昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第一章:親父への旅   雨の術後 ③

2010年10月11日 | 日記
病院に到着。足音を潜めながら、階段を急ぐ。階段と廊下には、夕食の喧騒の余韻がまだ漂っている。病室にそっと入る。親父は、小さく口を開けて熟睡中だ。病室の奥、ソファの上にポーチを置き、ベッドの左側から親父を覗き込む。 入れ歯のおかげで、親父はいつもの親父の顔に戻っている。厳格でお人よし、照れ屋でプライドが高く、どこか甘えん坊な親父の顔だ。 ひとしきり親父の顔を見つめた後、一晩を過ごす準備に入る。文 . . . 本文を読む