昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

風に揺れる蛹 ③

2017年05月31日 | 日記
娘宥子が小学校に入って間もなく親父が、その4年後にお袋が亡くなると、ひとみは自分の母親と同居したいと言い始める。もとより母一人娘一人であることは承知の上での結婚。義母との折り合いも悪くはなかったので、快く了承した。 そして、湾岸エリアの高層マンションを購入。ひとみの希望は当初タワーマンションだったが、高層階は価格的に手が届かず、中層階なら資金的にはなんとかなるものの、中層階ではタワーマンションに . . . 本文を読む

風に揺れる蛹 ②

2017年05月29日 | 日記
中学2年の夏の朝、パジャマのまま学生鞄を持ち自宅から道路に跳び出た時、弁当を手に追いかけてきたお袋の、複雑な笑顔を思い出す。 路地から表通りに出る一歩手前でお袋の声に気付いた。振り返ると、自分の格好を見てみなさい、と手付きが言っている。パジャマ姿に驚き立ちすくむと、弁当片手のお袋の姿は追いかけるのを止め、両手を膝に俯いた。足は裸足だ。余程急いだのだろう、肩が揺れている。辺りを気にしながら近づくと . . . 本文を読む

風に揺れる蛹 ①

2017年05月25日 | 日記
細かな気泡が鼻先から浮き上がっていく。見開いた目に映っていた緑一色の光景はもはや暗転している。 記憶や予感のすべては、頭の中心の一点に吸い込まれ、痺れた意識が温かく全身を浸している。 足の裏が突然、ぬめりとした固形物に触れた。指先に力を込める。落ちる身体の重さに曲がった膝をバネに蹴り上がる。一気に身体は浮上へと向かう。 半開きの口から、一塊の空気が目の前を立ち昇っていく。黒い光景が緑へ、そし . . . 本文を読む

新連載を開始します(5月25日より)

2017年05月24日 | 日記
昭和少年漂流記第三章を現在書き進めていますが、連載開始までにはまだ相当の時間を要するものと思われます。 したがって、他の物語を連載させていただきます。昨年(2026年)夏~秋に書いたものです。 タイトルは「風に揺れる蛹」。創作したお話です。 明日(5月25日)から、隔日連載で約10回程度になると思います。興味のある方は、お読みください。             Kakky(柿本洋一)   . . . 本文を読む