カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ココロ 「センセイ と イショ 7」

2015-03-21 | ナツメ ソウセキ
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 ワタクシ は とつぜん K の アタマ を かかえる よう に リョウテ で すこし もちあげました。 ワタクシ は K の シニガオ が ヒトメ みたかった の です。 しかし ウツブシ に なって いる カレ の カオ を、 こうして シタ から のぞきこんだ とき、 ワタクシ は すぐ その テ を はなして しまいました。 ぞっと した ばかり では ない の です。 カレ の アタマ が ヒジョウ に おもたく かんぜられた の です。 ワタクシ は ウエ から イマ さわった つめたい ミミ と、 ヘイゼイ に かわらない ゴブガリ の こい カミノケ を しばらく ながめて いました。 ワタクシ は すこしも なく キ には なれません でした。 ワタクシ は ただ おそろしかった の です。 そうして その オソロシサ は、 メノマエ の コウケイ が カンノウ を シゲキ して おこる タンチョウ な オソロシサ ばかり では ありません。 ワタクシ は こつぜん と つめたく なった この トモダチ に よって アンジ された ウンメイ の オソロシサ を ふかく かんじた の です。
 ワタクシ は なんの フンベツ も なく また ワタクシ の ヘヤ に かえりました。 そうして 8 ジョウ の ナカ を ぐるぐる まわりはじめました。 ワタクシ の アタマ は ムイミ でも とうぶん そうして うごいて いろ と ワタクシ に メイレイ する の です。 ワタクシ は どうか しなければ ならない と おもいました。 ドウジ に もう どう する こと も できない の だ と おもいました。 ザシキ の ナカ を ぐるぐる まわらなければ いられなく なった の です。 オリ の ナカ へ いれられた クマ の よう な タイド で。
 ワタクシ は ときどき オク へ いって オクサン を おこそう と いう キ に なります。 けれども オンナ に この おそろしい アリサマ を みせて は わるい と いう ココロモチ が すぐ ワタクシ を さえぎります。 オクサン は とにかく、 オジョウサン を おどろかす こと は、 とても できない と いう つよい イシ が ワタクシ を おさえつけます。 ワタクシ は また ぐるぐる まわりはじめる の です。
 ワタクシ は その アイダ に ジブン の ヘヤ の ランプ を つけました。 それから トケイ を おりおり みました。 その とき の トケイ ほど ラチ の あかない おそい もの は ありません でした。 ワタクシ の おきた ジカン は、 セイカク に わからない の です けれども、 もう ヨアケ に マ も なかった こと だけ は あきらか です。 ぐるぐる まわりながら、 その ヨアケ を まちこがれた ワタクシ は、 エイキュウ に くらい ヨル が つづく の では なかろう か と いう オモイ に なやまされました。
 ワレワレ は 7 ジ マエ に おきる シュウカン でした。 ガッコウ は 8 ジ に はじまる こと が おおい ので、 それ で ない と ジュギョウ に まにあわない の です。 ゲジョ は その カンケイ で 6 ジ-ゴロ に おきる わけ に なって いました。 しかし その ヒ ワタクシ が ゲジョ を おこし に いった の は まだ 6 ジ マエ でした。 すると オクサン が キョウ は ニチヨウ だ と いって チュウイ して くれました。 オクサン は ワタクシ の アシオト で メ を さました の です。 ワタクシ は オクサン に メ が さめて いる なら、 ちょっと ワタクシ の ヘヤ まで きて くれ と たのみました。 オクサン は ネマキ の ウエ へ フダンギ の ハオリ を ひっかけて、 ワタクシ の アト に ついて きました。 ワタクシ は ヘヤ へ はいる や いなや、 イマ まで あいて いた シキリ の フスマ を すぐ たてきりました。 そうして オクサン に とんだ こと が できた と コゴエ で つげました。 オクサン は ナン だ と ききました。 ワタクシ は アゴ で トナリ の ヘヤ を さす よう に して、 「おどろいちゃ いけません」 と いいました。 オクサン は あおい カオ を しました。 「オクサン、 K は ジサツ しました」 と ワタクシ が また いいました。 オクサン は そこ に いすくまった よう に、 ワタクシ の カオ を みて だまって いました。 その とき ワタクシ は とつぜん オクサン の マエ へ テ を ついて アタマ を さげました。 「すみません。 ワタクシ が わるかった の です。 アナタ にも オジョウサン にも すまない こと に なりました」 と あやまりました。 ワタクシ は オクサン と むかいあう まで、 そんな コトバ を クチ に する キ は まるで なかった の です。 しかし オクサン の カオ を みた とき フイ に ワレ とも しらず そう いって しまった の です。 K に あやまる こと の できない ワタクシ は、 こうして オクサン と オジョウサン に わびなければ いられなく なった の だ と おもって ください。 つまり ワタクシ の シゼン が ヘイゼイ の ワタクシ を だしぬいて ふらふら と ザンゲ の クチ を ひらかした の です。 オクサン が そんな ふかい イミ に、 ワタクシ の コトバ を カイシャク しなかった の は ワタクシ に とって サイワイ でした。 あおい カオ を しながら、 「フリョ の デキゴト なら シカタ が ない じゃ ありません か」 と なぐさめる よう に いって くれました。 しかし その カオ には オドロキ と オソレ と が、 ほりつけられた よう に、 かたく キンニク を つかんで いました。

