モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

「アート鑑賞いろは塾」を開講します。

2012年04月19日 | アート鑑賞いろは塾
かたち21のHP


「かたちの会」実践知塾の新規企画第2弾は「アート鑑賞いろは塾」です。
講師は不肖私メが務めます。
第1弾の「ドレミから始めよう」が昨年の秋にテスト開講があり、
それに触発されて、12月の『アートでおもてなし』展サロンで試しにやってみたところ、
参加者のほとんどの方から、続きをやるなら是非参加したいと言われ、
意を強くして今期実践知塾の新企画としました。

「いろは」というからには初心者向けに「アート鑑賞」の基本をお話しするのですが、
「基本」はその分野の「核心」の表現でもあるわけですから、
聞きようによっては「通」の人でも面白く聞くことができます。
そして今まで誰も聞いたことがないような話題を満載していくつもりです。
専門知識は一切前提とせず、日常会話でふつうに交わされる程度のボキャブラリーで話します。
(固有名詞は別ですが、そのつど簡単な説明をつけます。)

基本にあるコンセプトのひとつは、17世紀、18世紀(日本では江戸時代)の
世界の美術の最先端に走っていたのは日本の美術工芸であり、
そういう状況を作り出したのは市民の「アート鑑賞力」だったということです。
つまり「文化を創るのは創作者ではなく、鑑賞者である」ということであり、
現代の私たちもそういった「アート鑑賞力」という実践知を身に付けていきましょう、
というのが趣旨ということになります。

画像映写や実作を目の前にしての解説のほか、お薦め展覧会を見てきてもらって、
感想を述べ合ったりすることも考えています。

詳細はこちらからご覧ください。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中野みどり作品集を出版します。

2012年04月07日 | 中野みどり紬織り

中野みどり作「桜染緯縞着物[蓮]」



かたち21ではただいま染織家の中野みどりさんの初の作品集を企画・編集しています。
中野さんのことは当ブログでは昨年の11月19日に紹介していますが、
2年前には「いいものの条件」(カテゴリー参照)という話題で、
中野さんの仕事を引き合いに出して書いています。

美術や工芸の作品集と聞くと、作品を写真撮影して
本の中に陳べていく構成をとるのがふつうです。
染織の作品集もたとえそれが着物メインであっても、美術館での展示よろしく、
仮仕立てしたものを絵羽にかけて撮影したものを並べていくのが大方です。
中野さんの作品集はその辺が従来の類書とは異なり、半分は着姿の写真で構成しています。
作品自体を見せる場合も、全体ではなく、部分をクローズアップした写真がほとんどです。

着姿というと、着る人は通常モデルさんであったりするわけですが、
その点でも違っているのは、着物の所有者自身に着てもらっていることです。
そしてその人たちは着物を着はじめてからのキャリアが浅い人たちが多く、
着付けももちろん自分で着付けてもらいました。
だからプロのモデルさんのように、人に着付けてもらったものとは趣きが違います。
しかし、着物を身に纏うことの心地よさとか愉しさとかが、
その表情からうかがわれたりなどして、一作家の創作世界を見せるということ以上の、
「着物」というものが持つ、「人間にとっての価値」ともいいうるものに
気づかされるような内容になっています。

染織という仕事によって作られる「着物」というものは、
「作品」としての美しさと同時に、「着る」ことの中で見出されてくる美しさとがあります。
着ることの中で美が見出されてくるためには、使用に耐える堅牢さが前提条件となります。
つまり使うものとしての堅牢さを備えていることはものが美しくあるための前提であり、
さらに私の思うところでは、それはアート的な創作物の美の条件ともなりうるものです。



(上)此手縞着尺 (中・下)崩し縞着尺


今日の工芸や美術には、こういった「堅牢さ」ということへの心くばりが
欠如気味であるように私は感じています。
すぐに壊れるものはやはり「美しい」とは言えないのです。
中野さんの作品集は、そのあたりのことを改めて考えさせられる内容になっています。

本のタイトルは『中野みどり作品集 樹の滴――染め、織り、着る』というものです。
掲載作品点数は20点ばかりのささやかな作りですが、
30数年を黙々と織り続けてきた中野さんの思いがエッセーふうの文章に込められています。
私も一文を寄稿しています。京都の染織と生活社が出版元です。
何度でも読み返し、見返すことに耐えうる中味ですので、ご購読をお薦めします。


詳細はこちらで。
中野さんのホームページでも紹介しています。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする