月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

もっと優しくなれたら

2017-11-13 | 仕事
今日は北海道の酒蔵に取材に来ている。
新千歳空港に着いて、電車で札幌へ移動。その後、レンタカーで2時間半。
海沿いの道を走った。これが初夏の晴天の日だったら、どんなに気持ちいいかと思う。
着いたのは、かなりの田舎だった。
でもこの蔵は年間14万人の見学者が訪れるというからすごい。

泊まったホテルからも海が見える。
最高のロケーションなのに、天気が悪くて残念だ。


ホテルで少し休んだ後、蔵の社長が飲みに誘ってくださって、皆でおよばれした。
社長、常務、杜氏、ちょうど来ていた監査役。そして、私と営業のE本さんとカメラマンさん。
美味しいお料理と自社のお酒でもてなしてくださった。
とても優しくて謙虚な社長で、杜氏さんも穏やかな方で、終始和やかなムードの懇親会だった。

このカメラマンさんはいつもあまり話に加わらない。性格はいろいろあるけれど、もう少し話に加わる努力をしてくれたらいいのになぁと私はやや批判的に見ていた。
でも、会がお開きになって、ホテルに戻って私たちだけになったとき、E本さんがカメラマンさんに「業界のわからない話ばっかりでつまんないですよね。すみません」と言うのを聞いて、あーーー、私って本当に器が小さいなぁと思った。
それに比べてE本さんはいつも優しい。この人は不器用な面もあるけど、心根が優しい人なんだよなといつも思う。

その後、カメラマンさんと二人になったとき、「今までで一番というくらい楽しかった」と言うのを聞いて、ますます自分が嫌になった。
私はカメラマンさんが楽しくなくて、だから話に入ってこないのだと思っていたのだ。
でも、そうじゃなかった。
人の感情の表し方というのは、本当に人それぞれ。
私の悪い癖で、つい自分を基準にしてしまう。いろんな人がいて当然なのに。

ありがたいことに、周りの人に恵まれているから、こうやって自分の悪いところに気づくことができる。
私ももっと優しくなりたいなと思う。

ホテルには温泉もついていたので、入ってきた。私しかいなくて、完全貸し切り状態。リラックスした。
風呂上がりのサッポロクラシックを飲みながらこれを書いている。

明日は8時に蒸しが上がる。お酒造りは酒米を蒸す工程があるのだが、そこから見せてもらえる。
社長も杜氏さんも好意的だったので、明日の取材もやりやすそうだ。
いい取材をして、いい原稿を書きたいなと思う。
毎日そればっかりだけど、何度でも毎日でも思う。とにかくいい原稿を書きたい。

せっかく北海道まで来たのだから、しっかり取材して帰ろう。


営業ツール

2017-11-11 | 想い
先日の私のブログ(お墨付き)を読んだ夫が「かおりはこういう文章を匿名じゃなく実名で書く時期にきていると思うよ」とメッセージを送ってきた。
それは、「このブログで」という意味ではなく、きちんと自分の仕事の実績や、今後の仕事につながるようなことは実名で書いてアピールしていくべきだ、ということ。

もう半年以上前からそのことは考えていて、いつの間にかフェードアウトしてしまった酒関連のもう一つのブログを、今度はきちんと実名で、ちゃんと仕事に結びつくような「営業ツール」として書いていきたいと思っているのだが、今はなかなか時間がなくて、そこまでたどり着いていないという状態。
それで、最近はとりあえずの手段として、酒蔵取材やお酒関連のことはフェイスブックで発信するように心がけている。
(正直、今年に入ってからフェイスブックもほぼ開いていなかった・・・。もう飽きた・・・。この1ヶ月くらいはたまに更新するよう頑張ってみたものの、すでにそれもあやしくなってきている・・・)

やっぱり私は「発信すること」に向いていないのだな、と思う。
SNSというのは、何らかを発信したい人と、何らかの情報を得たい人にとってはとてもメリットがある。
私は「ただ書きたい人」だから、書き終わって「はい、満足!」なので、わざわざ「発信しよう」と思うと筆が進まないのだ。
それで、お酒関連ブログもリニューアルできないまま放置されている・・・。