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 ワタクシ は オクサン に キノドク でした けれども、 また たって イマ しめた ばかり の カラカミ を あけました。 その とき K の ランプ に アブラ が つきた と みえて、 ヘヤ の ナカ は ほとんど マックラ でした。 ワタクシ は ひきかえして ジブン の ランプ を テ に もった まま、 イリグチ に たって オクサン を かえりみました。 オクサン は ワタクシ の ウシロ から かくれる よう に して、 4 ジョウ の ナカ を のぞきこみました。 しかし はいろう とは しません。 そこ は ソノママ に して おいて、 アマド を あけて くれ と ワタクシ に いいました。
 それから アト の オクサン の タイド は、 さすが に グンジン の ビボウジン だけ あって ヨウリョウ を えて いました。 ワタクシ は イシャ の ところ へも ゆきました。 また ケイサツ へも ゆきました。 しかし みんな オクサン に メイレイ されて いった の です。 オクサン は そうした テツヅキ の すむ まで、 ダレ も K の ヘヤ へは いれません でした。
 K は ちいさな ナイフ で ケイドウミャク を きって ヒトイキ に しんで しまった の です。 ホカ に キズ らしい もの は なんにも ありません でした。 ワタクシ が ユメ の よう な うすぐらい ヒ で みた カラカミ の チシオ は、 カレ の クビスジ から イチド に ほとばしった もの と しれました。 ワタクシ は ニッチュウ の ヒカリ で あきらか に その アト を ふたたび ながめました。 そうして ニンゲン の チ の イキオイ と いう もの の はげしい の に おどろきました。
 オクサン と ワタクシ は できる だけ の テギワ と クフウ を もちいて、 K の ヘヤ を ソウジ しました。 カレ の チシオ の ダイブブン は、 さいわい カレ の フトン に キュウシュウ されて しまった ので、 タタミ は それほど よごれない で すみました から、 アトシマツ は まだ ラク でした。 フタリ は カレ の シガイ を ワタクシ の ヘヤ に いれて、 フダン の とおり ねて いる テイ に ヨコ に しました。 ワタクシ は それから カレ の ジッカ へ デンポウ を うち に でた の です。
 ワタクシ が かえった とき は、 K の マクラモト に もう センコウ が たてられて いました。 ヘヤ へ はいる と すぐ ほとけくさい ケムリ で ハナ を うたれた ワタクシ は、 その ケムリ の ナカ に すわって いる オンナ フタリ を みとめました。 ワタクシ が オジョウサン の カオ を みた の は、 サクヤライ この とき が はじめて でした。 オジョウサン は ないて いました。 オクサン も メ を あかく して いました。 ジケン が おこって から それまで なく こと を わすれて いた ワタクシ は、 その とき ようやく かなしい キブン に さそわれる こと が できた の です。 ワタクシ の ムネ は その カナシサ の ため に、 どの くらい くつろいだ か しれません。 クツウ と キョウフ で ぐいと にぎりしめられた ワタクシ の ココロ に、 イッテキ の ウルオイ を あたえて くれた もの は、 その とき の カナシサ でした。
 ワタクシ は だまって フタリ の ソバ に すわって いました。 オクサン は ワタクシ にも センコウ を あげて やれ と いいます。 ワタクシ は センコウ を あげて また だまって すわって いました。 オジョウサン は ワタクシ には なんとも いいません。 たまに オクサン と ヒトクチ フタクチ コトバ を かわす こと が ありました が、 それ は トウザ の ヨウジ に ついて のみ でした。 オジョウサン には K の セイゼン に ついて かたる ほど の ヨユウ が まだ でて こなかった の です。 ワタクシ は それでも ユウベ の ものすごい アリサマ を みせず に すんで まだ よかった と ココロ の ウチ で おもいました。 わかい うつくしい ヒト に おそろしい もの を みせる と、 せっかく の ウツクシサ が、 その ため に ハカイ されて しまいそう で ワタクシ は こわかった の です。 ワタクシ の オソロシサ が ワタクシ の カミノケ の マッタン まで きた とき で すら、 ワタクシ は その カンガエ を ドガイ に おいて コウドウ する こと は できません でした。 ワタクシ には きれい な ハナ を ツミ も ない のに みだり に むちうつ と おなじ よう な フカイ が その ウチ に こもって いた の です。
 クニモト から K の チチ と アニ が でて きた とき、 ワタクシ は K の イコツ を どこ へ うめる か に ついて ジブン の イケン を のべました。 ワタクシ は カレ の セイゼン に ゾウシガヤ キンペン を よく イッショ に サンポ した こと が あります。 K には そこ が たいへん キ に いって いた の です。 それで ワタクシ は ジョウダン ハンブン に、 そんな に すき なら しんだら ここ へ うめて やろう と ヤクソク した オボエ が ある の です。 ワタクシ も イマ その ヤクソクドオリ K を ゾウシガヤ へ ほうむった ところ で、 どの くらい の クドク に なる もの か とは おもいました。 けれども ワタクシ は ワタクシ の いきて いる かぎり、 K の ハカ の マエ に ひざまずいて ツキヅキ ワタクシ の ザンゲ を あらた に したかった の です。 イマ まで かまいつけなかった K を、 ワタクシ が バンジ セワ を して きた と いう ギリ も あった の でしょう、 K の チチ も アニ も ワタクシ の いう こと を きいて くれました。

