俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

10月18日(火)

2011-10-16 17:59:51 | Weblog
  ハワース
★「嵐ヶ丘」はここかと秋冷まといつつ  正子
「嵐が丘」は復讐、愛憎、荒涼、そんな言葉が浮かぶ小説です。その舞台となったハワーズには、冷気に胸をかき抱きたくなるような雰囲気が今も残っているのですね。「ここかと」に、凄まじい物語が生まれた背景を実感として受け止められたことが分かります。ヒースクリフとキャサリンの魂が今も彷徨っているような土地を的確に詠まれていると思いました。(後藤あゆみ)

○今日の俳句
月澄むや長き廊下の消灯す/後藤あゆみ
静まった夜、長い廊下が消灯されて、外には月が澄んでいる。体にずんと染みいるような月明かりである。

○竜胆
野生の竜胆を初めて出会ったのは阿蘇の外輪山の草原であった。二十代のころ九州旅行の途中、阿蘇の外輪山の宿に泊まることがあった。露がかわいたばかりの草原を歩くうちに足元に竜胆が咲いているのが目に入った。天近き草原である。まさかと目を疑ったが確かに竜胆である。その後も松山市から三十キロほどの久万高原町のふるさと村の崖で見た。ひょろりとした茎に紫紺の花が付いている。竜胆もいろいろ種類があるようだ。ある日、PTAの美術クラブで、買ってきた園芸種の竜胆を描こうとして、絵の先生に注意を受けたことがある。作り物はいけない、自然の花のいのちを描けよ、ということだったのだろう。確かに園芸種とは全く違う姿風情。この注意も、野生の竜胆に出会っていたので、本意が多少ともわかったと思う。可憐で色の深さは、誰をも魅了するのだろう。好きな花のひとつである。

◇生活する花たち「竜胆・ホトトギス・藤袴」(横浜日吉本町)

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10月17日(月)

2011-10-16 17:54:23 | Weblog
  コッツワルズ
★水澄んで白鳥軽く流れくる  正子

○今日の俳句
朝霧が包む港に汽笛鳴る/高橋秀之
素直な句で、朝霧に鳴る汽笛がのびやかに聞こえる。朝霧に包まれた港がこれから動き出そうとしているのであろう。(高橋正子)

○野菊
野菊は、野に咲く菊を総じて大まかに言うらしい。最近、野菊の存在を忘れそうになった。野菊について書こうと思い出したのは、イングランドの高速道路わきに、たくさん薄紫の野菊が咲いていたからだ。四国に住んでいたころは、嫁菜が多かった。野紺菊と比べ花弁が欠けたような咲き方をした。野紺菊のほうが、美しい。園芸種の紺菊が栽培されて、ごくごく淡い薄紫の野菊は、最近はまれにしか見ていない。「野菊」と聞けば伊藤左千男の「野菊の墓」を思い出す方もおられようが、今も読まれているのかどうか。そして、次に思い出されるのが、文部省唱歌の「野菊」。すっかり忘れていたが、これもイングランド旅行で記憶が蘇った。

<遠い山からふいて来る
こ寒い風にゆれながら、
けだかく、きよくにほふ花。
きれいな野菊、うすむらさきよ。>

たぶんこうであったろう。「けだかく、きょく」が尊ばれたころの歌。この歌を忘れられると同時にこの価値観も失われたか。イングランドの高速道路の脇に野菊がきれいに咲き残っていたのが、不思議なほどだ。

◇生活する花たち「野菊・鶏頭・コスモス」(イングランド)

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10月16日(日)

2011-10-16 04:09:53 | Weblog
  チェスター
★城塞を歩むと黄葉の樹に触れぬ  正子
イギリスの歴史ある古城を歩むみ、遥かな栄華の歴史を堪能する正子先生とお嬢様の姿が目に浮かびます。素晴らしい景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
嬬恋や窓いっぱいの星月夜/小口泰與
嬬恋の秋の夜は、もう寒さを覚えるほどであろう。窓いっぱいの星月夜に新たな感動が湧く。(高橋正子)

○ルピナス
日本名は「のぼり藤」。藤の花は房となって垂れて咲くが、ルピナスは、藤に似ているが立ち上って咲くのでそう名付けれたと分かる。この花は、あまり好きな花ではないが、西欧人の間では好まれるようだ。例のベンジャミン・フランクリンはこの花が好きで、散歩のときは、ルピナスの花の種をポケットに入れて撒いて歩いたという逸話がある。西欧人は、どうしてこの花が好きなのかその感覚がわからない。画家ではなく、普通の人が絵にもよく描いている。
西欧人が羊歯を描けば、大きな羊歯を描く。英語で羊歯は「ファーン(fern)」だけれど、これはキューガーデンの温室で見たが、アフリカなどにある大きな羊歯だ。茶庭の露地に同じ羊歯でもファーンがあっては、たまったものではない。わたしから見れば、ルピナスはそんな感じだ。色はピンク、むらさきなどいろいろあって、幾分背が高く、優しく揺れる草花の中にすっと立っている姿が風景としてよいのかもしれない。

◇生活する花たち「ルピナス・ラベンダー・ゼラニウム」(イングランド)

コメント (1)
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