20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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三越の七夕笹飾り

2024年07月05日 | Weblog
            

三越本店の入り口に、七夕の笹飾りが、飾られています。

この笹飾りをみると思い出すのが、父のこと。
子どもの頃、七夕が近づくと、笹飾りの短冊に、何か文章を書かされました。

父の書いた短冊は、いつも
「七夕や よくきてくれた すまんじゅう」
筆でサラサラっと書きます。
でも、毎年、毎年、これです。

すまんじゅうというのは、酒まんじゅうのことです。
あの皮のふっくらと発酵した、ちょっと酸っぱいような匂いがする、おまんじゅうのことを、秩父では「すまんじゅう」と言います。

中にこしあんのあんこがたくさん入った、美味しいすまんじゅうを売っている、秩父名物のお店があるのです。
甘党の父は、そこのすまんじゅうが大好きでした。

笹に乗せて、天に願いを、なんて、ロマンティックな気分ではなく、「せっかくだから、俳句みたいに、5・7・5で短冊に、何かを書け」と、それだけを毎年言われたような気がします。

秩父の家の七夕は、「すまんじゅうを、おやつに食べる日」でした。

でも、大人になっての希望とか、こういう人間になりたい希望とか。
そういうことを書いた方が、なんだかかっこいいように思うのですが、父は強要しません。
「難しいことは考えずに、5・7・5のリズムで書け」と。

でも三越の笹飾りなどを読んでいると、希望や願いを書いている人が多いです。

FaceBookのホームを、流しながら見ていると、時々1分くらいの喋りの動画が出てきます。
どういう人なのか知りませんが、その1分の語りが面白い。

成功する人、願いが叶う人。
七夕のようですが、彼はこう言います。

「成功なんて努力するしかない。成功している人は、みんな、自分がやろうとしたことを努力して、努力して掴んでいる。それができへんで、その理由を、あいつが悪いからできへんのや。あいつに苦しめられたから、できへんのや。と、自分が努力もしないでいることを棚に上げて、人の悪口ばかり。人を悪くいうことへの努力しか、していない人は、それこそ、たった一度の、自分の人生を捨ててる人や」

何かに成功したい。あるいは成就したいと思ったら、とことん努力するしかないと、私はこれまで生きてきた人生の中で、そう思います。

自分が成功したかどうかは、わかりません。
でも努力だけはし続けました。

だから父は、5・7・5の俳句のようなことを書けばいいと、子どもである、私たちに言ったのだと思います。
小学生の私が、5・7・5の俳句を作る。
それはそれで、努力のいることですから。

今年ももうすぐ、七夕です。
父は、空の上で、こんなことを書いている私を、笑っているでしょうか?

そういえば、その昔、『天声人語』(朝日新聞社)の文庫を「文章の勉強をしろ」と父が、5冊くらい刊行されているのを送ってくれたことを思い出します。天声人語への解説が、一つ一つ書かれた文庫です。
今でも書棚の奥にあります。

結婚して15年近く経った時なので、もう作家になっている頃です。

父は、「娘を愛している父親」であると同時に、子どもの頃から徹頭徹尾、「教育パパ」でした。

教育パパからは、大人になった今でも、父からの愛と感謝しか感じません。

先日も、私の作品で、2002年に刊行したシリーズ本を、「小さい時、お母さんが買ってくれ、ルビを振って読んでくれた。その作家の人に先日、会ったと、母に話したら、びっくりしていた」と、ずっと後輩の書き手の人からメールをいただき、感動しました。
本って、こんなに長い年数、読者の心に残っているものなんだと、とても嬉しかったです。

途中で、もし挫折していたら、父からの愛を、重く鬱陶しいものに受け止めていたかもしれません。

「大した才能もないのに、長い間、よく頑張ってきた。努力し続けてきた」と「持続こそ力なり」を、ずっとずっと・・・。
呆れながら・・・書いていて、照れくさいです(笑)。
文学や児童文学が好きだったことが、ここまで長く続けられた理由です。
今でもずっと本の世界を愛しています。

デビューの頃の、友人は、一人、二人くらいしか作家として生き残っていません。
デビュー以来、40年以上も書き続け、気がついたら「年長者」と言われる年になっていました。

いつまでも一番、若いと思っているのに!!
書き手の友人たちは、それを許してくれません(笑)。

秩父の「すまんじゅう」ほどおいしくないですが、七夕には、父と母の写真の前に、東京の「酒まんじゅう」をお供えしますからね。
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