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 K の ソウシキ の カエリミチ に、 ワタクシ は その ユウジン の ヒトリ から、 K が どうして ジサツ した の だろう と いう シツモン を うけました。 ジケン が あって イライ ワタクシ は もう ナンド と なく この シツモン で くるしめられて いた の です。 オクサン も オジョウサン も、 クニ から でて きた K の フケイ も、 ツウチ を だした シリアイ も、 カレ とは なんの エンコ も ない シンブン キシャ まで も、 かならず ドウヨウ の シツモン を ワタクシ に かけない こと は なかった の です。 ワタクシ の リョウシン は その たび に ちくちく さされる よう に いたみました。 そうして ワタクシ は この シツモン の ウラ に、 はやく オマエ が ころした と ハクジョウ して しまえ と いう コエ を きいた の です。
 ワタクシ の コタエ は ダレ に たいして も おなじ でした。 ワタクシ は ただ カレ の ワタクシ-アテ で かきのこした テガミ を くりかえす だけ で、 ホカ に ヒトクチ も つけくわえる こと は しません でした。 ソウシキ の カエリ に おなじ トイ を かけて、 おなじ コタエ を えた K の ユウジン は、 フトコロ から 1 マイ の シンブン を だして ワタクシ に みせました。 ワタクシ は あるきながら その ユウジン に よって さししめされた カショ を よみました。 それ には K が フケイ から カンドウ された ケッカ エンセイテキ な カンガエ を おこして ジサツ した と かいて ある の です。 ワタクシ は なんにも いわず に、 その シンブン を たたんで ユウジン の テ に かえしました。 ユウジン は この ホカ にも K が キ が くるって ジサツ した と かいた シンブン が ある と いって おしえて くれました。 いしがしい ので、 ほとんど シンブン を よむ ヒマ が なかった ワタクシ は、 まるで そうした ホウメン の チシキ を かいて いました が、 ハラ の ナカ では しじゅう キ に かかって いた ところ でした。 ワタクシ は ナニ より も ウチ の モノ の メイワク に なる よう な キジ の でる の を おそれた の です。 ことに ナマエ だけ に せよ オジョウサン が ヒキアイ に でたら たまらない と おもって いた の です。 ワタクシ は その ユウジン に ホカ に なんとか かいた の は ない か と ききました。 ユウジン は ジブン の メ に ついた の は、 ただ その 2 シュ ぎり だ と こたえました。
 ワタクシ が イマ おる イエ へ ひっこした の は それから まもなく でした。 オクサン も オジョウサン も マエ の ところ に いる の を いやがります し、 ワタクシ も その ヨ の キオク を マイバン くりかえす の が クツウ だった ので、 ソウダン の うえ うつる こと に きめた の です。
 うつって 2 カゲツ ほど して から ワタクシ は ブジ に ダイガク を ソツギョウ しました。 ソツギョウ して ハントシ も たたない うち に、 ワタクシ は とうとう オジョウサン と ケッコン しました。 ソトガワ から みれば、 バンジ が ヨキドオリ に はこんだ の です から、 めでたい と いわなければ なりません。 オクサン も オジョウサン も いかにも コウフク-らしく みえました。 ワタクシ も コウフク だった の です。 けれども ワタクシ の コウフク には くろい カゲ が ついて いました。 ワタクシ は この コウフク が サイゴ に ワタクシ を かなしい ウンメイ に つれて ゆく ドウカセン では なかろう か と おもいました。
 ケッコン した とき オジョウサン が、 ――もう オジョウサン では ありません から、 サイ と いいます。 ――サイ が、 ナニ を おもいだした の か、 フタリ で K の ハカマイリ を しよう と いいだしました。 ワタクシ は イミ も なく ただ ぎょっと しました。 どうして そんな こと を キュウ に おもいたった の か と ききました。 サイ は フタリ そろって オマイリ を したら、 K が さぞ よろこぶ だろう と いう の です。 ワタクシ は ナニゴト も しらない サイ の カオ を しけじけ ながめて いました が、 サイ から なぜ そんな カオ を する の か と とわれて はじめて キ が つきました。
 ワタクシ は サイ の ノゾミドオリ フタリ つれだって ゾウシガヤ へ ゆきました。 ワタクシ は あたらしい K の ハカ へ ミズ を かけて あらって やりました。 サイ は その マエ へ センコウ と ハナ を たてました。 フタリ は アタマ を さげて、 ガッショウ しました。 サイ は さだめて ワタクシ と イッショ に なった テンマツ を のべて K に よろこんで もらう つもり でしたろう。 ワタクシ は ハラ の ナカ で、 ただ ジブン が わるかった と くりかえす だけ でした。
 その とき サイ は K の ハカ を なでて みて リッパ だ と ひょうして いました。 その ハカ は たいした もの では ない の です けれども、 ワタクシ が ジブン で イシヤ へ いって みたてたり した インネン が ある ので、 サイ は とくに そう いいたかった の でしょう。 ワタクシ は その あたらしい ハカ と、 あたらしい ワタクシ の サイ と、 それから ジメン の シタ に うずめられた K の あたらしい ハッコツ と を おもいくらべて、 ウンメイ の レイバ を かんぜず には いられなかった の です。 ワタクシ は それ イゴ けっして サイ と イッショ に K の ハカマイリ を しない こと に しました。

