昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  88

2012年08月31日 | 日記
「折角呪縛から解き放たれたような気分だったんやろう。学生生活に戻ったらよかったんちゃう?」 なじるように桑原君に言うと、彼は痛そうに顔を歪めた。 「黒ヘルやない思うてるんやけど、パトカー燃やされた事件あったやろう。警官が大やけどしたらしいんやけど。あの事件のちょっと前に小杉さん、で、直後に三枝さんが消えたもんやから、あいつらやないかゆうて、警察疑ってるみたいなんや。上村さんからの情報やけど&h . . . 本文を読む

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  88

2012年08月25日 | 日記
「ところで、君たち追われてんの?隠れてんとあかん理由、あんの?」 率直に訊いてみた。すると、 「そう言われてんねん。折角仲良う暮らし始めたんやから、つかまったらつまらんやろ?て、言われたんやけどな」と、桑原君は首を傾げて俯いた。 「誰に言われたんや。追われる理由は、なんやの?追ってるんは、警察?それとも…」 僕は少し、怒っていた。ただ、その怒りが桑原君と京子に向いているものな . . . 本文を読む

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  87

2012年08月21日 | 日記
「半分は本当で半分は嘘なんやなあ、噂って」 そう呟いて、僕は大きく溜め息を漏らした。桑原君を探して僕の部屋にやってきた京子の、妖しげな脆さも理解できたような気がした。“女のリクルーター”の噂があながちデマではなかったこともわかった。 そして何よりも、男子学生たちが口角泡を飛ばして論じる革命論や運動論に、彼ら一人ひとりの恋愛事情が関わっていることもよくわかったような気がし . . . 本文を読む