翌朝から、僕はとっちゃんに積極的に語り掛け始めた。桑原君はそ知らぬ顔を決め込んでいた。が、おっちゃんやカズさんや大沢さんは、うれしそうだった。積極的に僕を後押ししてくれた。
「とっちゃん。いつも何時頃起きてるの?」
「早いで~~」
「朝刊終わってから、何してんの?」
「いろいろやな~~」
「家のこと手伝ってんの?」
「それは、おばはんがやることやがな」
とっちゃんの取りつく島のない応 . . . 本文を読む
翌5月5日、習慣化している朝5時の起床直後から、僕は時間を持て余していた。前日の夕焼けが表していたとおり、窓の外は一日の快晴を約束している。
大沢さんと桑原君はどんな休日を迎えているのだろう。そして、東京の啓子は?……。
手紙を書きたい衝動が湧いてくる。が、強くはない。それよりも、仕事仲間二人の部屋と、それぞれと交わした会話が強く思い出される。
大沢さ . . . 本文を読む
5月4日。翌日が休刊日とあって、夕刊配達が終わった後の販売所はのどかな空気に満たされていた。おっちゃんは軽口を叩き、いつもはそ知らぬ顔をしている大沢さんも、軽口の一つひとつに反応していた。上機嫌だった。
カズさんが帰ってきて全員が揃うと、おばちゃんの「さ、早う食べや~~」という声が奥から聞こえてくる。
「これや、これ~~!」
とっちゃんがいち早く立ち上がり、階段下に腰掛ける三人を押しのけるよ . . . 本文を読む
「さ、行こか~!」。
自分の配達を早めに終えて待っていたカズさんは、僕が販売所に到着するやいなや僕の尻をポンと叩いた。彼が乗った自転車には、僕の配達分と思われる新聞の束が載っている。
「付いといで!」
言うが早いか、カズさんの自転車は北山通りを突っ切り、鴨川沿いの道を下っていく。振り向きもしない。後を追う。朝の冷気が頬に痛い。が、心地いい。
「まず、ここに半分置いておくんやけど、雨の日は‥ . . . 本文を読む