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 ワタクシ の ボウユウ に たいする こうした カンジ は いつまでも つづきました。 じつは ワタクシ も ハジメ から それ を おそれて いた の です。 ネンライ の キボウ で あった ケッコン すら、 フアン の ウチ に シキ を あげた と いえば いえない こと も ない でしょう。 しかし ジブン で ジブン の サキ が みえない ニンゲン の こと です から、 コト に よる と あるいは これ が ワタクシ の ココロモチ を イッテン して あたらしい ショウガイ に はいる イトグチ に なる かも しれない とも おもった の です。 ところが いよいよ オット と して アサユウ サイ と カオ を あわせて みる と、 ワタクシ の はかない キボウ は てきびしい ゲンジツ の ため に もろくも ハカイ されて しまいました。 ワタクシ は サイ と カオ を あわせて いる うち に、 そつぜん K に おびやかされる の です。 つまり サイ が チュウカン に たって、 K と ワタクシ を どこまでも むすびつけて はなさない よう に する の です。 サイ の どこ にも フソク を かんじない ワタクシ は、 ただ この イッテン に おいて カノジョ を とおざけたがりました。 すると オンナ の ムネ には すぐ それ が うつります。 うつる けれども、 リユウ は わからない の です。 ワタクシ は ときどき サイ から なぜ そんな に かんがえて いる の だ とか、 ナニ か キ に いらない こと が ある の だろう とか いう キツモン を うけました。 わらって すませる とき は それ で さしつかえない の です が、 トキ に よる と、 サイ の カン も こうじて きます。 シマイ には 「アナタ は ワタクシ を きらって いらっしゃる ん でしょう」 とか、 「なんでも ワタクシ に かくして いらっしゃる こと が ある に ちがいない」 とか いう エンゲン も きかなくて は なりません。 ワタクシ は その たび に くるしみました。
 ワタクシ は いっそ おもいきって、 アリノママ を サイ に うちあけよう と した こと が ナンド も あります。 しかし いざ と いう マギワ に なる と ジブン イガイ の ある チカラ が フイ に きて ワタクシ を おさえつける の です。 ワタクシ を リカイ して くれる アナタ の こと だ から、 セツメイ する ヒツヨウ も あるまい と おもいます が、 はなす べき スジ だ から はなして おきます。 その ジブン の ワタクシ は サイ に たいして オノレ を かざる キ は まるで なかった の です。 もし ワタクシ が ボウユウ に たいする と おなじ よう な ゼンリョウ な ココロ で、 サイ の マエ に ザンゲ の コトバ を ならべた なら、 サイ は ウレシナミダ を こぼして も ワタクシ の ツミ を ゆるして くれた に ちがいない の です。 それ を あえて しない ワタクシ に リガイ の ダサン が ある はず は ありません。 ワタクシ は ただ サイ の キオク に アンコク な イッテン を いんする に しのびなかった から うちあけなかった の です。 ジュンパク な もの に ヒトシズク の インキ でも ヨウシャ なく ふりかける の は、 ワタクシ に とって タイヘン な クツウ だった の だ と カイシャク して ください。
 1 ネン たって も K を わすれる こと の できなかった ワタクシ の ココロ は つねに フアン でした。 ワタクシ は この フアン を クチク する ため に ショモツ に おぼれよう と つとめました。 ワタクシ は モウレツ な イキオイ を もって ベンキョウ しはじめた の です。 そうして その ケッカ を ヨノナカ に オオヤケ に する ヒ の くる の を まちました。 けれども ムリ に モクテキ を こしらえて、 ムリ に その モクテキ の たっせられる ヒ を まつ の は ウソ です から フユカイ です。 ワタクシ は どうしても ショモツ の ナカ に ココロ を うずめて いられなく なりました。 ワタクシ は また ウデグミ を して ヨノナカ を ながめだした の です。
 サイ は それ を コンニチ に こまらない から ココロ に タルミ が でる の だ と カンサツ して いた よう でした。 サイ の イエ にも オヤコ フタリ ぐらい は すわって いて どうか こうか くらして ゆける ザイサン が ある うえ に、 ワタクシ も ショクギョウ を もとめない で サシツカエ の ない キョウグウ に いた の です から、 そう おもわれる の も もっとも です。 ワタクシ も イクブン か スポイル された キミ が ありましょう。 しかし ワタクシ の うごかなく なった ゲンイン の おも な もの は、 まったく そこ には なかった の です。 オジ に あざむかれた トウジ の ワタクシ は、 ヒト の タノミ に ならない こと を つくづく と かんじた には ソウイ ありません が、 ヒト を わるく とる だけ あって、 ジブン は まだ たしか な キ が して いました。 セケン は どう あろう とも この オレ は リッパ な ニンゲン だ と いう シンネン が どこ か に あった の です。 それ が K の ため に みごと に ハカイ されて しまって、 ジブン も あの オジ と おなじ ニンゲン だ と イシキ した とき、 ワタクシ は キュウ に ふらふら しました。 ヒト に アイソ を つかした ワタクシ は、 ジブン にも アイソ を つかして うごけなく なった の です。

