太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

あの時は言ってくれましたね

2020-06-22 07:45:22 | 仕事に関すること

太陽光発電の思い出、まだ系統連系が始まった頃の話である。謳い文句は「環境問題」くらいしかなかった。ある大手自動車メーカーの研究所に営業マンと一緒に売り込みに行った。10数名のエンジニア相手である。最初に驚いたのは研究所といっても有名な建築家が設計したのであろう美術館のような洒落た建物で中部もとてもオフィスと思えない韓国ドラマに出て来るような洗練された間取りである。大部屋の単に四角いこちらの事務所とは大違いだ。さらに驚いたのは出て来た技術者は私服でTV局のスタッフのような自由な雰囲気を漂わせている。これも機能だけを追求したこちらの制服とは違う。一応プレゼンが終わった後質問は価格の事だけであった。商用電力より高いのであれば使い道ありませんねとあっさり言う。環境だけではねえと言うので電気自動車の充電に回すこともできるので宣伝効果もあるのではと言ったが通じなかった。当時電気自動車は試作段階でそのメーカーの中では開発者も少数派で本流のガソリン車開発の技術者からは趣味のように思われていたというのを後で知った。簡単に言うと冷たくあしらわれたと言った方が正しい。今TVでそのメーカーは自社の電気自動車と太陽光発電を組み合わせたV2HのCMを流している。

ある保守系の議員さんで環境部会の部会長をしていた人から話を聞きたいというので議員会館に出向いた。部屋に入ると大手住宅メーカーの研究所長も来ていた。話の中で、将来は住宅の屋根に搭載することが当たり前のようになります。南面に片流れした太陽電池を搭載することを前提にした住宅も出て来るのではないでしょうか。住宅自体の価値も上がりますし何より環境貢献になりますと言うと、研究所長は太陽電池のために住宅の形状を変えるなどあり得ませんと断言。わが社は100年持つ住宅を作ります。街全体が100年間の間どんどん落ち着いた雰囲気に変化し続けるようなそういう街づくりを目指しています。環境とはそういうものではないでしょうかと言ってカタログを出して説明し始めた。この人に言っても駄目だと思ったが今そのメーカーは太陽電池搭載住宅をTVのCMで流している。余談だがその議員さんは地元選出で2度程勉強のためにと私の勤めていたセンターに来られたことがあり顔見知りであった。勿論議員会館に私が来るとは思っていなかったのだろうが、知り合いだということはオクビにも出さず熱心にこちらの話は聞いてくれた頭の切れる優秀な若手議員だった。

勿論自動車メーカーや住宅メーカーの人達が意地悪だったとか偏見を持っていたわけではない。もし自分が向こうの立場だったら同じような態度を取ったかも知れない。それぞれ専門分野が異なり誇りを持っていれば尚更のことである。当然知識の種類も違うのに皆自分と同じように考えてくれると思うこちらが若く甘かった。それでも異分野の人に同調して貰えるほど嬉しいものはない。某大手メーカーの副社長は全く違う分野で有名な方だったが随分太陽電池にのめり込んでリタイア後は自ら普及団体を立ち上げ官への陳情まで自分で出掛けて行った。副社長の時代から随分可愛がって貰い、一度工場を見学においでと招待されたが駅に物凄い黒塗りの高級車で迎えに来てくれた時は驚いた。何年か経ったとき偶然経産省のロビーで出会って軽く挨拶を交わした時、もっともっと業界も頑張って下さいと励まされた。名前を挙げれば直ぐわかる人でも晩年太陽電池に興味を持つ人も多く居た。特に異分野から興味を持って太陽電池業界に入ってくる人は高熱である。太陽電池は表現は悪いが一種の中毒技術である。