でも、つい昨日も親友がインスタで知り合った人を通じて仕事の販路を見出したということを聞き、SNSの力というのはとても偉大だと感じた。彼女がインスタをやっていなかったら、販路は見出せなかったかもしれないので。
やっぱりSNSは需要と供給のマッチングには優れている。

例えばの話、もしどこかの酒蔵が自分の蔵のことを本にしたいと思って、「日本酒 ライター」などで検索したとしても、そこでひっかからなければ、せっかくのチャンスも棒に振ってしまうことになる。
そう考えると、これから先、自分が仕事で本当に書きたいものを絞っていくのなら、やはり自分の専門分野を持って、それをアピールしていくことは欠かせない。
その営業ツールとしてお酒ブログを早くリニューアルしなくては!と思っているのだが・・・。
夫はブログだけでなく、ちゃんと自分の仕事用のホームページを持って、これまでの実績などもアピールしていくべきだという。「俺が作ってやるから。いいデザイナーに頼むし、お金も出してあげる」とまで言ってくれる。そりゃ、いいのができそうだなぁとも思う。
アピールできることが少しずつ増えてきたので、私もそろそろそういうことを真剣に考えないといけない時期なんだろうな。

そういえば、もう消滅してしまったけれど、Windows95が発売されて2年後くらいから私が作り始めた「食材と器で料理は決まる!」というホームページはすごかった。
自分の人生の集大成にしようと、ホームページビルダーでコツコツ書いていった、膨大な情報量の詰まったマニアックなホームページだった。
料理のレシピ、器コレクション、紅茶の話、ブルース、好きな寺紹介、本のレビュー、旅の話、エッセイ、仕事の話、小説まで、自分の好きなことや趣味をぎゅぎゅーっと詰め込んだホームページだった。そこに365日書き続けた日記まで加わったのだから、ものすごい情報量だった。
あの頃はブログもなかったし、情報が氾濫していなかったから、他の人のホームページも面白かった。マニアックで。
今は何かのコピペと「まとめ」ばかりでつまらない。
ネット上で交流していた人の中には「砥石」専門の人もいた。包丁をどうやったらうまく砥げるのかということを延々書かれていて。
その人の経営している飲食店へ一度行って、砥石をもらったこともあった。(たぶん今もあると思う)
あの頃も「発信する」という気持ちはなくて、ただただ自分の好きなものについて書きたくて仕方がなかった。あれは若いからできたんだろうか・・・。今の何倍も仕事をしている中で、夜中にコツコツひたすら書いていたことを思い出す。あのパワーってのはすごいな。
今もあのパワーがあれば、お酒ブログなんてすぐできそうなのに・・・。(ああ、情けない・・・)

一方、このブログ「月と歩いた。」を実名で仕事のツールとして使用する気持ちは一切ない。
いわば、ここは私が親友(=書くこと)とおしゃべりする場所のようなもの。
仕事関連の人には言えないような悩みや愚痴もある。嬉しいこともある。
書けば満足する。書けばまた明日も頑張れる。書けば、幸せになる。だから、ここはかけがえのない大事な場所だ。

でも、もし仕事関連の人が「読むかもしれない」と思った瞬間から、私はうまくおしゃべりできなくなってしまうだろう。
だから、仕事関連の人にはほぼ、このブログの存在は教えないし、検索した時に絶対に引っかからないようにも気をつけて書いている。
書いている雑誌の名前すら決して出さないのも、検索で引っかかるのが怖いからだ。実際、雑誌名だともう1人のライターさんのブログ記事が上位にいくつも上がってくる。
私はそれが怖いので、時々、エゴサーチ的に雑誌名で検索して、このブログにたどり着かないことを確認しているくらいだ。

でも、このブログでなければ、もう1人のライターさんのように、あの雑誌で書いているということはとても大きな武器になるはず。
何よりの営業ツールだ。アピールポイントだ。
お酒ブログリニューアルは、来年の目標だな・・・。

