モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

2009年の締めくくりに――谷岡芳枝の創作人形

2009年12月29日 | モノ・こと・ことば


かたち21のHP







写真の作品は谷岡芳枝という人が創った人形です。
「閑日」という題名がついています。
来月に発行予定の「かたち」No.05に掲載する写真の中の1枚で、
編集作業や校正なんかでこの1ヶ月ほど何度も見ているのですが、
何度見ても見とれてしまうんです。しみじみと心に沁みてくるものがあります。

谷岡芳枝が活動したのは1960年代~70年代、
東京都内に住んで1992年に82歳で天寿を全うされています。
日本工芸会(日本伝統工芸展の主催団体)の正会員でしたが、
広く世に知られるということはなかったようです。
しかし表現力は豊かで、優れた工人でありました。

つくろいをしている女性の姿が細やかに表現されています。
フォルムの全体を捉える力とディテール表現の豊かさとの一体感が見事です。
しかしそれ以上に、「つくろい」という作業にいそしむ女性の
内面のかたちに心打たれるものがあります。

最近私の知り合いのアーチストが、
「工」という字は天と地を結ぶということを表していると言いましたが、
「閑日」の人形のかたちも、天と地を結ぶかたちを表わしているように私には見えます。

最後に、別な角度から撮ったものをもう1枚。
これで2009年の最後を締めくくるとしましょう。





みなさん、よい年を迎えられますよう!



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「空間とものとの関係」の話から、うえやまともこさんの木の仕事へ

2009年12月20日 | モノ・こと・ことば

かたち21のHP



「やすらぎの贈りもの’10」展「さろん」には萩原修さん(『9坪の家』の著者)が参加されていました。
発言の中に「空間とものとの関係をどう考えるか」という質問(難しい質問です)があり、
可喜庵オーナーの鈴木工務店社長がこれに答えられていましたが、
そのときに私が思いうかべていたのは、うえやまともこさんという木工家の住まいのことでした。

この秋、和歌山市のうえやまさんの工房を訪ねたときに、
「ここが私の住まいです」と言って部屋の中に案内していただきました。
ご両親が住んでいる母屋が別にあるのですが、
うえやまさんは仕事場の隣に自分の部屋を作って、そこで暮らしているということでした。

8畳ほどの小さな住まいですが、寝床があり炊事場があり、
真ん中には食事をしたりお茶を飲んだりする小さな座卓(昔であればちゃぶ台でしすね)があって、
そして入口の真向かいの壁の(つまり一番奥の)座ってちょうど目の高さあたりに、
円空仏の小さな写真が貼ってあって、ここが神棚とか仏壇とかにあたる、
この部屋のいわば聖域みたいな場所かと推測しました。
一隅に薪のストーブがあって、木工の仕事で出てくる木屑が燃料に使われていました。
私たちが訪ねた昼過ぎには火は消えていましたが、
部屋の空気は柔らかく暖たまっていてとても心地よかった。

「ここが私の住まいです」といううえやまさんの言葉を思い出すたびに、
「私はこんなふうに暮らしてます」と言ってるように私には聞こえてきます。
部屋の中にあったさまざまなものが、そこにあるべくしてあるというか、
統一した「暮らしの空間」のイメージを作り出していて、
その中で菊茶を飲みながら過ごしたひと時は、とても居心地のいいものでした。

この印象を作り出しているのは、インテリアがどうのこうのということでは全然ないのです。
うえやまさんは畑も持っていて、自然農の方法で野菜を育てていると言い、
また、味噌を作ったり梅干を作ったりもしているとのことでした。
他にもいろいろとあるのですが、そういうことが全部つながっての「暮らし」ということであり、
それが「暮らしの空間」としてのうえやまさんの「住まい」の印象も形作っているのです。
そして彼女が作る木のスプーンやフォーク、皿や鉢もまた、
彼女の「暮らしぶり」あるいは「生き方」そのものを表しています。
うえやまさんは自分の木工の仕事をそういうふうに捉えているわけです。

明年正月明けに発行予定の「かたち」No.05号ではうえやまさんに寄稿してもらっていますが、
そのタイトルは「必要なものはすべて用意されている」というのです。
是非読んで欲しい文章です。


うえやまさんの工房にて



【冊子「かたち」のご案内】
1部1,000円(送料込) 
ご購読のお申込みは「かたちの会会誌バックナンバー」サイトの末尾からアクセスできます。

※うえやまともこさんの作品はこちらでご覧になれます。


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「やすらぎの贈りもの'10」展が終了

2009年12月09日 | 展覧会・イベント

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「やすらぎの贈りもの’10」展が終了しました。
多数ご来場いただきありがとうございました。
可喜庵での展覧会は6回目になりますが、リピーターの方も少しずつ増えてきているのはうれしい限りです。
今回の贈りもの人気アイテムは、ワイングラス(中川晃作)、漆塗手鏡(堀内亜理子作)、
木のスプーン(うえやまともこ作)などでした。





「さろん」の集いは月曜日の午後に開きました。
平日である上にインフルエンザが猛威を振るっていて、
出席者は10数人ほどでした(半分は初めての方でした)が、
「やすらぎ」または「ここちよく、暮らす」というテーマで、
お一人お一人に語っていただきました。





住むこと、衣服・布のこと、お茶を喫むこと、香り、美術の鑑賞とコレクションなど
話題は多岐にわたり、密度の濃い内容となりました。
特に女性の方々の、自分の心に向き合った発言が印象に残っています。
茶菓子に添えた木のスプーン、フォークは好きなものを選んでいただき、
お持ち帰りいただきました。木工家のうえやまともこさんの作で、
自分の心に向き合ったものづくりを見せている人ですから、
今回の「さろん」の趣旨にもぴったりと合っていました。





この「さろん」から何が生まれてくるかは、これからの楽しみといたします。
次回にはみなさんも是非ご参加くださいますように。

「さろん」の内容については「かたちの会」会誌次号(2010年1月発行予定)で報告しますので、読んでください。



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「やすらぎの贈りもの'10」展は5日から

2009年12月04日 | 展覧会・イベント
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「やすらぎの贈りもの’10」展が明日から始まります。
今日は飾り付けをしました。
かなりクォリティの高い内容になりましたよ。
会場で是非手にとって見て欲しいなあ~、
単純に、そう思います。
以下、会場のスナップ写真です


 
障子に映る影が時々刻々と変化していきます。        手前はうえやまともこさんの
木のスプーンやフォーク




 
左は斉藤衛さんの木の書見台とか、中野みどりさんの紬のショールとか。右は革バッグ界の新星、高瀬季里子さんの作品。




 
大蔵達雄さんの根来塗椀       同じ漆塗でも堀内亜理子さんのは携帯ミラー。2枚の鏡の一方は拡大鏡デス。




 
米山みどりさんの裂織バッグ



他、出品者は金子司(やきもの)、小林有矢(金工)、中川晃(ガラス)、松原成樹です。
7日は「さろん」を開いて、お茶とケーキのティータイムトークを行ないます。どなたでも参加できます。



「やすらぎの贈りもの'10」の詳細はこちら



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