★辻に出て通う秋風身にまとう 正子
辻というのはどこからでも風が吹き抜け、風がないと思う時でも辻に出ると思いがけない風に出会います。「身にまとう」から、爽やかな秋の風を全身で受ける心地よさが伝わってまいりました。(後藤あゆみ)
○今日の俳句
秋の灯の鉛筆軽し編み図引く/後藤あゆみ
「鉛筆軽し」に手慣れた作業とたのしい心持が知れ、「秋の灯」にもよい生活感があるのがよい。出来上がりを思いながら、軽やかに鉛筆を動かし、編み物の製図をする楽しい時間である。(高橋正子)
○秋の七草
①ハギ
★女児誕生白萩の白咲ける日に/高橋信之
白萩が咲ける日は、9月3日で、女児は娘の句美子のことである。白萩は、わが家の庭に、不思議なほど、毎年9月3日に咲きはじめた。ようやく爽やかな季節を迎えての子の誕生である。(高橋正子)
②キキョウ
★ふくらみのほどけ桔梗(きちこう)咲きそめり/津本けい
桔梗の蕾は、ふっくりとして、五弁の花の筋が入っている。桔梗が開くときは、まさに「ふくらみがほどける」感じだ。愛らしい桔梗の花である。(高橋正子)
③クズ
★枝垂るるも空にまっすぐ葛の花/後藤あゆみ
葛は蔓性で繁茂し枝垂れるが、葛の花はと言えば、花穂を空へ向け、毅然としている。葛の力を感じる。(高橋正子)
④ナデシコ
★岬に咲く撫子は風強ひられて/秋元不死男
秋の七草の中でもっとも可憐な花である撫子。岬に咲けば、強い海風を受けて、なぶられるように吹かれることもある。「風強ひられて」が、岬に咲く撫子の可憐で、それでいて折れない姿をよく表している。(高橋正子)
⑤オバナ(ススキのこと)
★薄の穂切りて野の風持ち帰る/黒谷光子
風に吹かれている野の薄の穂を切って持ち帰ると、さながら、野の風を持ち帰るようだ、という。穂芒の姿に野の風が見える。(高橋正子)
⑥オミナエシ
★女郎花木の下にところ得て明るし/高橋信之
自句自解:横浜の都筑中央公園は、自然の山の起伏を生かした公園で、散策するのに楽しい場所である。樹が茂った山道にふいに現れた女郎花にひとり散策のわたしは喜んだ。今年は、多くの女郎花を見たが、ここの女郎花が気に入った。
⑦フジバカマ
★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ/高橋正子
自句自解:向島百花園に花の写真を撮りに出掛けたので、スカイツリーを近くで見た。百花園の園内からの写真も撮った。東向島駅から浅草駅までを東武伊勢崎線に乗ったので、すぐ近くを電車が走りすぎた。