モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

お江戸コラリアーず体験――被災地から生み出されるエネルギー

2012年08月18日 | 音のかたち
今月12日は、原発稼働率について政府が出した3つのシナリオ案から一つを選ぶパブコメ(public comment)募集の最終日だったので、
午前中に「原発ゼロシナリオを選びます」と書いたメールを送り、午後には、
何十人もの団員を擁する合唱団「お江戸コラリアーず」の演奏を聴きに都内へ出かけました。
古楽のソプラノの名倉亜矢子さんの影響で、最近はアカペラにはまり込みつつあります。
が、男性だけの大合唱団というのは今ひとつだなというところもあって、
たいして期待を持たずに、人から誘われるままに足を運んでみたわけです。

お江戸コラリアーず(通称お江コラ)は、毎年開かれている全日本合唱コンクールで
去年まで3年連続で金賞を受賞しているという評価の高い合唱団なのですが、
その世評に違わず、私も聴いているうちに
「男性だけの合唱団(実際は女性も3人混じっていた)もいいものだ」と思えてきました。
アンコールの曲が終わる時には、受けた感動の度合いは尋常のものではありませんでした。
特に戦前の詩人の山村暮鳥の詩に曲をつけたものが私にはよく思え、
CDを是非手に入れたいと思ったほどです(まだ制作されていなさそうです)。

聞くところによると、6月に仙台に呼ばれてコンサートを開き
このときの現地の人との交流などを通して体験をしたことが背景にあるようです。
演奏の合間にその話をしてくださった合唱団のマネージャーらしき人は、
言うべき言葉が見つからなかったとか、自分たちにできることは何だろうかと考えたとか、
言われてました。たぶん同じ思いを団員の一人一人が持ったに違いなく、
それが大きなエネルギーの塊りとなって凝縮して、
私たち聴く側に伝わってきたのではないかと思います。
そしてそのエネルギーを多くの方が受け止めて、自分の仕事や生活の場に
持ち帰っていったにちがいないと感じられました。
もらったエネルギーを自分の仕事や生活の中で自分なりに育てていくためにです。

被災地体験は「心ある人々」に、「自分に何ができるか」という問いを突きつけてきました。
そのことを各人が必死に考え、試行錯誤していく中から新しいエネルギーが生まれてきて、
それに触れた人々に伝播し、受け止めた人々はさらに自分の中で新しい芽を吹き出させ、
エネルギーを増殖させていく。そういうことが今、起こりつつあるような気がしてきました。
被災地で生み出されたエネルギーがだんだんと増殖し伝播していって、
新しいアートや文化や経済が創り出されているような気がするのです。
それこそが本当の「未来を開いていくエネルギー」であって、
その質と量は原発エネルギーの浪費的なそれを無用化するにちがいありません。
私はそのことを、お江戸コラリアーずのコンサートを聴き終わって確信するに至りました。


お江戸コラリアーずの演奏はこちら
お江戸コラリアーずのHP
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「アート鑑賞いろは塾」第2回のお知らせ

2012年08月05日 | アート鑑賞いろは塾

今月18日(土)に「アート鑑賞いろは塾」第2回を下記のように開催します。

前回は、自分の好きな花のとなりにアート作品を置いて、
その作品が見劣りしないと感じるかどうかを、自分なりの作品評価の基準にすればいい、
という話から、アーチストたちの努力は、自然物の形にどこまで近づけるかというところにある、
言い換えると、目に見える世界からものの普遍的な形を抽き出していくことが、
美術造形の目的である、というような話を、彫刻家のブランクーシやジャコメッティ、
桃山期の俵屋宗達の作品を例に挙げて話しました。

今回は、「絵画にとっての〈空間〉」ということをテーマにします。
平ったく言えば、平面上に3次元(3D)表現をすることの意味について話します。
作例としてはカラヴァッジョ、ゴーギャン、ゴッホ、マチス、ピカソ、宗達、池大雅、広重、
中国王朝時代の山水画、八大山人、石濤とかを挙げていく予定です。
そして、カラヴァッジョと宗達はほぼ同時代の画家だが、
「人類の美術史」の視点で、どちらがより先端的か、といったことを
「美術鑑賞のいろは」のレベルで話そうと思ってます。

それから児童画やアウトサイダーアートも、「絵画にとっての空間」の観点から、
その面白さを解説したり、岡本太郎の絵の平凡さということを話してみようとも思ってます。

開催の詳細および聴講の申し込みは実践知塾サイトでどうぞ。

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