140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

2012-08-25 00:08:12 | ヴォネガット
カート・ヴォネガット「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」を読んだ。
SFではない。

「・・・・・・そう、もしかすると人気の秘訣は、大のおとなならとうに片づいたと
みなしている青くさい問題をわたしが扱うかもしれません。わたしは、神とはなんぞや、
神がのぞむものはいったいなにか、天国はあるか、あるとすればどんなものかなどと
いうことを話します。大学に入って二年目くらいの学生がやることですね。
彼らは喜んでこういう問題を論じます。ところがもっと成熟した人々は、そんなことは
とうに解決ずみといった様子で、ひどく退屈そうな態度を示すのです」

訳者あとがきに、青年のあいだで人気を集めている理由を問われた時のヴォネガットの
答えとして上記の文章が記載されていた。
SFという衣をまといながら、神とはなんぞや、人生の目的とはなんぞやという話を
展開して行くところに著者の魅力があると思う。
ところが本書はSFではないので、その辺のやりとりが少し物足りないという感じがする。

どんなにつまらないと思える人間に対しても、やさしい言葉をかけるという点では、
ムイシュキン公爵に少し似た人物が登場する。
「白痴」であることと「キじるし」であることも共通している。
ヴォネガットの「白痴」と呼んでみたい。

「タイタンの妖女」で金持ちであることの罪悪感のようなことが書かれていたが
本書でも同様のことが書かれている。
それでヴォネガットは私有財産を認めていないのだろうかと考えてしまう。
そうするとマルクスとエンゲルスのお友達ということになるのだろう。
レッド・パージの国では、そんなことはあり得ないので、深読みしすぎかもしれない。

「でも、あなたはそこでなにをなさるつもりなの、エリオット?」
「ぼくはこの人たちのめんどうを見ていこうと思うんだ」
「それは―それはとてもいいことね」