太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

物差しは何を

2016-06-10 08:12:31 | 仕事に関すること

都知事の問題で多くの話題が食われてしまっているが、今度はバネの強度偽装。艤装と言えば船舶。船舶ならパナマ船籍。パナマ文書ほどは騒がれ無かった不思議。2015年の太陽光発電の生産量や導入量が速報されている(IEA PVPS 2015Snapshot)。生産も導入も中国の大躍進が目を引く。国単位、国籍単位で言えば確かにそうであるが、「国」という物差しが示すものは一体何だろう?因みにSnapshotによれば、

1.2015年導入量;中国15.2GW、日本11GW,米国7.3GW,英国3.5GW、ドイツ2GW、世界計50GW

2.2015末累積導入量;中国43.5GW、ドイツ39.7GW、日本34.4GW、米国25.6GW、イタリア18.9GW、世界計227GW

3.2015年生産量;TOP10の9社は中国、台湾、韓国で占める。1社は米国のFirst solar(5位)のみ。日本はランク外

4.電力需要に占める太陽光発電由来電気比率;イタリア8.0%、ギリシャ7.4%、ドイツ7.1%・・・日本4%弱(5位)・・・中国1%弱(22位)

これらは「国」が何を重視しているかの結果でもある。1~3は「産業振興」であり、4は「エネルギーセキュリティ・環境」重視である。太陽電池モジュール単体は世界中似たような構造と材料であり、価格に大きな差が出るとは思えない。ただ、バリューチェーンの中で例えばシリコン原料が格安(その業界では適正な利潤が得られていない)ならモジュール完成品は安くなる。KWHコストなら金利や土地代などが大きく影響する。それにしても現在モジュールの市場価格はワット当たり60円という声も聞く。NEDOPV2030+では2025年のモジュール目標価格が50円/Wだから輸入すれば殆ど開発目標は達している、開発の必要性あるの?との皮肉も聞こえそうである。

中国は太陽電池大国になったが、例えば4番もそうだが、生産量がGDPに占める比率とか、一人あたりはとかになると下位区分になる。国土の広さ、人口の多さ、電力インフラの未整備など考えればニーズからして導入量が世界一になることは必然でもある。 世界市場で言うとやはり価格の安さが最も効果を発揮している。一時はダンピング問題で世界中で問題となり衰退するかと思われた企業も逆に勢いを増し、TOP10を殆ど中国が閉める状況を見ると力をつけてきていると思われる。そうでないなら超格安のシリコン原料と手厚い産業振興策に守られている。

特に価格については為替がとか、保護施策がとか、ダンピング原料がとか理由を上げてもしょうがない。価格は市場に残る。例え一時期コストダウンの停滞はあっても決して上昇の一途をたどることはない。現在の価格を基準に下がって行く。研究開発の成果もあるし、中国と似た国が出てくることも容易に想像できる。残念ながら日本メーカーの強みだけで勝負できる時代は終わった。日本に残されているのはエネルギー・環境・産業振興を如何にバランスよく配置するかのグランドデザインである。いままでは産業政策としての太陽光発電はあまり議論されなかった。最近では官から海外製品であろうと我が国のエネルギーと環境に資するなら、とか日本メーカーが無くなっても市場原理だから仕方無いという意見も聞く。安いエネルギー源として輸入石油に頼った結果は既に昔の話。純国産エネルギーが放棄されれば「第一次再エネ危機」が来るというのは杞憂だろうか。でもシリコン原料は輸入ではないかという声に対しては40年も前、ドイツでは砂浜の砂からシリコンを抽出する研究を行っていた。技術的には可能だがコストが合わないことで産業にはならなかった。島国日本は海岸に囲まれきっとシリコン精製に適した砂もあるだろう。海外メーカーとも折り合いを付けながら何とか生き延びて、第一次再エネ危機を未然に防ぐ国産の手を着々と打って行くことも必要である。



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