そんな僕たちの心配をよそに、とっちゃんはふらりとその夜、僕の下宿にやってきた。
部屋の壁に立てかけたコタツの脚に紐を張り、雨に濡れたシャツとジーンズを掛けた時だった。
「グリグリ~~~~」
大きな声が道路から聞こえてきた。僕は飛び上がった。窓を開けると、自転車にまたがったとっちゃんだった。
「グリグリ、ここやったんや~~」
雨に目をしばたたかせながら見上げる顔がにんまりと笑う。僕は階段を . . . 本文を読む
とっちゃんのお父さんは、とっちゃんが小学校に入って間もなく家を出ていった。それからは、おかあさんが女手一つでとっちゃんを育てることになった。
カズさんがおかあさんと知り合ったのは、とっちゃんが中学を卒業する頃。息子の将来を気遣うおかあさんに、カズさんは、自分が働き始めて間もない販売所を紹介した。
「ウチで配達でもさせてみたらどうですか?」
カズさんに伴われてやってきたおかあさんにおっちゃんが . . . 本文を読む