お墨付き

2017-11-09 | 仕事
昨日の朝早く、スマホがピョコンと鳴った。
見ると、3年ほど前に取材した酒蔵のU社長からメッセージ。なんだろう、お酒の会のお知らせかしら・・・と思いながら文面を読んでみると、今朝のN社長のコラムで私の書いている雑誌が取り上げられ、さらに私のことが褒められている、とのこと。
「あの辛口で有名なN社長にあそこまで言わせるなんて、本当にすごい!次にお会いしたら最敬礼して先生と呼ばせていただきます(笑)」と書かれていた。

N社長のコラム・・・?
何のことかわからず調べてみると、業界では結構な力を持っている会社の社長が出している、会員限定の有料コラムだということがわかった。
月に2回、日本酒業界についてのあれこれを書いたコラムが会員へ送られてくる。そのコラムで私のことが紹介されているというのだ。
私は会員ではないし、このまま読めないと、いい意味でモヤモヤが続くので、U社長に「読みたいので送ってくれませんか?」とお願いすると、すぐにスキャンしてPDFで送ってくれた。

どの記事のことを褒められているのかと、もうドキドキしながら読んでみると・・・
なんと、取り上げられていたのは、私の書いた「編集後記」だった。

A4サイズいっぱいのコラムの中で、前半は雑誌全体の紹介(これも非常に丁寧でありがたかった)、その後、およそ半分ほどをさいて、私の編集後記が引用されている。
本名までしっかり出され、私の文章に対して下のような批評が加えられていた。

「つまり、造り手、売り手、飲み手の三者に共通した“和”がなければ、「良酒」にはならないという意見だが、そこに書き手も加えたいというライターとしての信条を見せ付けられているようでもある。」

「・・・と、ライターとしての熱い想いを吐露している。彼女にとって、ライターは天職なのだろう。」



うぉぉぉぉーーー!!


こういう時、どんなリアクションが出るのか自分でも初めて知ったが、地の底から這い上がってくるような声で雄叫びを上げてしまった。
もちろん、嬉しくて。いや、嬉しいというより、興奮?イマドキの言葉で言えば「ヤバイ」。
マジ、ヤバイって~!!

ちなみに編集後記は、クライアントからライター、デザイナー、カメラマンまで、本誌に関わる全員が順番に書いていく。関わるメンバーが多いので、今回の15号で私にまわってきたのはようやく2回目だった。
しかも、私の担当は次号のはずだったのだが、もう1人のライターさんが他の原稿でいっぱいいっぱいだったので、「負担を減らしてあげたいから代わりに書いてほしい」とクライアントに言われて前倒しで書いたものだった。

いつも、ちゃんと意味はある。
目の前のことに手を抜かず、真面目にコツコツ丁寧にやっていれば、気づくと全部意味があって、必ず良い場所へとつながっていくのだ。一見「損をした」と感じるようなことでも、後になってみれば「得」になっていることばかり。
だから夫に「そこまでやらんでいい」とたしなめれらたり、自分でも「お人好しかっ!」とツッコミを入れてしまうほど、人のためにせっせと動いたりしてしまうのだけど(そして残念なことにあまり気づかれず、感謝もされないキャラクター)、後になってみれば「ああ、頑張ってよかったなー」と思うことが多い。
他の誰も見てくれていなくても、神様はちゃんと見てくれている、と思う。

今回も、業界向けのコラムで業界で力を持った社長から名指しで「ライターは天職」とまで言われたということは、これを読んだ業界の人達への印象もすごくよくなったはず。もしかしたら「すごいライターさんなんだな」と洗脳された人もいるかもしれない。
いわゆる「お墨付き」というやつだ。

まあ、そんな大げさな話にならなかったとしても、とりあえず辛口社長に褒められたことが嬉しかったし、このことをわざわざ知らせてくれたU社長の温かい心遣いもとても嬉しかった。(←これ、すごく大事!)
そして、取材記事ではなく、編集後記を取り上げてもらえたことも。

以前、スピリチュアルな力を持った人に言われた言葉がある。
「想いを伝えるのは、文章ではなく、あなた自身です」と。
わかるようでわからない、この禅問答のような言葉を、私はよく思い出すことがあった。
今も答えが出たわけではないけれど、今回、自由に私自身の言葉で、私自身の想いを書ける編集後記というものを取り上げてもらい、そこから会ったこともない人が、私の日本酒に対する想いや「ライターとしての信条」を感じ取ってくれたことで、はっきりと「伝わった」と思えた。
文章ではなく、私自身が伝えた。

