事情があって太陽電池の点検に行くことになった。現役を退いて何年も経ちしかも他メーカーのシステムだったので点検というより様子見の方が正しい。屋根に登ることは出来ないのでインバータや接続箱、見える範囲の配線などのチェックである。勿論修理などはできない。設置後20年以上経っており出力が出ていないようだとのユーザーの話が発端である。東電の購入伝票を見ると1年前までは正常に発電している。今年の1月はゼロKWhの伝票である。故障は1年以内に起こったのだろうが伝票を連続して保管していないので何時かは特定できない。連系点のブレーカを落し太陽電池の出力電圧を見ると225Vあり正常だ。しかしインバータを運転モードにしても起動しない。インバータはトランスレスが主流になる前のトランス付きインバータであったが20年以上経っているが新品のように綺麗だった。太陽電池は配線さえ繋がっていれば電圧は出る。しかしセルが破損したりカバーガラスが破損して遮光したりパッケージのラミネートが剥離したりすると光透過率が極端に落ちるので電流は出ず結果出力(W)は出ない。多分太陽電池の交換となると相当費用がかかり、そのまま放置していると万が一ということもあるので撤去を含めて一度工事会社に見積もりをさせたらどうでしょうか。修理か撤去は見積もりで判断されたら良いと思いますと伝えて知り合いの工事会社を紹介した。
多分調子が悪いと言っても古いものだと相談すべき施工会社も無くなっている場合があり、メーカ-に尋ねるのも手だが保証は切れているだろうから一からの話になる。今後出て来るであろうこれらの寿命が来たシステムで問題になるのは、もう充分使ったから出力が落ちて売電しなくとも良いからそのままに放置しても構わないと思う人が増えて来ることだ。背景には家も古くなり少子高齢化で今後何年住むか分からないと言う人、新たに設備投資をしても自分たちはそんなに長生きはしないだろうと思う人達が居る。今回尋ねた家も多分そうなのだろう。しかも本人は今病気でリハビリのため介護施設に入っている。使いものにならない太陽電池が屋根に乗っかっていると撤去の際の費用を考えると家自体の価値も下がってしまうのではないか。取り替えても家自体が老朽化して価値が下がっているので意味がないのではと迷うところ大であろう。
軽微な故障なら修理となるだろうが、太陽電池本体の取替えとなると新設並みの費用がかかるだろう。多くの人は、期待通り発電して来たしこれ以上手間も費用も掛けたくない、そのまま放置しといても良いと考えるだろう。「そのまま放置していても特に問題はありません。」と言えれば良いのだが難しいところである。インバータが焼損したりホットスポットでセルが過熱したりするほどのパワーは出なくなっていても高電圧だけは発生する可能性があるからだ。安全にと思い、太陽電池の出力側のブレーカーを落としても電路に高電圧は維持される。出力側を短絡させるとインバータへの入力は無くとも今度はホットスポットのリスクが少し出てくる。放置しても安全上問題ありませんと断言できたら良いのだが高電圧によりアークが発生する可能性は残る。燃えやすいもが近くにあれば火災リスクもゼロにはならない。非常に可能性の小さいリスクで不安を煽ってもよくないので万が一の場合とお茶を濁さざるを得なかった。紹介した工事会社が正式な点検も行い幾つかの選択肢を示すだろからそれから判断してはとアドバイスした。
メーカーは寿命が来た太陽電を撤去しないでそのまま放置しても安全ですと言っているのか、事故リスクがあると言っているのか知りたいところである。要らないなら撤去するのが一番安全だが費用が掛かる。殆どが素人でこれ以上の設備投資はできないというお年寄りはどんどん出て来る。業界団体は撤去した後の廃棄物処理はかなり充実したガイドラインを公表しているが放置についてもガイドラインを作る必要もあるのではないだろうか。