昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

とっちゃんの宵山 ⑪

2016年09月20日 | 日記
そんな僕たちの心配をよそに、とっちゃんはふらりとその夜、僕の下宿にやってきた。 部屋の壁に立てかけたコタツの脚に紐を張り、雨に濡れたシャツとジーンズを掛けた時だった。 「グリグリ~~~~」 大きな声が道路から聞こえてきた。僕は飛び上がった。窓を開けると、自転車にまたがったとっちゃんだった。 「グリグリ、ここやったんや~~」 雨に目をしばたたかせながら見上げる顔がにんまりと笑う。僕は階段を . . . 本文を読む

とっちゃんの宵山 ⑩

2016年09月14日 | 日記
とっちゃんのお父さんは、とっちゃんが小学校に入って間もなく家を出ていった。それからは、おかあさんが女手一つでとっちゃんを育てることになった。 カズさんがおかあさんと知り合ったのは、とっちゃんが中学を卒業する頃。息子の将来を気遣うおかあさんに、カズさんは、自分が働き始めて間もない販売所を紹介した。 「ウチで配達でもさせてみたらどうですか?」 カズさんに伴われてやってきたおかあさんにおっちゃんが . . . 本文を読む