電車賃を残し、残りすべての小銭をテーブルの上に置いて、煙草を2~3本胸のポケットに差し込んで、僕は店を出た。
九条河原町を京都駅の方へ曲がると、京都タワーが丸物百貨店の上に半身を突き出していた。明けていく朝の光に、その肌は薄く茜色に滲んでいる。その姿に、京都駅に降り立ち、初めて京都タワーを眼前にした時の強い違和感はない。なぜか妙にやるせなく懐かしい想いに立ち止まっていると、左肘を強く握りしめられ . . . 本文を読む
京子の名前を出した途端、和恵の顔が曇った。
「あの子は夏美さんや私とは違う、思うてるんやけど……。一緒に見える?」
静かな言い方に変わったことが、不快と怒りを表わしている。僕は少し焦った。
「いや、そりゃあもちろん、色々と違うところはあると思うけど…。なんて言うか、よく気が付くところとか、男に優しいところとか…。彼女も古風な感じがしたか . . . 本文を読む