モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

『かたち』No.15発行のお知らせ

2014年02月03日 | 「かたちの会」関連



最新号の『かたち』No.15発行しました。12頁建てです。
特集記事は、「新〈ものの美〉シリーズ[Ⅰ]」として漆芸作家の角好司を取り上げました。
角さんは石川県輪島市に在住する人で、技術としては輪島塗のそれを継承していることは言うまでもありません。


 蒔絵二段重箱

 
 同上 蓋の裏側(白檀塗という技法が使われている)

角さんには新奇さを表に出していく方向のものと、伝統的な仕事をかっちりとやりきっていく方向のものとの二面性がありますが、
この特集では「蒔絵師 角好司のわざとエスプリ」として、角さんの創作世界の一番核心のところを紹介することに努めました。
「蒔絵師」と書くと伝統工芸的な職人仕事にスポットを当てているような印象を持たれるかもしれません。
しかし角さんに限っては必ずしもそうではなく、「蒔絵」の仕事の中にも彼一流のリアリズムあるいはエスプリを漂わせる表現が見られます。
単純に「二面性がある」というよりは、「二面性を融合させている」と言ったほうが実情に近いでしょうか。



蒔絵三段重「ふるさと」(日本海に臨んだ輪島の海岸の日常的な風景が描かれている)


同上(砂浜をランニングする野球チーム)


「蒔絵」という漆芸技法に対して、大多数の人は「敷居の高さ」のようなものを感じているのと思います。
実際、現実に創作されている「蒔絵」のほとんどは「敷居が高い」というイメージがあって、
親しみを感じさせるような表現に出会うことがありません。
そこに蒔絵表現の弱点を感じてしまうのですが、角さんの仕事に関してはそうとも言えないところがあります。
21世紀というこの時代に生きている人間のリアルな身体感覚とか生活感覚が、角さんの蒔絵表現には込められています。
それを可能にしているのはやはり角さんの高度なテクニックにほかなりません。

角さんは自己宣伝ということを全然せず、蒔絵という、膨大なエネルギーと時間を費やす仕事を黙々と継続し、いわば「手仕事の可能性」といったことを孤軍奮闘して護っているような趣きがあります。
そういった角さんの仕事を正当に評価する鑑賞力を、第三者は養うべきであると私は思います。

3月15日(土)~18日(火)アートスペースK和室で角好司さんの展示会をします。詳細は後日。
 
ちょっとラフでお洒落な作りの「小皿」5枚組





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