第40回
高山のオフィスのドアが、「こんばんは~~」の明るく大きな声と共に開く。田端の登場だ。あゆみと竹沼はそっと胸を撫で下ろす。
「お~~、その声は田端君かな?」
「そうで~~す」
しばらく仕事の打ち合わせを装っていた高山と田端は声を掛け合い、席に着く。田端はぶら提げていた紀伊国屋のペーパーバッグをテーブルの上に出す。
「さ、盛り上がりましょうか」
出してきたのは赤ワ . . . 本文を読む
第39回
「おや、なんだかすっきりした顔してるねえ」
ブラックウォッチのジャケットに赤のペイズリーのネクタイという、クリスマス・コーディネーションで迎えた高山が、あゆみの変化を目ざとく見つける。彼の後方では、大賀とアシスタントの女の子が作業に集中している。
午後6時過ぎ。2009年のクリスマスパーティが始まる予定の1時間も前に、あゆみはやってきていた。
「いらっしゃいませ」 . . . 本文を読む
第38回
“遺跡部屋”に戻り、灯していた明かりを消す。ワインをグラスに注ぎ、窓辺に立つ。六本木の空に窓に灯りを点したビルが並び立っている。正面に一際高いのは、完成間もないミッドタウンだろう。地平にわずかに残る紅をバックに誇らしげだ。“防衛庁跡”というその辺りの通称も、もうすぐ人の口の端に上らなくなり、やがて忘れ去られてしまうに違いな . . . 本文を読む
第37回
安達のオフィスへと向かう。ポケットには、ジッポとパワーストーン。途中でコンビニに立ち寄り、赤ワインの小瓶を買うのも忘れなかった。
安達のオフィスのビルには、相変わらず人の出入りの気配はない。珍しく留守の管理人室の前を通り抜け8階へ。
安達のオフィスのドアを開けると、いつものように微かな期待が胸を過ぎる。しかし、室内の空気は冷たい。
丸木の下を奥へと進む。ワークルー . . . 本文を読む