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 ショモツ の ナカ に ジブン を イキウメ に する こと の できなかった ワタクシ は、 サケ に タマシイ を ひたして、 オノレ を わすれよう と こころみた ジキ も あります。 ワタクシ は サケ が すき だ とは いいません。 けれども のめば のめる タチ でした から、 ただ リョウ を タノミ に ココロ を もりつぶそう と つとめた の です。 この センパク な ホウベン は しばらく する うち に ワタクシ を なお エンセイテキ に しました。 ワタクシ は ランスイ の マッサイチュウ に ふと ジブン の イチ に キ が つく の です。 ジブン は わざと こんな マネ を して オノレ を いつわって いる グブツ だ と いう こと に キ が つく の です。 すると ミブルイ と ともに メ も ココロ も さめて しまいます。 ときには いくら のんで も こうした カソウ ジョウタイ に さえ はいりこめない で むやみ に しずんで ゆく バアイ も でて きます。 そのうえ ギコウ で ユカイ を かった アト には、 きっと チンウツ な ハンドウ が ある の です。 ワタクシ は ジブン の もっとも あいして いる サイ と その ハハオヤ に、 いつでも そこ を みせなければ ならなかった の です。 しかも カレラ は カレラ に シゼン な タチバ から ワタクシ を カイシャク して かかります。
 サイ の ハハ は ときどき きまずい こと を サイ に いう よう でした。 それ を サイ は ワタクシ に かくして いました。 しかし ジブン は ジブン で、 タンドク に ワタクシ を せめなければ キ が すまなかった らしい の です。 せめる と いって も、 けっして つよい コトバ では ありません。 サイ から ナニ か いわれた ため に、 ワタクシ が げきした ためし は ほとんど なかった くらい です から。 サイ は たびたび どこ が キ に いらない の か エンリョ なく いって くれ と たのみました。 それから ワタクシ の ミライ の ため に サケ を やめろ と チュウコク しました。 ある とき は ないて 「アナタ は コノゴロ ニンゲン が ちがった」 と いいました。 それ だけ なら まだ いい の です けれども、 「K さん が いきて いたら、 アナタ も そんな には ならなかった でしょう」 と いう の です。 ワタクシ は そう かも しれない と こたえた こと が ありました が、 ワタクシ の こたえた イミ と、 サイ の リョウカイ した イミ とは まったく ちがって いた の です から、 ワタクシ は ココロ の ウチ で かなしかった の です。 それでも ワタクシ は サイ に ナニゴト も セツメイ する キ には なれません でした。
 ワタクシ は ときどき サイ に あやまりました。 それ は おおく サケ に よって おそく かえった あくる ヒ の アサ でした。 サイ は わらいました。 あるいは だまって いました。 たまに ぽろぽろ と ナミダ を おとす こと も ありました。 ワタクシ は どっち に して も ジブン が フユカイ で たまらなかった の です。 だから ワタクシ の サイ に あやまる の は、 ジブン に あやまる の と つまり おなじ こと に なる の です。 ワタクシ は シマイ に サケ を やめました。 サイ の チュウコク で やめた と いう より、 ジブン で いや に なった から やめた と いった ほう が テキトウ でしょう。
 サケ は やめた けれども、 なにも する キ には なりません。 シカタ が ない から ショモツ を よみます。 しかし よめば よんだ なり で、 うちやって おきます。 ワタクシ は サイ から なんの ため に ベンキョウ する の か と いう シツモン を たびたび うけました。 ワタクシ は ただ クショウ して いました。 しかし ハラ の ソコ では、 ヨノナカ で ジブン が もっとも シンアイ して いる たった ヒトリ の ニンゲン すら、 ジブン を リカイ して いない の か と おもう と、 かなしかった の です。 リカイ させる シュダン が ある のに、 リカイ させる ユウキ が だせない の だ と おもう と ますます かなしかった の です。 ワタクシ は セキバク でした。 どこ から も きりはなされて ヨノナカ に たった ヒトリ すんで いる よう な キ の した こと も よく ありました。
 ドウジ に ワタクシ は K の シイン を くりかえし くりかえし かんがえた の です。 その トウザ は アタマ が ただ コイ の イチジ で シハイ されて いた せい でも ありましょう が、 ワタクシ の カンサツ は むしろ カンタン で しかも チョクセンテキ でした。 K は まさしく シツレン の ため に しんだ もの と すぐ きめて しまった の です。 しかし だんだん おちついた キブン で、 おなじ ゲンショウ に むかって みる と、 そう たやすく は カイケツ が つかない よう に おもわれて きました。 ゲンジツ と リソウ の ショウトツ、 ――それでも まだ フジュウブン でした。 ワタクシ は シマイ に K が ワタクシ の よう に たった ヒトリ で さむしくって シカタ が なくなった ケッカ、 キュウ に ショケツ した の では なかろう か と うたがいだしました。 そうして また ぞっと した の です。 ワタクシ も K の あるいた ミチ を、 K と おなじ よう に たどって いる の だ と いう ヨカク が、 おりおり カゼ の よう に ワタクシ の ムネ を よこぎりはじめた から です。

 54

 そのうち サイ の ハハ が ビョウキ に なりました。 イシャ に みせる と とうてい なおらない と いう シンダン でした。 ワタクシ は チカラ の およぶ かぎり コンセツ に カンゴ を して やりました。 これ は ビョウニン ジシン の ため でも あります し、 また あいする サイ の ため でも ありました が、 もっと おおきな イミ から いう と、 ついに ニンゲン の ため でした。 ワタクシ は それまで にも ナニ か したくって たまらなかった の だ けれども、 なにも する こと が できない ので やむ を えず フトコロデ を して いた に チガイ ありません。 セケン と きりはなされた ワタクシ が、 はじめて ジブン から テ を だして、 イクブン でも いい こと を した と いう ジカク を えた の は この とき でした。 ワタクシ は ツミホロボシ と でも なづけなければ ならない、 イッシュ の キブン に シハイ されて いた の です。
