昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第一章:親父への旅   手術本番へ ④

2010年10月08日 | 日記
手術室前のベンチに、文庫本が2冊ぽつねんとしている。「手術中」の赤ランプも点いたまま。静かだ。手術が終わる気配は全くない。 ただじっと、扉が開くのを待つことにする。時計を見ないようにするために、文庫本を開く。ひたすら文字を目で追う。 いつの間にか数10ページ進んでいる。内容は全く頭に入っていないが、江戸物の小説の空気感だけは伝わってきている。 と、突然、「先生!」という叫び声。僕は跳ね上がり、扉に . . . 本文を読む