医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

信州大学医学部付属病院 (長野県松本市)

2019-10-18 20:10:57 | 傍聴記
午前10時から601号法廷で原告本人及び証人尋問が開かれました。
「確定診断怠り5日後妊婦死亡」地裁に提訴 国立医大相手取り夫ら 2017年1月7日千葉日報の記事の裁判です。
訴えられているのは信州大学です。浅間温泉に行く途中に病院の前を通った事がありました。


原告は、亡くなった妊婦さんの旦那さんです。証人として出廷した医師は産婦人科医です。
病院に通院していた妊婦の奥さんが自宅で亡くなったのは、病院が必要な問診や検査を怠ったことが原因であるとして裁判で主張されています。

午前中は原告の本人尋問です。自宅で妻が食事後、息苦しいと倒れました。通院していた信州大学に電話で連絡をしたのですが、病院からは特段、指示もなく様子を見る事になりました。その時の対応に妻は納得していませんでした。
その4日後、再び息苦しく体調が悪くなり病院に行くことになりました。入院するつもりでしたが、医師からは検査後、問題ないと言われ、鼻が悪い耳鼻咽喉科に行くように言われました。耳鼻咽喉科では特に問題が見つからず経過観察になりました。しかし、その5日後に自宅で妻は亡くなってしまいました。病院では丁寧な問診や検査をして欲しかった、後から知った検査値のBNPの6000(正常20-30)という値は異常です。

午後から医師尋問です。
医師から医療の経過がカルテを元にして説明がされました。
患者さんは息苦しくて来られました。
それで指先にパルスオキシメータを挟み酸素飽和度を計りました。経皮的酸素飽和度の数値は98パーセントでした。正常値でした。
妊婦において息苦しさで可能性が高い疾患は肺血栓塞栓症ですので、肺血栓塞栓症の原因となる下肢の静脈血栓を疑い超音波を大腿部や鼠径部に当てました。大きな血栓はないようでした。
まだ息苦しさの原因が分からないので血液検査と胸部レントゲンを撮影しました。
胸部レントゲンの所見では、異常や炎症が見られませんでした。
血液検査の結果は、白血球とCRP(炎症反応)が高くヘモグロビン(貧血)が低かった。CRPは1.8 白血球10.5 軽度の感染症が疑われました。
肺血栓塞栓症の疑いが低く、上気道感染が疑われたので耳鼻咽喉科を勧めました。
5日後に、奥さんが病院に救急搬送されてきた時には亡くなられていました。
死因が分からなかったので残っていた血液でNT-proBNPという心不全の検査をしました。
信州大学の2013年から2018年までのD-dimer検査の網羅的症例と肺塞栓症の患者さんをピックアップしたものを提出します。

反対尋問です。
息苦しさを訴えて来院してきた時に、歩くのも辛い普通の妊婦の息苦しさと違うと感じとカルテに書いてある。
血液検査において心不全の診断率が高いNT-proBNP 、D-dimer検査をして、陽性反応が出たならば胸部CT検査をすべきだった。
血液検査をした時のBMP6000というのは、すでに心臓に重度の負荷が起きていた。
それを扁桃腺の視診もしないで歩く事が難しい妊婦を耳鼻咽喉科に紹介して心疾患の疑いを無くしてしまった。
産婦人科で出来ない心エコーするために循環器科を紹介するべきでした。
信州大学病院は、診療科どうしの垣根が高く簡単に診てもらえる雰囲気ではないと云う話が出ている。そういった状況からして患者さんが不利益を受けてしまっている。

原告代理人
大杉洋平弁護士(豊田・大杉総合法律事務所) 新名由美子弁護士(大中法律事務所) 廣瀬理夫弁護士(渚法律事務所)

被告代理人
久保田明雄弁護士(久保田法律事務所)
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