 ハハ は しにました。 ワタクシ と サイ は たった フタリ ぎり に なりました。 サイ は ワタクシ に むかって、 これから ヨノナカ で タヨリ に する モノ は ヒトリ しか なくなった と いいました。 ジブン ジシン さえ タヨリ に する こと の できない ワタクシ は、 サイ の カオ を みて おもわず なみだぐみました。 そうして サイ を フコウ な オンナ だ と おもいました。 また フコウ な オンナ だ と クチ へ だして も いいました。 サイ は なぜ だ と ききます。 サイ には ワタクシ の イミ が わからない の です。 ワタクシ も それ を セツメイ して やる こと が できない の です。 サイ は なきました。 ワタクシ が フダン から ひねくれた カンガエ で カノジョ を カンサツ して いる ため に、 そんな こと も いう よう に なる の だ と うらみました。
 ハハ の なくなった アト、 ワタクシ は できる だけ サイ を シンセツ に とりあつかって やりました。 ただ トウニン を あいして いた から ばかり では ありません。 ワタクシ の シンセツ には コジン を はなれて もっと ひろい ハイケイ が あった よう です。 ちょうど サイ の ハハ の カンゴ を した と おなじ イミ で、 ワタクシ の ココロ は うごいた らしい の です。 サイ は マンゾク-らしく みえました。 けれども その マンゾク の ウチ には、 ワタクシ を リカイ しえない ため に おこる ぼんやり した キハク な テン が どこ か に ふくまれて いる よう でした。 しかし サイ が ワタクシ を リカイ しえた に した ところ で、 この モノタリナサ は ます とも へる キヅカイ は なかった の です。 オンナ には おおきな ジンドウ の タチバ から くる アイジョウ より も、 たしょう ギリ を はずれて も ジブン だけ に シュウチュウ される シンセツ を うれしがる セイシツ が、 オトコ より も つよい よう に おもわれます から。
 サイ は ある とき、 オトコ の ココロ と オンナ の ココロ とは どうしても ぴたり と ヒトツ に なれない もの だろう か と いいました。 ワタクシ は ただ わかい とき なら なれる だろう と アイマイ な ヘンジ を して おきました。 サイ は ジブン の カコ を ふりかえって ながめて いる よう でした が、 やがて かすか な タメイキ を もらしました。
 ワタクシ の ムネ には その ジブン から ときどき おそろしい カゲ が ひらめきました。 ハジメ は それ が ぐうぜん ソト から おそって くる の です。 ワタクシ は おどろきました。 ワタクシ は ぞっと しました。 しかし しばらく して いる うち に、 ワタクシ の ココロ が その ものすごい ヒラメキ に おうずる よう に なりました。 シマイ には ソト から こない でも、 ジブン の ムネ の ソコ に うまれた とき から ひそんで いる もの の ごとく に おもわれだして きた の です。 ワタクシ は そうした ココロモチ に なる たび に、 ジブン の アタマ が どうか した の では なかろう か と うたぐって みました。 けれども ワタクシ は イシャ にも ダレ にも みて もらう キ には なりません でした。
 ワタクシ は ただ ニンゲン の ツミ と いう もの を ふかく かんじた の です。 その カンジ が ワタクシ を K の ハカ へ マイゲツ ゆかせます。 その カンジ が ワタクシ に サイ の ハハ の カンゴ を させます。 そうして その カンジ が サイ に やさしく して やれ と ワタクシ に めいじます。 ワタクシ は その カンジ の ため に、 しらない ロボウ の ヒト から むちうたれたい と まで おもった こと も あります。 こうした カイダン を だんだん ケイカ して ゆく うち に、 ヒト に むちうたれる より も、 ジブン で ジブン を むちうつ べき だ と いう キ に なります。 ジブン で ジブン を むちうつ より も、 ジブン で ジブン を ころす べき だ と いう カンガエ が おこります。 ワタクシ は シカタ が ない から、 しんだ キ で いきて いこう と ケッシン しました。
 ワタクシ が そう ケッシン して から コンニチ まで ナンネン に なる でしょう。 ワタクシ と サイ とは モト の とおり なかよく くらして きました。 ワタクシ と サイ とは けっして フコウ では ありません、 コウフク でした。 しかし ワタクシ の もって いる イッテン、 ワタクシ に とって は ヨウイ ならん この イッテン が、 サイ には つねに アンコク に みえた らしい の です。 それ を おもう と、 ワタクシ は サイ に たいして ヒジョウ に キノドク な キ が します。

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 しんだ つもり で いきて ゆこう と ケッシン した ワタクシ の ココロ は、 ときどき ガイカイ の シゲキ で おどりあがりました。 しかし ワタクシ が どの ホウメン か へ きって でよう と おもいたつ や いなや、 おそろしい チカラ が どこ から か でて きて、 ワタクシ の ココロ を ぐいと にぎりしめて すこしも うごけない よう に する の です。 そうして その チカラ が ワタクシ に オマエ は ナニ を する シカク も ない オトコ だ と おさえつける よう に いって きかせます。 すると ワタクシ は その イチゲン で すぐ ぐたり と しおれて しまいます。 しばらく して また たちあがろう と する と、 また しめつけられます。 ワタクシ は ハ を くいしばって、 なんで ヒト の ジャマ を する の か と どなりつけます。 フカシギ な チカラ は ひややか な コエ で わらいます。 ジブン で よく しって いる くせ に と いいます。 ワタクシ は また ぐたり と なります。
 ハラン も キョクセツ も ない タンチョウ な セイカツ を つづけて きた ワタクシ の ナイメン には、 つねに こうした くるしい センソウ が あった もの と おもって ください。 サイ が みて はがゆがる マエ に、 ワタクシ ジシン が ナン-ゾウバイ はがゆい オモイ を かさねて きた か しれない くらい です。 ワタクシ が この ロウヤ の ウチ に じっと して いる こと が どうしても できなく なった とき、 また その ロウヤ を どうしても つきやぶる こと が できなく なった とき、 ひっきょう ワタクシ に とって いちばん ラク な ドリョク で スイコウ できる もの は ジサツ より ホカ に ない と ワタクシ は かんずる よう に なった の です。 アナタ は なぜ と いって メ を みはる かも しれません が、 いつも ワタクシ の ココロ を ニギリシメ に くる その フカシギ な おそろしい チカラ は、 ワタクシ の カツドウ を あらゆる ホウメン で くいとめながら、 シ の ミチ だけ を ジユウ に ワタクシ の ため に あけて おく の です。 うごかず に いれば ともかくも、 すこし でも うごく イジョウ は、 その ミチ を あるいて すすまなければ ワタクシ には ススミヨウ が なくなった の です。
 ワタクシ は コンニチ に いたる まで すでに 2~3 ド ウンメイ の みちびいて ゆく もっとも ラク な ホウコウ へ すすもう と した こと が あります。 しかし ワタクシ は いつでも サイ に ココロ を ひかされました。 そうして その サイ を イッショ に つれて ゆく ユウキ は むろん ない の です。 サイ に スベテ を うちあける こと の できない くらい な ワタクシ です から、 ジブン の ウンメイ の ギセイ と して、 サイ の テンジュ を うばう など と いう てあら な ショサ は、 かんがえて さえ おそろしかった の です。 ワタクシ に ワタクシ の シュクメイ が ある とおり、 サイ には サイ の マワリアワセ が あります。 フタリ を ヒトタバ に して ヒ に くべる の は、 ムリ と いう テン から みて も、 いたましい キョクタン と しか ワタクシ には おもえません でした。
 ドウジ に ワタクシ だけ が いなく なった アト の サイ を ソウゾウ して みる と いかにも フビン でした。 ハハ の しんだ とき、 これから ヨノナカ で タヨリ に する モノ は ワタクシ より ホカ に なくなった と いった カノジョ の ジュッカイ を、 ワタクシ は ハラワタ に しみこむ よう に キオク させられて いた の です。 ワタクシ は いつも チュウチョ しました。 サイ の カオ を みて、 よして よかった と おもう こと も ありました。 そうして また じっと すくんで しまいます。 そうして サイ から ときどき ものたりなそう な メ で ながめられる の です。
 キオク して ください。 ワタクシ は こんな ふう に して いきて きた の です。 はじめて アナタ に カマクラ で あった とき も、 アナタ と イッショ に コウガイ を サンポ した とき も、 ワタクシ の キブン に たいした カワリ は なかった の です。 ワタクシ の ウシロ には いつでも くろい カゲ が くっついて いました。 ワタクシ は サイ の ため に、 イノチ を ひきずって ヨノナカ を あるいて いた よう な もの です。 アナタ が ソツギョウ して クニ へ かえる とき も おなじ こと でした。 9 ガツ に なったら また アナタ に あおう と ヤクソク した ワタクシ は、 ウソ を ついた の では ありません。 まったく あう キ で いた の です。 アキ が さって、 フユ が きて、 その フユ が つきて も、 きっと あう つもり で いた の です。
 すると ナツ の あつい サカリ に メイジ テンノウ が ホウギョ に なりました。 その とき ワタクシ は メイジ の セイシン が テンノウ に はじまって テンノウ に おわった よう な キ が しました。 もっとも つよく メイジ の エイキョウ を うけた ワタクシドモ が、 その アト に いきのこって いる の は ひっきょう ジセイオクレ だ と いう カンジ が はげしく ワタクシ の ムネ を うちました。 ワタクシ は あからさま に サイ に そう いいました。 サイ は わらって とりあいません でした が、 ナニ を おもった もの か、 とつぜん ワタクシ に、 では ジュンシ でも したら よかろう と からかいました。

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 ワタクシ は ジュンシ と いう コトバ を ほとんど わすれて いました。 ヘイゼイ つかう ヒツヨウ の ない ジ だ から、 キオク の ソコ に しずんだ まま、 くされかけて いた もの と みえます。 サイ の ジョウダン を きいて はじめて それ を おもいだした とき、 ワタクシ は サイ に むかって もし ジブン が ジュンシ する ならば、 メイジ の セイシン に ジュンシ する つもり だ と こたえました。 ワタクシ の コタエ も むろん ジョウダン に すぎなかった の です が、 ワタクシ は その とき なんだか ふるい フヨウ な コトバ に あたらしい イギ を もりえた よう な ココロモチ が した の です。
