昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第一章:親父への旅   雨の術後 ④

2010年10月12日 | 日記
しばらく暗い窓外を眺める。激しく落ちてくる雨が巻き起こす風が心地よい。病室の中には雨音しかなく、むしろ静謐を際立たせている。 穏やかで平和な時間を共に慈しむように、毛布の脇から手を忍び込ませ、親父の手を握る。熱に火照った手が握り返してくる。身体の芯から“感謝”の気持ちが湧いてくる。 そのまま手を握り続けていると、突然親父が「晩飯、食ったんか?」と起きる。そのはっきりとし . . . 本文を読む