ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツ(ラーデン)の”店”で感心したこと

2014-09-07 01:09:41 | 日記
先日、私の住んでいる街(愛知県内)から10kmぐらい離れたところにある雑貨店に行ってみました。実は、その数日前にテレビ番組で紹介されていた店なのです。かなり大きめの雑貨店らしく、どんなものが売られているのかも興味があったので家内と二人で出かけました。

メインストリートから少し奥まったところにその店はありました。平日の午前中と言うこともあり、それほどの混雑はないだろうと想像していましたが、テレビ番組の影響でしょうか、駐車場はほぼ満杯でした。

店内に入ると、そこそこのお客さんが入っています。どんな品物があるのだろうかと、結構広めの店内を反時計方向に順に見て回りました。ハンドバックやサイフ等のコーナー、大人用の衣服、子供用の衣服、靴下類、エッセンシャルオイルや化粧品の類、文具、調理器具、食器類、そしてジャムや紅茶葉等の食品関係も並んでいました。何か買いたくなるようなものがみつからないだろうかと期待も含めて一巡。そして次は、逆回りで見落としたものがなかったかと念入りにグルグルと各コーナーをつぶさに観察しながら歩いたのでした。

昨今、”雑貨店”と言うと色々なタイプがあります。100円ショップも雑貨店の類に入れてもいいでしょう。また、何に使えるのかわからないような小物雑貨が狭いスペースにギュウギュウに並べられている店もあります。こうした店にも時折入ってみることもあるのですが、私の場合は明確な目的がないので目移りするばかり、10分ぐらいで店を出ることが多いのです、何も買わずに。

そうした店に比べると、今回行ってみた店は一味違うものでした。店内スペースもそこそこ広いし、通路も人が十分すれ違いができる幅が確保されているので、比較的ゆったりと品定めが出来るのでした。それぞれの品物も中高級品(?)と思えるものが中心で低価格の商品は少ない印象でした。

私の関心があるジャンルの商品もいくつかあったので、そうしたコーナーでは時間をかけて品定めをしました。しかし、どうも「種類」が少ないのです。一通りの品物はあるのですが「選ぶ権利がない」のです。

良いものがあれば買って帰るつもりの家内も私も、結局2時間近く店内散策を楽しみましたが、この店でお金を使ったのは”ゼロ”です。

さて、ここからが本題です。2013年に滞在したドイツ・ラーデン(ノルトライン・ヴェストファーレン州)は人口が6千人の小さな田舎街(滞在先のホスト曰く)です。地理的条件は大きく異なりますが、日本の中山間地にある「町・村」に規模的には近いものがあります。そして、その街の中心部には商店街と呼べる通りが僅かではありますが形成されていました。
(写真: ブティック)
(写真: ファミリー向け衣料品店)

そこでは当然ながらデパートはありません。また、大型ショッピングモールのような施設もありません。街で一番大きい販売施設はいわゆるスーパーマーケットとドラッグストア(チェーン店)だけでしょう。あ、お酒の量販店もあります、ハイ。そんな規模の街です。そして、いくつかの専門店が並ぶ程度なのです。
(写真: ドラッグストア)
(写真: 薬局)

しかし、その専門店に私は感心したのです。本屋さんは一軒、時計・貴金属店は2軒、スポーツ用品店も2軒、ワイン等の酒店も2軒、靴屋2軒、子供・ファミリー向け衣料品店2軒、ブティック2軒、パン屋さん2軒、金物屋1軒、食器類販売1軒、カフェ3件、レストラン数軒、バー2軒(たぶん)・・・思い出したものを並べてみました。これらは街の中心付近にあるものです。他に、中心街から少し離れた駅周辺には大型駐車場を備えたスーパーが4軒はありました。その中の1軒はお酒の量販店なのですが。
(写真: 時計・貴金属店)
(写真: 衣料品店)
(写真: アイスクリーム&カフェ)
(写真: カフェ)
(写真: 電器店)

これらの全ての店に入ってみたわけではありませんが、いくつかの店については複数回は足を運んでいます。その中で感心した店の一つがスポーツ用品店です。この店は1階に靴とスポーツ用品、2階はスポーツ用品だけの陳列になっていました。8月から10月末までこの街で過ごしたので、気候的には夏から晩秋(初冬)の印象です。従って、日本から持参できなかったスポーツ関係衣料はこの店で購入しました。

滞在期間中に5・6回はこの店で買い物をしています。半袖スポーツシャツ、スイミングパンツ、自転車走行用のロングタイツ、自転車用の手袋・・・、いずれの商品を探した時も、ほぼ気に入ったデザインやピッタリのサイズのものが見つかったのです。正確な床面積は知る由もありませんが、日本のやや大きめの本屋さんぐらいのフロアスペースはあったと思います。

