140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

バカの壁

2010-04-21 05:26:36 | 
養老孟司「バカの壁」という本を読んだ。これも105円で買った。

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つまり、本来、人間にはわからない現実のディテールを完全に把握している存在が、
世界中でひとりだけいる。それが「神」である。この前提があるからこそ、正しい
答えも損じしているという前提が出来る。それゆえに、彼らは科学にしても他の何の
分野にしても、正しい答えというものを徹底的に追求出来るのです。唯一絶対的な
存在があってこそ「正解」は存在する、ということなのです。
ところが、私たち日本人の住むのは本来、八百万の神の世界です。ここには、本質的に
真実は何か、事実は何か、と追究する癖が無い。それは当然のことで、「絶対的真実」が
存在していないのですから。これは、一神教の世界と自然宗教の世界、すなわち世界の
大多数である欧米やイスラム社会と日本との、大きな違いです。(20ページ)
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一神教どうしの戦争は酷い。欧米はテロとの戦いだと喧伝しているが実際には
互いに相容れない一神教どうしの戦いになっている。
そして自然宗教だか無宗教だかわからない私には彼らが戦い続ける理由がよくわからない。
「真実は何か」なんて私にとっては既に意味をなくした問いではあるが
「事実は何か」ということは知りたいと思っている。
ただ、知ろうとしても、いつかは「バカの壁」に突き当たって理解を諦めなければならない
そうである。ただ養老さんのそういう感覚とはちょっと違ったものが私にはある。
生きている間に何を諦めることがあるのだろうかという気持ちだ。

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知るということは、自分がガラッと変わることです。したがって、世界がまったく
変わってしまう。見え方が変わってしまう。それが昨日までと殆ど同じ世界でも。
(60ページ)
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今でもドストエフスキーを初めて読んだ時のショックを覚えている。
それは感動と呼ばれるものとは全く異なる。
それまで見えていたもの、自分の考え方を規定していたものは
いったい何だったのかと思った。
私にとっては、それが世界を知ろうとすることの第一歩だった。

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かつては「誰もが食うに困らない」というのが理想のひとつの方向でした。今はそれが
満たされて、理想とするものがバラバラになっている。
だからこそ共同体も崩壊している。(109ページ)
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「食うに困らない」社会かもしれないが、毎年3万人以上の人が自殺する異様な社会でもある。
ホームレスで残飯食ってたら生きていけるが、様々なことに疲れきって死んでしまう人が
たくさんいる。共同体は崩壊し、人々が互いに手を差し伸べることはない。

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一方で、「人間であればこうだろう」ということは、非常に簡単なようで、ある意味で
わかりにくい。それでも、結局、そうしていくしか道は残っていないはずだ、と思うの
です。イスラム教徒だろうが、キリスト教徒だろうが、ユダヤ教徒だろうが、あんた、
人間でしょう、という考え方です。「人間であればこうだろう」ということは、
普遍的な原理になるのではないか。(203ページ)
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締めくくりとしては、かなり乱暴な方だと思う。冒頭では「話せばわかる」ということを
否定していたが、最後に「人間であればこうだろう」というのは、かなり矛盾している。
イスラム教徒とキリスト教徒では「人間」というものの捉え方も異なるだろう。
先天的に私たちがそういうものを持っていれば良いと思うが歴史はそれを否定している。
あるいは教育、あるいは宗教という偏見によって、私たちの価値観は歪められてしまう。
だから世界を知ろうとしなければならない。
知ることは覚えることではなく変わることなのだから・・・