140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

凡人として生きるということ

2010-04-16 06:18:49 | 
押井守「凡人として生きるということ」という本を読んだ。これも105円で買った。
押井監督の作品はわりと好きだ。

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かつてこの国では、映画監督が鋭い映像感覚によって社会を切り取り、社会評論家や
批評家が鋭い言葉によって社会に光を当てるという責任分担ができていたと思う。
しかし、最近はどうだろう。この分業制がうまくいっていないように感じるのだ。
いつのころから、こんなことになってきたのだろうと思い返すと、数年前のある残酷な
殺人事件に思い至る。少年が幼い子供を、これ以上ないというほどの残忍な手法で
手にかけた事件を目の当たりにして、僕らは話すべき言葉をなくしてしまった。そして、
社会評論家もまた言葉を失い、批評家は押し黙ってしまったように見える。(9ページ)
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「それ」が置かれていた中学校の門の前の道は私たちが車でよく通る道だった。
多くの被災者を出したあの地震を予測できなかったように
そんなことが身近に起こるなんて誰も予測していなかった。
犯人が捕まるまでの間、住民はみな苛立っていたし、疑心暗鬼の中にいた。
住んでいた団地に警官が尋ねてきて、私にいきなり草刈鎌を押し付けてきた。
私たちは月に一度、共同で団地の清掃や草刈りをしていたのだが、
その時に使ったものが1本片付けられることなく放置されていたのだ。
警官の私を見る目は「犯人」を見る目のようだった。
それが「凶器」であるかのように、それが「証拠」であるかのように彼の目は語っていた。
しばらくして「犯人」が捕まったが私たちは安心するよりも落胆した。
誰もが言葉を失くした・・・
押井監督の本の冒頭に書かれていることが、かつて私が住んでいた街のある風景と
重なっていた。私たちはみんな、そういうことを共有していて生きているのだ。
同じ時代を生きているのだから、互いに無関係ということはなく、
どこかに接点がある。

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本書については、僕が今、感じていることを赤裸々につづったつもりだ。だからここに
記されていることは、あくまでも個人的な意見である。偏見もあるし、独断も含まれる。
それはお許しいただきたいが、それでもなお、本書がこのろくでもない世界を理解し、
これに対処するための何かの役にたつのであれば、望外の喜びである。
僕は多くの人に映画を見てほしい。そして本書も手にとっていただきたい。
僕が映像だけで伝えられなかった言葉が本書にはつづられており、
僕が言葉にできなかった思いが映画には描かれている。そして誰かが、僕の能力不足で
言葉にできなかった問題意識を、もっと的確に言語化し、この世界にひと筋の光を
当ててくれることを切に望んでいる。
残念ながら人は誰も、生まれてくる時代と場所を選べない。僕らはどんなに苦しくても、
この時代を生きていかなければならないのである。(11ページ)
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「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」、「人狼 JIN-ROH」、「イノセンス」、「アヴァロン」は
レンタルにあったので見た。
ウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」は「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の
影響を強く受けていると言われる。
それで本の方は、「偏見もあるし、独断も含まれる」と書いてあり、実際その通りなのだが、
独断のない本というのもつまらないのでブックオフで見かけたら買ってみてください。
105円だし。そんなに難しいことを書いているわけでもない。