また、驚いた店が金物屋です。通りに面した側の店舗幅は25m前後でしょうか、それほど大きな店舗とは思えないものです。しかし、中に入って驚きました。奥が深い(長い)のです。ちなみに、「金物屋」としましたが、鍋釜、ナイフ&フォーク、包丁類、各種調理器具、食器類・・・等々を幅広く扱っているお店なのです。その種類の多さに驚いたのです。具体的なイメージとしては、日本の街の金物屋さんではなくて、デパートの中の台所用品コーナーに相当しているものです。
(写真: 左の奥のほうがその金物屋)

これだけの種類があれば、お客さんはどれかを選べるだろうなァ・・・と思った次第です。この地ラーデンの周辺人口は1万6千人と聞かされました。決して大きな人口ではないと思いますが、これらの人々は、台所用品に関してはこの店に来て選ぶことができるだろうと感じました。ただ、在庫の多さも伴っているわけで、相応の販売量がなければ経営が成り立たないだろうとも心配しました。しかし、この店の歴史は知りませんが、そこそこの回転(販売)があるのだろうと思うのです。ちなみに、この店では小型ナイフ等を土産として購入しただけです。店のおばさんはこのナイフの刃の磨き方は、陶器の底(ザラザラ部分)で擦ればいいよ・・・と、わざわざ教えてくれたのでした。

この小さな街の中に、こんなに本格的に品揃えをした店があることに驚いたのでした。全般的に言えるのは、大規模ではないのですが、近隣に居住する人々の求める品質に近いもので、且つ確かな品物をかなり取り揃えている印象なのです。

思うに、国により、地域により、時代により、生活レベルにより・・・様々に条件が異なっているので、一概にこうあるべきとは言い切れないと思いますが、私はあちこちの国や人々を見て次のように感じています。

かつての日本がそうであったように、あれも欲しいこれも欲しいと言う時代、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、車・・・・。そのころはその「物」を入手することが優先された時代で、それ以上の品質・性能や機能性等は悪くなければ良いとされたものでしょう。しかし、時も流れ、物質的に欲しいとされるものはほぼ揃ってしまっている(上を見れば切りがありませんが・・・)のが今日ではないでしょうか。

そして次にくるのが買い替え需要のようなタイミングでしょう。こうした時にはより満足度が高まるような物へのシフトが始まります。つまり、精神的な充足感の高まりを追求する時代です。それは「物」に対することのみではなく、人への思いやりであったり支援・援助の形であったりするのかも知れません。また、弱者に手を差し伸べたり、隣人(広い意味での)への気軽な挨拶であったり、高いレベルでのマナーにもつながるものではないでしょうか。総じてより成熟度が高まった社会とも言えると思っています。

さて、話を最初に戻しますと、テレビで紹介された雑貨店は、一見様々な品物を揃えていて華やかなのですが、少し中途半端な気がしています。ドイツ・ラーデンでの金物屋方式が優れているような気がします。取り扱う商品のジャンルを絞り、その代わりできるだけ多くの「本物」を取り揃える・・・。こうした店舗があるのであれば、客はそうした店を訪れ、リピーターになるでしょう。

昨今は、インターネット上で品物を検索して購入することも多いですよね。それは、物によっては様々な種類のものが容易に確認できる便利さもあるからでしょう。ただし、実物を手にとって確認したい品物については、やはり実際の店舗で買いたいことも事実です。

事業領域や販売対象者等を無節操に広げるのではなく、購買層をある程度特定しつつ、そうした対象者に満足していただける品揃えやサービス提供ができるのであれば、そうした事業(店舗)に継続性が確保できるのではないでしょうか。(中途半端は好ましくありません。)

そうした意味を含めて冒頭の雑貨店を考察してみると、購買層は若き主婦層にあるのではないかと想像します。ベビー服等もあったことや、女性向けの品が多めであったと思うからです。・・・にしてもです、品揃えが中途半端ではないかと思います。ドイツで見てきたいくつかの店は、昨日今日できた店ではありません。地域に根ざして地域の人々と金銭的にも回転しつづける持続可能社会(?)の一側面を垣間見た気がしているのです。

日本の中山間地においても、単なる物やサービスの提供ではなく、独自性があって、満足感や充足感、一歩(一段)上の「本物」に会えるようにすることがリピ-ターを創るポイントになるのではないでしょうか。

(写真: 地元ビールの移動販売車)

(巻頭写真: 地球儀専門店)