モノ・語り

現代のクラフトの作り手と作品を主役とするライフストーリーを綴ります。

萩の植草達郎さんの陶芸――「アートでおもてなし」展から①

2011年10月29日 | 展覧会・イベント


可喜庵(町田市)での恒例の展覧会を12月に開催します。
タイトルは「アートでおもてなし」、サブタイトルは「取り合わせは日本文化のエッセンス」として、
「床の間奪回」と「着物と帯」「器の彩り」の3本立てで構成します。
出品者のほとんどは、このブログで紹介してきた人たちですが、
一般的にはまだあまり知られていない作家が多いんです。

DM制作のために出品作家から撮影用の作品を送ってもらいました。
みなさんよい仕事を見せてくれています。
これからは「いい仕事」を厳選して、観に来られる方と一緒に愉しめるような
展覧会を企画していきたいと、改めてそういう気持ちにさせられるような仕事です。
これから開催直前までの間、ひとりずつまた紹介していきましょう。

今日は、植草達郎という陶芸家です。陶房のある山口県萩市周辺ではいざしらず、
全国的には――まだ発表の機会をほとんど持っていないので――あまり知られていない人です。
数年前に森野清和さん(当ブログでは飯茶碗や湯のみを紹介しています)を取材したときに
植草さんの陶房も取材させてもらって面識を得ました。
森野さんも植草さんも萩焼の代表的な陶芸家である
三輪休雪(龍作)さんのアシスタントをしていた人ですが、
やきものに取り組む姿勢に真摯さを感じさせるところが共通しています。

植草さんの特徴は、野球で言えば「走・攻・守」にあたる
「土・焼き・細工」の三拍子が揃ってレベルの高い創作を維持している点だと思います。
まず細工で言えば、そもそもが細工が得意というところから陶芸の世界に入っていった人で、
取材のときに見せてもらった鯉の細工が実に見事でした。
いわゆる伝統的な細工物に見るような緻密さと、
なにか妙にリアルに感じさせる写実性とが融合していて、
非常に見応えのある「伝統彫刻」であったという記憶があります。
細工物は、今、アートの世界でも流行しているように見受けられますが、
陶芸の世界でも細工物の世界が再認識されていくことを私は希望しています。



三島手香炉 高さ約15cm



焼きは登り窯による薪を燃料にした焼成です。
といっても薪窯焼成ということに依りかかることなく、やきものらしい土の色とマチエールを求めて、
焼成法を研究・探求している様子が伺えます。
ただ「いい味だね」というのではなく、しっかりと土を焼きこんで、
格調の高い陶芸の世界を創り出しつつあります。

土へのこだわりとか見識もいっぱしのものがあります。
薪窯焼成を生かすためにも、土の吟味は欠かせません。
その意味でも植草さんのやきものは、古い萩の土味を髣髴とさせるところがあり、
匂い立つような品格を漂わせたものもあるのです。

今回の展覧会では「床の間奪回」コーナーへの出品をお願いしたので、
香炉、花器、そしてできれば細工物も見ていただけるといいなと思っています。
それから「器の彩り」コーナーへは、ぐい呑みの5点セットを出してもらえることになりました。
このぐい呑み5点もなかなかの出来です。
是非ご覧いただきたいものだと思います。


ぐい呑みセット


展覧会のご案内は「かたち21」のサイトで。
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