今回のこのことは、とても小さな出来事だけど、後々振り返ってみれば大きな出来事になるのではないかと、なぜかそんな予感がしている。
まだまだ先になってみなければ、この出来事の本当の意味はわからないのだけど。

幻の味を求めて・・・

2017-11-01 | 
酒造りシーズンに突入し、10月下旬から出張取材が続いている。
これを書いている今は、岐阜の高山へ向かう「特急ひだ」の中。
今日は前乗りなので、15時頃にホテルにチェックインし、1人でぶらぶらと蔵のある町並みでも散策しようと思っている。
去年の秋も夫と高山周辺でキャンプをして、昼間は町に出てぶらぶらしたのだった。
酒蔵も多く、しっかり成功している観光地なので、3時間くらいは楽しめる。
取材は明日の朝からなので、今日はすっかり旅行気分だ。

1人で行動するのがいや、1人で飲食店に入って食事をするのがいや、という人は、男女問わず結構多いが、私は若い頃から一人であちらこちらと出張してきたせいか、そういうことが全く障害にならない。
むしろ、「1人っていいな」と思うこともある。かといって、いつも1人がいいわけではなく、やはり人と一緒にいることも好きなのだが。
でも、大勢の人の中で孤独を感じるのなら、最初から一人で雑踏に紛れているほうが落ち着く。
人やものがしっかりと見えて、自分の心の中までも透き通ってくる。「無」に近い感覚。

今日は雲ひとつない天気で、車窓からの景色もきらきらしている。
ただ、特急ひだは、めちゃくちゃに揺れるのだ。
このまま書き続けていたら、電車酔いするのだろうな・・・

10月は茨城と新潟へ、3泊4日の出張で、3日目は「移動日(フリー)」だった。
ちょうど栃木を通るので、取材スタッフと別行動して、もんちゃんの家へ寄った。
ダンナさんと車で迎えに来てくれて、家でお好み焼きをご馳走になった。



もう10年近く前になると思うが、その時もお好み焼きをご馳走になって、あまりの美味しさにびっくりした。
その時は夫もいたのだが、お好み焼きにうるさい私と夫が大絶賛。
何度も何度も「もんちゃんのお好み焼き」の話をして、「美味しかったなぁ」「もう一度食べたいなぁ」「今まで食べた中で一番おいしかったなぁ」と言い合った。

その、幻の味が、時を経て、再現されたのだ!!
私が行く前からずっとそのようなことを話すので、もんちゃんは異常なプレッシャーを感じていたようだが、私が満面の笑みで「これ、これ!この味だよ!」と喜ぶのを見て安堵していた。
※ちなみに私は写真の大きさのお好み焼きを3枚食べた。

その後は、近くのカフェへ連れて行ってくれて、アフタヌーンティ。


たらふくお好み焼きを食べた後だったが、スコーンとケーキを3人で分けて食べた。
※写真は3人前です。

洋館のようなおしゃれな一軒家のカフェで、ここだけゆっくりと時間が流れていた。


5時間くらいの訪問だったが、久しぶりにいろいろしゃべれて楽しかった。
もんちゃんの家に行くと、いつも「心豊かに暮らしているな」と思う。おうちは古いし、決して華美な部屋ではないのだが、猫が2匹いて、自分たちの仕事場(バイオリン工房)があって、なんだか外国の物語の職人の家に来たような気持ちになる。
とても良い時間だった。

なんだか出張に便乗して遊んでばかりいるようだが、仕事もちゃんとしている。
取材は結構ハードだ。
でも、今年はちょっと余裕があるというか、楽しめている自分にも気づいているのだ。

明日はトータル53蔵目の取材。
50蔵見てもまだまだわからないことばかりだけど、それでもだいぶんバカみたいな質問はしなくなったし、何よりも相手が信頼して私に話してくれているのが伝わる。
明日の取材もいい出会いがたくさんあるといいな。

そして、再来週は北海道、翌週は和歌山と続く。
東北か九州のどちらかも続けていくことになる。
年末までしっかり走り抜けよう。