昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

昭和少年漂流記:第五章“パワーストーン” ……30

2014年08月30日 | 日記
第30回   ランチ代わりのパンケーキとレモンティーが終わり、コーヒーを追加注文して20分。約束の時間はとっくに過ぎている。飯嶋は、竹沼から届いた“新会社構想:第三稿”を目の前に、何度も溜息を漏らしていた。 地下鉄乃木坂駅を外苑東通りに出てすぐ、田端の“乃木坂CM研究所”まで徒歩数分の喫茶店。午後1時半、昼休みの時間も終わり、店内には . . . 本文を読む

昭和少年漂流記:第五章“パワーストーン” ……29

2014年08月19日 | 日記
第29回 グラスに目を戻した高山の次の言葉を待ちながら、あゆみも自分のグラスを見つめる。吹っ切ったはずの久保田の顔が浮かんでくる。今になってみると、愛したことがあるということさえ確かなこととは思えない。一体、何にこだわり、何を吹っ切ったというのだろう。 「ノー、ノー。コンプライアンス、コンプライアンス」 突然あゆみに顔を向けそう言うと、高山は右人差し指を左右に動かす。 「それが誰かは、言え . . . 本文を読む

昭和少年漂流記:第五章“パワーストーン” ……28

2014年08月15日 | 日記
第28回 「コンプライアンスの関係で、個人名や個人が特定できそうな情報には触れられないけどね」 そう言って、またウィンクをすると、高山はゆっくりと語り始めた。 15年前、高山は二つの大きな別れを経験した。きっかけは、バブル崩壊だった。 バブル崩壊の翌年に厄年を迎え、2本の大型契約を失っていた高山は、その翌年の厄明けを派手なパーティで祝い、心機一転を図った。バブル期に8人にまで膨らんでいたス . . . 本文を読む

記昭和少年漂流記:第五章“パワーストーン” ……27

2014年08月12日 | 日記
第27回   夕闇の富ヶ谷の交差点を二人で渡る。11月も終わろうとしているのに、コート姿に出会わない。 「冬が来たかなあって思ってたのに、今日は暖かいですね」 高山は立ち止まり、久しぶりに袖を通したハリスツイードのジャケットを脱ぐ。 「私、今日、千代田線の中で、Tシャツの外人さん見ましたよ」 「あの人たち、気温に合わせて着る物選びますからね。まあ、今日の僕みたいに、無理して季 . . . 本文を読む

記昭和少年漂流記:第五章“パワーストーン” ……26

2014年08月08日 | 日記
第26回   「あゆみちゃんにも何か“あ~~あ、まったく~~”って話でもあったんですか?」 あゆみは両肘を突き、掌に顎を乗せる。その瞬間の溜息とゆがんだ微笑みの奥には、怒りがあるように見える。 「ううん。“あ~~あ、まったく~~”ってわけじゃないんですよ。そんなの何回もあったから慣れてますし」 「おや?じゃ、根深いですねえ、今回の . . . 本文を読む