僕が痛みに小さく呻くと、「痛かった?」と上目遣いに言って、また僕の乳首を捻った。
「イテ!」
あまりの痛さに奈緒子の手を払いのけた。
「痛かった?」と、また上目遣いの奈緒子に僕は、「痛いに決まってるやないか!なんで、そんなことすんの」と声を荒げてしまう。
「ちょっとね、試してみたかったの」
「なにを?」
「痛みがどの程度わかる人なのかな?って」
「身体の痛みに鈍い人って&hellip . . . 本文を読む
大の字になっていた奈緒子の腕が僕をしっかりと掴まえた。首が引き寄せられ、唇と唇が重なった。奈緒子の鼻息が熱く僕の鼻を襲う。かぐわしく、心浮き立つ匂いが鼻腔に侵入してきた。僕は、大きく息を吸う。奈緒子の腕に力がこもる。半身起き上がった奈緒子を引き寄せ、僕も負けじと抱きしめた。そしてそのまま、僕たちは息が苦しくなるまで抱き合っていた。
「ねえ、ちょっと待ってて。お布団敷くから」
ふぅと唇を離して、 . . . 本文を読む
「汗で気持ち悪いでしょ。うちにお風呂があればいいんだけど、ねえ。風呂付って家賃高いから…」
奈緒子がタオルを手渡しながら、溜息をつく。秋を迎えているとはいえ厳しい残暑の中、丸四日も風呂に入っていない。豪徳寺のアパートで身体を拭いた程度では、いくら体臭がない方だとはいえ、もう限界を迎えつつある。
「銭湯に行ってるの?」
「うん。……行く?」
言われて . . . 本文を読む
しかし、暑い。頬が火照り、額から流れる汗が眉を濡らしている。胸と背中に粘りつくシャツを剥ぎ取るように脱ぎ去りたい。熱いチキンラーメンのせいだけとは思えない。
「あ!ごめんなさ~い!」
ココナッツサブレと思しきものを左脇に、リンゴを左手にして台所から帰ってきた奈緒子が叫んだ。その首には赤いタオルが巻かれている。
「窓開けてなかった~。暑いわけよね」
言われて振り向くと、確かに窓は閉まっている . . . 本文を読む
一箸一箸チキンラーメンを口に運ぶ奈緒子の顔を正視できず、僕は食べることに専念する振りをした。そして、彼女が下を向いた時に表情を盗み見た。ショートカットの前髪が汗にはりついていた。麺をすする時、小さな笑窪ができることを発見した。彼女が顔を上げそうになると、顔を丼に向けた。まるで交互に餌をついばむ小鳥のようだと思った。
「あら?!食べてないじゃい?おいしくない?」
スープを飲み干そうと丼を口に運ん . . . 本文を読む