 それから ヤク 1 カゲツ ほど たちました。 ゴタイソウ の ヨル ワタクシ は イツモ の とおり ショサイ に すわって、 アイズ の ゴウホウ を ききました。 ワタクシ には それ が メイジ が エイキュウ に さった ホウチ の ごとく きこえました。 アト で かんがえる と、 それ が ノギ タイショウ の エイキュウ に さった ホウチ にも なって いた の です。 ワタクシ は ゴウガイ を テ に して、 おもわず サイ に ジュンシ だ ジュンシ だ と いいました。
 ワタクシ は シンブン で ノギ タイショウ の しぬ マエ に かきのこして いった もの を よみました。 セイナン センソウ の とき テキ に ハタ を とられて イライ、 モウシワケ の ため に しのう しのう と おもって、 つい コンニチ まで いきて いた と いう イミ の ク を みた とき、 ワタクシ は おもわず ユビ を おって、 ノギ さん が しぬ カクゴ を しながら いきながらえて きた トシツキ を カンジョウ して みました。 セイナン センソウ は メイジ 10 ネン です から、 メイジ 45 ネン まで には 35 ネン の キョリ が あります。 ノギ さん は この 35 ネン の アイダ しのう しのう と おもって、 しぬ キカイ を まって いた らしい の です。 ワタクシ は そういう ヒト に とって、 いきて いた 35 ネン が くるしい か、 また カタナ を ハラ へ つきたてた イッセツナ が くるしい か、 どっち が くるしい だろう と かんがえました。
 それから 2~3 ニチ して、 ワタクシ は とうとう ジサツ する ケッシン を した の です。 ワタクシ に ノギ さん の しんだ リユウ が よく わからない よう に、 アナタ にも ワタクシ の ジサツ する ワケ が あきらか に のみこめない かも しれません が、 もし そう だ と する と、 それ は ジセイ の スイイ から くる ニンゲン の ソウイ だ から シカタ が ありません。 あるいは コジン の もって うまれた セイカク の ソウイ と いった ほう が たしか かも しれません。 ワタクシ は ワタクシ の できる かぎり この フカシギ な ワタクシ と いう もの を、 アナタ に わからせる よう に、 イマ まで の ジョジュツ で オノレ を つくした つもり です。
 ワタクシ は サイ を のこして ゆきます。 ワタクシ が いなく なって も サイ に イショクジュウ の シンパイ が ない の は シアワセ です。 ワタクシ は サイ に ザンコク な キョウフ を あたえる こと を このみません。 ワタクシ は サイ に チ の イロ を みせない で しぬ つもり です。 サイ の しらない マ に、 こっそり コノヨ から いなく なる よう に します。 ワタクシ は しんだ アト で、 サイ から トンシ した と おもわれたい の です。 キ が くるった と おもわれて も マンゾク なの です。
 ワタクシ が しのう と ケッシン して から、 もう トオカ イジョウ に なります が、 その ダイブブン は アナタ に この ながい ジジョデン の イッセツ を かきのこす ため に シヨウ された もの と おもって ください。 ハジメ は アナタ に あって ハナシ を する キ で いた の です が、 かいて みる と、 かえって その ほう が ジブン を はっきり えがきだす こと が できた よう な ココロモチ が して うれしい の です。 ワタクシ は スイキョウ に かく の では ありません。 ワタクシ を うんだ ワタクシ の カコ は、 ニンゲン の ケイケン の イチブブン と して、 ワタクシ より ホカ に ダレ も かたりうる モノ は ない の です から、 それ を イツワリ なく かきのこして おく ワタクシ の ドリョク は、 ニンゲン を しる うえ に おいて、 アナタ に とって も、 ホカ の ヒト に とって も、 トロウ では なかろう と おもいます。 ワタナベ カザン は カンタン と いう エ を かく ため に、 シキ を 1 シュウカン くりのべた と いう ハナシ を つい せんだって ききました。 ヒト から みたら ヨケイ な こと の よう にも カイシャク できましょう が、 トウニン には また トウニン ソウオウ の ヨウキュウ が ココロ の ウチ に ある の だ から やむ を えない とも いわれる でしょう。 ワタクシ の ドリョク も たんに アナタ に たいする ヤクソク を はたす ため ばかり では ありません。 ナカバ イジョウ は ジブン ジシン の ヨウキュウ に うごかされた ケッカ なの です。
 しかし ワタクシ は イマ その ヨウキュウ を はたしました。 もう なんにも する こと は ありません。 この テガミ が アナタ の テ に おちる コロ には、 ワタクシ は もう コノヨ には いない でしょう。 とくに しんで いる でしょう。 サイ は トオカ ばかり マエ から イチガヤ の オバ の ところ へ ゆきました。 オバ が ビョウキ で テ が たりない と いう から ワタクシ が すすめて やった の です。 ワタクシ は サイ の ルス の アイダ に、 この ながい もの の ダイブブン を かきました。 ときどき サイ が かえって くる と、 ワタクシ は すぐ それ を かくしました。
 ワタクシ は ワタクシ の カコ を ゼンアク ともに ヒト の サンコウ に きょうする つもり です。 しかし サイ だけ は たった ヒトリ の レイガイ だ と ショウチ して ください。 ワタクシ は サイ には なんにも しらせたく ない の です。 サイ が オノレ の カコ に たいして もつ キオク を、 なるべく ジュンパク に ホゾン して おいて やりたい の が ワタクシ の ユイイツ の キボウ なの です から、 ワタクシ が しんだ アト でも、 サイ が いきて いる イジョウ は、 アナタ カギリ に うちあけられた ワタクシ の ヒミツ と して、 スベテ を ハラ の ナカ に しまって おいて ください。

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