれながら、その光景を見ていると、この旅に来て本当に良かった、としみじみ思うのである。

  深呼吸あしたのぼくにまた来よう

 新幹線。車中で、王敏『謝謝 宮沢賢治』を読む。(おもしろかった)
 読み終わって熟睡。

 東京に着いて、時間があったので八重洲ブックセンターへ。
 東京は暑い。地面から上って来るようなイヤな暑さ。
 駅前では右翼の街宣車が大音量で軍歌を流している。
 いろいろ眺めて、結局買ったのは一冊。竹田篤司『物語「京都学派」』中公叢書。
 店を出る頃に雨降り出す。

 その後、車中で買ったばかりの本を少しだけ読み、あとはまた熟睡。
 夕刻無事帰宅。
 明日帰るはずの家族の安寧を祈って就寝。

  新聞の束を引き抜き旅終わる



 

雨あがる『いかりのにがさまた青さ』

2005年08月10日 | Weblog
 八月八日。
 朝浅虫温泉をあとにして、在来線で八戸まで。
 満員。ハンガリー人の一団(複数の家族達)が指定席に入り込んで、それでも本来の指定席券を持つ人たちが来るたびに、立ち上がっては、通路に並ぶ。(ハンガリー語というのはさっぱり判らないなあ)

 八戸から盛岡まで新幹線。
 盛岡から各駅に乗り換え、花巻をめざす。
 冬眠鼠さんとレンタカーで周遊することに決めるも、免許証を持って来ていないことに気づき計画断念。悔やむもいたしかたなし。
 それでなるべく効率的に周ることにして、ひとつ前の駅で下車。
 鄙びた典型的な地方駅と思われるその駅前(駅名失念)で、タクシーを拾い、羅須地人協会をめざす。
 Sタクシー、運転手はTさん。
 親切な(或いは商売熱心な)運転手さんで、花巻農業高校で、鍵をとってきてくれて、そのままガイドしてくださる。
 折柄、雨。
 賢治の晩年の家は小さな二階家。それでも往時は別荘としてはシャレたものだっただろう。オルガンのある洋間と、回り廊下の和室。
 下ノ畑ニ居リマス。
 黒板の文字がだいぶ太くなっていた。

  雨の日にあなたは何をみていたか

 その後イギリス海岸に。
 何分にも地理不案内。どこを走っているのかよくわからない。レンタカーにしなくて良かったかもしれない。
 雨の北上河畔。
 川原を海岸と呼んでしまうのは、考えてみれば不思議な感覚だな。

  川浪や時になみだもゆるやかに

 Tさんの案内を聞きながら、宮沢賢治記念館へ。
 花巻は穀倉地帯が続き、点在する家々も昔ながらの大きな農家が眼につく。
 Tさんの東北訛りが心地よい。

 宮沢賢治記念館は小高い山の頂近く。辺りは賢治ワールドの趣き。
 最初に昼食を済ませ(山猫館)、記念館に入る頃には雨があがる。
 建物の外観、或いは内部は、どこか町役場にでも併設されているかのような趣き。小生にはこの方が好感が持てる。昭和五十七年の開館らしいから、これがその後のバブル期にでも造られていたら、さぞイーハトーブっぽく、銀河鉄道ぽくなっていたことだろう。(賢治童話館というのがそんなカンジ)
 展示の内容、もしくは賢治そのものについては割愛。とても、うまくは語れなどしない。ただし、小生は満足いたしました。

 その後、山をくだって、賢治設計の花壇を見つつ、もうひとつの建物へ。(名称がどうしても思い出せない)
 資料館やショップになっているそこで、「王敏『謝々 宮沢賢治』河出書房新社」を買う。
 その後童話館を見て、タクシーで新花巻駅へ。

  見晴るかすその日の夢と青嵐

 どうも岩手には見るところが充実しているようだ。
 いつの日かじっくりと集中的に再訪したい。

 宿は花巻温泉。
 ワールドバイキングが豪勢だった。
 夜ロビーでの鬼剣舞もなかなかよかった。

  山陰に鄙びた昔蝉時雨

 夜中に前方に寝ていたツバメに軽く蹴られる。
 トイレに行こうとして、暗闇で方向がわからなくなり、壁をひたすら叩きつづけるのを、冬眠鼠さんに助けられる。寝ていたツグミを踏んづけなかったのは奇跡である。