モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

「取合せを愉しむ」展のお知らせ――中野みどり、仁平幸春、桶谷寧、他

2012年11月10日 | 展覧会・イベント

 
桶谷 寧作 「禾目天目茶碗」(「取合せを愉しむ」展出品作)


11月22日から24日までの3日間、都内のギャラリーで展覧会を開催します。

タイトル:取合せを愉しむ
会  場:アートスペースK和室(新宿区神楽坂)  
出品者と出品品目:
   [着尺、帯、ショール、他]  中野みどり、仁平幸春、帯のアトリエ「花邑」(銀座店)
   [絵画、花器、漆の香合、他] 井上まさじ、恵美加子、角好司、中川晃、ほか
   [茶道具、その他]     安倍安人、桶谷寧、野口洋子、うえやまともこ、他
※詳細および会場へのアクセスはこちらから。


 
角 好司 蒔絵香合「雨垂れ」(取合せを愉しむ」展出品作) 直経約3.5cm

「取合せ」とは「取合せの美」という意味ですが、
日本的な美意識を枠付けているものであると思います。
複数のものを組み合わせてひとつの空間を構成する在り方です。
その空間は現実から切り離されたものではなく、まさに現実の中にリアルに存在します。
つまり生活の中に(ただしハレとケの区別はありますが)展開されていく美の在り方であり、
その意味で、「用の美」と言われるような美の在り方です。
具体的には、日本の伝統的な住居空間(庭と家屋)、床の間飾り、会席の膳一式、
着物の装い、といったものが代表的なものですが、日本の生活文化全般に見られる特徴です。

「取合せの美」を提案するのは、「使う」ということは創造的な行為である
ということを思い起こしていただくためです。
日本の桃山時代とか江戸時代とかの文化の作られ方を見ると、
商人とか町人とか武家とかの一般的な市民が文化創造の主体でありました。
創作されたものの多くは受注制作されたもので、
作り手は身分制度の中では低い位置にある〈職人〉でした。

作り手は「自分の作品」という意味では一種類のものしか作れませんが、
使い手は「取合せ」という方法で複数の作り手の創作物を組み合わせ、
その組み合わせを変化させていくことで多様な空間演出を愉しむことができます。

「取合せの美」の根本にあるのは「四季のうつろい」を愉しむという感覚です。
床の間飾りも着物の装いも茶事や料理も季節感をどう演出するかが共通の基盤です。
松尾芭蕉に「四時(季)を友とす」という言葉がありますが、
これが「取合せ」文化を生み育てた日本人の感覚的なバックボーンです。
「四時(季)を友とす」という生き方を、日本人に限らず、
これからの国際人の指標としていただきたいものだと思います。

この展覧会は「取合せの美」のサンプルを展示するものではありません。
企画意図としては、「床の間奪回」という意識と同様に、
現代生活の中に「取合せ」の美意識を取り戻していこうという考えに立って、
伝統的な形式にとらわれず、自由に取合せるということをアピールし、
その素材となるものを展示しています(メインは中野みどりと仁平幸春の着尺と帯です)。

ぜひご来場いただき、「取合せの美」への思いを馳せていただきたく

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