町田康さんの本、読んだことあるなぁと思って、投稿した書評をチェックしてみたら、10年前に読んで投稿していました。
それがこちらです!
『人生を歩け! 』
町田 康 (著), いしい しんじ (著)
税込価格:1,512円(14pt)
出版社:毎日新聞社
発行年月:2006.3
その時の書評はこちら!
ええ感じのお二人の歩き下ろし
投稿者:佐々木 なおこ
「うふふふふ」
「うははははは」
「はッはッはッはッはッ」
「うわッはッはッはッ」
「くッくッくッくッくッ」
全編に笑いが絶えない。
なんともええ感じのお二人なのである。
町田康さんといしいしんじさん。
ともに大阪出身の小説家。
このお二人がそれぞれ上京してから移り住んだ懐かしい場所を
仲良く一緒にめぐる。
町田さん編が成増と武蔵関と上石神井、
いししさん編が浅草と三崎。
住んでたアパートはあるかなぁ?
行きつけの喫茶店は?
あれあれ更地になってる…。
かつて自分が若い頃に住んでいた場所を訪れるのは
なんとも魅力的だ。
その街角に若かった頃の自分がときおり映し出される。
そんな二人の歩きながらの対談がそのまま本になっている。
町田さんの住んでいたアパートはちょうど壊している最中だった。
湯沸しポットの中でスパゲティを茹でていたなぁ…。
そんな町田さんの話を
「カッコええなあ。」といしいさんが聞く。
町田さんの植えたアボガドの種は
なんと二階まで届くような大木となっていた。
嬉しいだろうなぁ。
いしいさんは浅草時代に、レッサーパンダの着ぐるみを
着て歩き回っていたそうだ。
浅草は、変なものにたいするキャパが広いんでしょうねと、町田さんが分析する。
「けっきょく、人って、親とか他人とかにいわれて気づくんじゃなくて、
どんなことでも自分で気づいていくんですよね」(いしいさん)
「人間、つねにギリギリのところにいる感覚をもってこそ、
あたらしいことへの要求が生まれてくるというものでしょう。」(いしいさん)。
「経済的な問題じゃないんだよね。
大事なのは、精神的な飢えなんやから。」(町田さん)
歩きながらの対談は、
実に深いところまで語り合うのである。
対談の最終地は現在いしいさんが住む三崎。
海風に吹かれながら、おいしい魚介類をつつきながら
二人の対談は続く。
いつまでも果てなく続きそうな語り下ろしならぬ、歩き下ろし。
ここまで深く話せる相手がいることが、
つくづくいいもんだよなぁ~と思わせてくれる一冊。